この記事の結論
- その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合、帳簿書類の保存があれば原則として事業所得、なければ業務に係る雑所得になる(暗号資産FAQ 2-2)。保存の有無が所得区分を左右する。
- 業務に係る雑所得で前々年分の収入金額が300万円を超える人は、現金預金取引等関係書類を5年間保存する必要がある(国税庁 No.2080)。
- 国内の交換業者からは年間取引報告書が交付され、年始数量・年中購入金額・年中売却金額など10項目が記載される(FAQ 2-9)。海外取引所や個人間取引には交付されない。
保存期間や記載事項は国税庁の公表内容(2026年9月時点)に基づきます。各取引所の画面名称は変わることがあります。
結論:CSVは「所得区分」と「保存義務」の両方に効く
暗号資産の取引履歴(CSV)は、単に計算を楽にするための資料ではありません。国税庁の公表内容を読むと、帳簿書類の保存の有無が所得区分そのものを左右する場面があり、また一定の人には保存義務そのものが課されています。この記事では、保存のルールと、実際に履歴を手に入れる方法を整理します。
保存が所得区分に効く場面(FAQ 2-2)
暗号資産取引により生じた利益は、原則として雑所得(その他雑所得)に区分されます。ただし令和7年12月更新のFAQ 2-2 は、その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合について次のように整理しています。
- 暗号資産取引に係る帳簿書類の保存がある場合……原則として事業所得
- 暗号資産取引に係る帳簿書類の保存がない場合……原則として業務に係る雑所得
ただし注記として、帳簿書類の保存があっても暗号資産取引に営利性が認められない場合などには、事業所得に該当するかどうかを個別に判断するとされています。
保存期間の一覧(国税庁 No.2080)
| 保存が必要なもの | 保存期間 |
|---|---|
| 収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿) | 7年 |
| 業務に関して作成した上記以外の帳簿(任意帳簿) | 5年 |
| 決算に関して作成した棚卸表その他の書類 | 5年 |
| 業務に関して作成し、または受領した請求書・納品書・送り状・領収書などの書類 | 5年 |
| 業務に係る雑所得のある人で前々年分の収入金額が300万円超の場合の現金預金取引等関係書類 | 5年 |
現金預金取引等関係書類とは、業務に関して作成または受領した請求書、領収書その他これらに類する書類のうち、現金の収受・払出しまたは預貯金の預入・引出しに際して作成されたものを指します。保存場所は住所地や業務を行う場所です。
なお、令和5年分の確定申告に対する修正申告等からは、売上げに関する帳簿を保存していなかった場合や記載が不十分だった場合、加算税の割合が5%または10%加重される措置が設けられています。
年間取引報告書に何が載るか(FAQ 2-9)
国内の暗号資産交換業者からは、平成30年1月1日以後の取引について「年間取引報告書」が交付されます。記載される項目は次の10点です。
- 年始数量:その年の1月1日現在の保有数量
- 年中購入数量:その年の購入数量
- 年中購入金額:その年の購入金額(取得価額)
- 年中売却数量:その年の売却数量
- 年中売却金額:その年の売却金額
- 移入数量:その年に購入以外で口座に受け入れた数量
- 移出数量:その年に売却以外で口座から払い出した数量
- 年末数量:その年の12月31日現在の保有数量
- 損益合計:その年の証拠金取引の損益の合計額
- 支払手数料:その年に交換業者に支払った手数料の額
外貨で売買した場合は、取引時の電信売買相場の仲値(TTM)で円換算した金額に基づいて記載されます。様式は交換業者によって異なる場合があります。手元にない場合は交換業者に再交付を依頼できます。
この報告書の該当欄を、国税庁が公開している「暗号資産の計算書(総平均法用)」に入力すれば、所得金額を簡便に計算できます(FAQ 2-8)。
履歴を入手するときの実務
| 取引の種類 | 入手できるもの | 入手のしかた |
|---|---|---|
| 国内の暗号資産交換業者 | 年間取引報告書、取引履歴CSV | 会員ページの取引レポート等から取得。報告書がなければ交換業者に再交付を依頼 |
| 海外の暗号資産交換業者 | 取引履歴CSV(年間取引報告書はない) | 各サービスの取引履歴のエクスポート機能から取得し、円換算は自分で行う |
| 個人間取引 | 公的な報告書はない | 銀行口座の入出金と、自分が主として利用する交換業者の取引相場から確認 |
| オンチェーンの取引 | トランザクション履歴 | ブロックエクスプローラーでアドレス単位に確認 |
海外取引所や個人間取引の取得価額・売却価額の確認方法は FAQ 2-7 に示されています。銀行口座の出金・入金の状況から確認する方法と、取引履歴および交換業者が公表する取引相場から確認する方法の2つです。どうしても分からない場合は、売却価額の5%相当額を取得価額とすることが認められます。
実務上のポイント
- 取引所は閉鎖・撤退することがあるため、CSVは年に一度は自分の手元にダウンロードしておく。口座凍結や出金制限が起きた後では取得しにくくなる。
- CSVのタイムゾーン(UTCかJSTか)と、数量・価格の小数点桁数を確認してから集計する。
- 移入・移出(自分のウォレット間の移動)を売買として二重計上しないように、アドレスの対応関係を記録しておく。
よくある質問(FAQ)
取引履歴のCSVは何年保存すればよいですか。
帳簿の種類によって異なります。収入金額や必要経費を記載した法定帳簿は7年、任意帳簿や請求書・領収書などの書類は5年です。業務に係る雑所得で前々年分の収入金額が300万円を超える人は、現金預金取引等関係書類を5年間保存します(国税庁 No.2080)。
海外取引所には年間取引報告書がありません。どうすればよいですか。
各サービスの取引履歴のエクスポート機能でCSVを取得し、円換算は自分で行います。取得価額・売却価額は銀行口座の入出金や、交換業者が公表する取引相場から確認する方法が示されています(暗号資産FAQ 2-7)。
帳簿を保存していないと何が変わりますか。
その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合、帳簿書類の保存があれば原則として事業所得、保存がなければ原則として業務に係る雑所得に区分されます(暗号資産FAQ 2-2)。所得区分が変わる点が実務上の差です。
出典(一次情報)
- 国税庁 暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)令和7年12月(PDF)
- 国税庁 タックスアンサー No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度
- 国税庁 暗号資産等に関する確定申告関係(暗号資産の計算書)
- 国税庁 確定申告書等作成コーナー・確定申告特集
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言・税務助言ではありません。個別の判断は専門家や公的機関の一次情報をご確認ください。




