暗号資産の損失は繰越できない|雑所得の損益通算のルールを解説

この記事の結論

  • 暗号資産取引の所得は原則として雑所得(その他雑所得)で、その計算上生じた損失は給与所得など他の所得から差し引けません(国税庁FAQ 2-11)。
  • 所得税法上、他の所得と通算できる損失は不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得に限られます(所法69、タックスアンサーNo.2250)。
  • 雑所得の損失を翌年以降に繰り越す制度もないため、同じ年の中で暗号資産どうしの損益を相殺するところまでが上限です。

本記事は国税庁の公表資料(令和7年12月更新版FAQ等)にもとづく2026年9月時点の整理です。

結論:通算も繰越もできない

暗号資産取引で損失が出ても、その損失を給与所得や事業所得から差し引くことはできません。翌年以降に繰り越すこともできません。理由は所得区分にあります。

国税庁の暗号資産FAQ 2-2は、暗号資産取引による所得を原則として雑所得(その他雑所得)に区分します。一方、所得税法69条が損益通算の対象とする損失は、不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の4つに限られます。雑所得はこの4つに含まれないため、通算の入口に立てません。

国税庁FAQ 2-11は、この点を次のように明示しています。「雑所得の金額の計算上生じた損失については、給与所得など他の所得から差し引く(通算する)ことはできません」。

所得区分ごとの通算・繰越の可否

区分他の所得との損益通算損失の繰越根拠
暗号資産(雑所得・総合課税)できないできない所法69/FAQ 2-11
暗号資産の証拠金取引できない(総合課税)できないFAQ 2-12
先物取引に係る雑所得等(申告分離)同じ区分内でのみ可能一定の要件で可能No.1522
上場株式等の譲渡損失申告分離を選択した配当等と可能一定の要件で可能No.1474
不動産・事業・山林・譲渡可能制度により異なるNo.2250

「同じ年の中での相殺」はできる

できないことばかりではありません。同一年分の中で、暗号資産の売却益と売却損を相殺して雑所得の金額を計算することはできます。年間の損益を合計した結果がマイナスなら、その年の雑所得は0円として扱われ、マイナス分がどこかに繰り越されることはない、という関係です。

したがって、実務上の対応は年をまたぐ節税ではなく、同じ年の中でどこまで損益が確定しているかを正確に把握することに向きます。年間取引報告書や取引履歴の保存が効いてくるのはこの場面です。

先物取引との違いはどこから来るか

FXや商品先物には、申告分離課税と3年間の繰越控除という別ルートがあります。これは租税特別措置法の特例で、対象となる取引が法律で列挙されているためです。

タックスアンサーNo.1522の対象範囲には、店頭デリバティブ取引のうち「一定の暗号資産または金融指標に係るものを除きます」という除外が置かれています。暗号資産の証拠金取引が特例の外に置かれているのは、この除外によるものです。

300万円を超える場合の例外

ひとつだけ区分が動く場面があります。国税庁FAQ 2-2は、収入金額が300万円を超える場合、帳簿書類の保存があれば原則として事業所得、保存がなければ原則として業務に係る雑所得と整理しています。事業所得に区分されれば損益通算の対象になりますが、保存があっても営利性が認められない場合などは個別判断とされており、自己判断で事業所得として申告するのは危険です。該当しそうな場合は税務署または税理士に確認してください。

よくある質問(FAQ)

暗号資産の損失を給与所得から差し引けますか?

できません。国税庁の暗号資産FAQ 2-11は「雑所得の金額の計算上生じた損失については、給与所得など他の所得から差し引く(通算する)ことはできません」と明記しています。根拠は所得税法69条です。

損失を翌年に繰り越せますか?

繰り越せません。損失の繰越控除は、上場株式等に係る譲渡損失(タックスアンサーNo.1474)や先物取引に係る雑所得等(No.1522)など、法律で定められた区分にだけ認められている制度です。暗号資産の雑所得はこれに含まれません。

FXのように申告分離課税にはできませんか?

できません。国税庁の暗号資産FAQ 2-12は、暗号資産の証拠金取引について「租税特別措置法に規定する申告分離課税(先物取引に係る雑所得等の課税の特例)の適用はありません」として、総合課税で申告する扱いを示しています。

出典(一次情報)

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言・税務助言ではありません。個別の判断は専門家や公的機関の一次情報をご確認ください。