この記事の結論
- 海外の取引所に置いている暗号資産も、12月31日に保有していれば財産債務調書への記載が必要(FAQ 7-1)。取引所の所在が国内か国外かは要否に影響しない。
- 一方、国外財産調書への記載対象にはならない(FAQ 7-3)。暗号資産は保有者の住所地で所在を判定するため、居住者が海外取引所に持つ暗号資産は「国外にある財産」に当たらない。
- 海外取引所や個人間取引には年間取引報告書が交付されない。取得価額は銀行口座の入出金や取引履歴と取引相場から確認し、不明なら売却価額の5%相当額とすることも認められる(FAQ 2-7)。
本記事は国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」令和7年12月版に基づきます。
結論:調書は「財産債務調書」側、価額は自分で確認する
海外の暗号資産取引所を使っている場合に迷いやすいのが、法定調書への記載と、取得価額の確認方法です。国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」令和7年12月版では、この2点について明確な取扱いが示されています。結論を先に言えば、記載先は財産債務調書であり、国外財産調書ではありません。そして取得価額は、年間取引報告書が出ない前提で自分で確認する必要があります。
2つの調書の違い(FAQ 7-1 / 7-3)
| 項目 | 財産債務調書 | 国外財産調書 |
|---|---|---|
| 海外取引所の暗号資産 | 記載の対象になる | 記載の対象にならない |
| 判定の基準日 | その年の12月31日に保有しているか | — |
| 取引所の所在 | 国内・国外で要否は変わらない | — |
| 理由 | 暗号資産は保有者の住所(住所がない場合は居所)の所在で「国外にある」かを判定するため | 居住者が海外取引所に持つ暗号資産は「国外にある財産」に当たらないため |
| 記載の単位 | 種類別(銘柄別)および用途別(一般用・事業用) | — |
| 関係法令 | 国外送金等調書法6の2①③ ほか | 国外送金等調書法5 ほか |
FAQ 7-1 の注記では、暗号資産の所在について「その財産を有する方の住所(住所を有しない方にあっては、居所)の所在となりますので、所在別の記載は要しません」とされています。つまり、Binanceに置いていようと国内取引所に置いていようと、財産債務調書の書き方は変わりません。
なお、財産債務調書そのものの提出義務は、所得や財産の額の要件を満たす方に生じるものです。要件を満たさない場合は、暗号資産を持っているだけで提出義務が生じるわけではありません。
記載する価額の決め方(FAQ 7-2)
財産債務調書に書く暗号資産の価額は、その年の12月31日における「時価」または「見積価額」です。活発な市場が存在する暗号資産は、提出者が取引を行っている暗号資産交換業者が公表する12月31日の取引価格を時価として記載します。
- 交換業者が提出者の求めに応じて発行する残高証明書に記載された取引価格も、この取引価格に含まれる。
- 販売所で購入価格と売却価格が別々に公表されている場合は、売却価格で記載して差し支えない。
- 複数の交換業者で取引している場合は、提出者が選択した交換業者の価格でよい。
- 時価による算定が困難な場合は、12月31日の売買実例価額などを基に合理的に算定した見積価額でもよい。
「活発な市場が存在する」とは、取引所または販売所で十分な数量および頻度で取引が行われ、継続的に価格情報が提供されている場合を指します。
取得価額が分からないときの確認方法(FAQ 2-7)
国内の交換業者を通じた取引であれば、国税庁が交付をお願いしている「年間取引報告書」に、年中購入数量・年中購入金額・年中売却数量・年中売却金額などが記載されています。手元にない場合は交換業者に再交付を依頼できます。
これに対して、海外の交換業者を使った取引や個人間取引には、この報告書がありません。FAQ 2-7 は、この場合の確認方法として次の2つを挙げています。
- 暗号資産を購入した際に利用した銀行口座の出金状況、売却した際に利用した銀行口座の入金状況から確認する。
- 暗号資産取引の履歴と、暗号資産交換業者が公表する取引相場を利用して確認する。個人間取引の場合は、自分が主として利用する交換業者の取引相場を使う。
それでも取得価額が分からない場合、売却した暗号資産の取得価額を売却価額の5%相当額とすることが認められます。FAQ の例では、500万円で売却した暗号資産の取得価額を25万円とすることが認められると示されています。ただしこれは概算であり、実際の取得価額が5%を上回るなら不利になります。取引履歴は残しておくに越したことはありません。
確定申告書を提出した後に正しい金額が判明した場合は、修正申告または更正の請求で内容を訂正します。
外貨建て取引の換算
暗号資産の売却・購入などを外貨で行った場合、年間取引報告書では取引時の電信売買相場の仲値(TTM)で円に換算した金額に基づいて各事項が記載されます(FAQ 2-9)。海外取引所でUSDT建てやUSD建ての取引をしている場合も、円換算が必要になる点は同じです。
所得区分は300万円がひとつの分かれ目(FAQ 2-2)
暗号資産取引による利益は、原則として雑所得(その他雑所得)に区分されます。ただし令和7年12月更新のFAQ 2-2 では、その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合、帳簿書類の保存があれば原則として事業所得、保存がなければ原則として業務に係る雑所得に区分されると整理されています。海外取引所を使っていても、この区分の考え方は変わりません。
よくある質問(FAQ)
海外の取引所に置いている暗号資産は国外財産調書に書きますか。
いいえ。国税庁FAQ 7-3 のとおり、国外財産調書への記載対象にはなりません。暗号資産は保有者の住所地で所在を判定するため、居住者が国外の取引所に持つ暗号資産は「国外にある財産」に当たらず、財産債務調書の対象になります。
海外取引所には年間取引報告書がありません。取得価額はどう出しますか。
銀行口座の出金・入金の状況から確認する方法と、取引履歴と交換業者が公表する取引相場から確認する方法が示されています。どうしても分からない場合は、売却価額の5%相当額を取得価額とすることが認められます。
財産債務調書に書く価額はいつ時点のものですか。
その年の12月31日における時価または見積価額です。活発な市場が存在する暗号資産は、自分が取引している交換業者が公表する12月31日の取引価格を用い、残高証明書に記載された取引価格も含まれます。
出典(一次情報)
- 国税庁 暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)令和7年12月(PDF)
- 国税庁 暗号資産等に関する確定申告関係(暗号資産の計算書)
- 国税庁 タックスアンサー No.1524 暗号資産を売却又は使用することにより利益が生じた場合の課税関係
- 国税庁 確定申告書等作成コーナー・確定申告特集
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言・税務助言ではありません。個別の判断は専門家や公的機関の一次情報をご確認ください。




