この記事の結論
- 総平均法は、年初の評価額とその年に取得した取得価額の合計を総量で割って年末時点の1単位当たりの取得価額を求める方法です。移動平均法は、取得のたびに簿価総額を数量で割って平均単価を洗い替える方法です。
- 国税庁FAQの同一の設例では、譲渡原価が総平均法で3,106,000円、移動平均法で3,080,200円となり、同じ取引でも評価方法によって結果が変わります。
- 評価方法は暗号資産の種類ごとに選定し、初めて取得した年分の確定申告期限(原則として翌年3月15日)までに届出書を提出します。届出がない場合の評価方法は総平均法です。
本記事は国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」(令和7年12月改訂)の記載にもとづきます。
なぜ評価方法を選ぶ必要があるのか
同じ種類の暗号資産を複数回に分けて買っていると、売却したときの「原価」がいくらなのかを決めなければ所得金額を計算できません。国税庁FAQによれば、譲渡原価は暗号資産の種類(名称)ごとに、①前年から繰り越した年初(1月1日)時点の評価額と、②その年中に取得した取得価額の総額との合計から、③年末(12月31日)時点で保有する暗号資産の評価額を差し引いて計算します。
この③の「年末時点で保有する暗号資産の評価額」は、「年末時点での1単位当たりの取得価額」に年末保有数量を掛けて求めます。そして、この「年末時点での1単位当たりの取得価額」を求める方法が、総平均法と移動平均法の2つです。
移動平均法と総平均法の違い(比較表)
| 項目 | 総平均法 | 移動平均法 |
|---|---|---|
| 単価の求め方 | 年初の評価額+その年の取得価額の合計を、総量で割る | 取得のつど、その時点の簿価総額を保有数量で割る |
| 計算のタイミング | 年に1回 | 取得のたび(洗い替え) |
| 年末単価の扱い | 年間で1つの平均単価 | 12月31日から最も近い日の平均単価を採用 |
| 届出がない場合 | こちらが適用される | 届出書の提出が必要 |
| 国税庁の設例での譲渡原価 | 3,106,000円 | 3,080,200円 |
| 年間取引報告書を使う場合 | 国税庁は「総平均法用」の計算書の使用を案内 | — |
国税庁FAQの設例で見る計算の流れ
総平均法を用いた場合
- ① 1年間に取得したビットコインの取得価額の総額:4,037,800円
- ② 1年間に取得したビットコインの数量:6.5BTC
- ③ 年末時点での1単位当たりの取得価額(①÷②):621,200円
- ④ 年末時点で保有するビットコインの評価額(③×1.5BTC):931,800円
- 譲渡原価=4,037,800円 − 931,800円 = 3,106,000円
移動平均法を用いた場合
取得のたびに平均単価を洗い替えます。設例では3月1日時点の平均単価が461,250円、6月20日時点が582,500円、9月15日時点が638,400円となり、年末時点の1単位当たりの取得価額は12月31日から最も近い日の平均単価である638,400円です。
- 年末時点で保有するビットコインの評価額:638,400円 × 1.5BTC = 957,600円
- 譲渡原価=4,037,800円 − 957,600円 = 3,080,200円
同じ取引履歴でも、評価方法が違えば譲渡原価は25,800円変わります。金額が大きくなるほど差も広がるため、どちらを選ぶかは実務上の判断が必要です。
届出と変更の手続き
国税庁FAQによれば、評価方法は暗号資産の種類(名称)ごとに選定します。①初めて暗号資産を取得した場合と、②異なる種類の暗号資産を取得した場合には、その取得した年分の確定申告期限(原則として翌年3月15日)までに、納税地の所轄税務署長へ「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」を提出する必要があります。
届出書の提出がない場合、評価方法は総平均法になります。総平均法から移動平均法へ変更したい場合は、変更しようとする年の3月15日までに「所得税の暗号資産の評価方法の変更承認申請書」を提出して承認を受ける必要があります。なお、変更前の評価方法を採用してから相当期間(特別の理由がない場合には3年)を経過していないときなどは、承認されないことがあります。
計算を楽にする国税庁の様式
国税庁は「暗号資産の計算書(移動平均法用)」と「暗号資産の計算書(総平均法用)」をExcel形式で公開しています。暗号資産交換業者から送付される「年間取引報告書」を使って計算する場合は、「総平均法用」を使用するよう案内されています。
本記事は一般的な情報提供です。個別の判断は税務署または税理士にご確認ください。
よくある質問(FAQ)
移動平均法と総平均法の違いは何ですか?
総平均法は、年初時点の評価額とその年中に取得した取得価額の総額との合計をこれらの総量で割って年末時点の1単位当たりの取得価額とする方法です。移動平均法は、暗号資産を取得するたびにその時点の簿価総額を保有数量で割って平均単価を求め、12月31日から最も近い日の平均単価を年末時点の1単位当たりの取得価額とする方法です。
届出をしなかった場合はどちらになりますか?
総平均法になります。国税庁FAQでは、評価方法の届出書の提出がない場合、評価方法は総平均法になると明記されています。移動平均法を使いたい場合は、初めて取得した年分の確定申告期限(原則として翌年3月15日)までに「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」を提出する必要があります。
あとから評価方法を変更できますか?
変更しようとする年の3月15日までに、納税地の所轄税務署長へ「所得税の暗号資産の評価方法の変更承認申請書」を提出して承認を受ける必要があります。なお、変更前の評価方法を採用してから相当期間(特別の理由がない場合には3年)を経過していないときや、変更後の方法では所得金額の計算が適正に行われ難いと認められるときは、承認されないことがあります。
出典(一次情報)
- 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」(PDF・令和7年12月改訂)
- 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について」(計算書のダウンロード)
- 国税庁 タックスアンサー No.1524「暗号資産を売却又は使用した場合の課税関係」
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言・税務助言ではありません。個別の判断は専門家や公的機関の一次情報をご確認ください。




