暗号資産の税務調査の流れ|令和6事務年度の調査件数と追徴税額

この記事の結論

  • 国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」によれば、暗号資産等取引を行っている個人に対する実地調査(特別・一般)は613件(前事務年度535件)、1件当たりの申告漏れ所得金額は2,538万円、1件当たりの追徴税額は745万円。
  • 745万円は所得税の実地調査(特別・一般)全体の1件当たり299万円の約2.5倍で、国税庁自身が資料中で「2.5倍」と書いている。
  • 実地調査は原則として事前通知から始まる。国税通則法第74条の9第1項は、開始日時・場所・目的・対象税目・対象期間などを「あらかじめ」通知するものとすると定め、第74条の11は終了時の書面通知や調査結果の説明手続を定めている。

本記事は2026年9月11日に国税庁「令和6事務年度における所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月公表)と、e-Gov法令検索の国税通則法を取得して作成しました。数値は令和6年7月から令和7年6月までの実績です。

令和6事務年度の実数

国税庁が令和7年12月に公表した「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」は、暗号資産(仮想通貨)等取引を行っている個人に対する調査状況を独立した項目として載せています。数字は令和6年7月から令和7年6月までの実績です。

項目令和5事務年度令和6事務年度前年比(参考)令和6事務年度の実地調査全体
調査件数535件613件114.6%36,404件
申告漏れ等の非違件数491件575件117.1%32,001件
申告漏れ所得金額126億円156億円123.8%5,411億円
追徴税額35億円46億円131.4%1,090億円
1件当たり申告漏れ所得金額2,356万円2,538万円107.7%1,486万円
1件当たり追徴税額662万円745万円112.5%299万円

資料の本文は「暗号資産等取引を行っている個人に対する調査の1件当たりの追徴税額は745万円と、所得税の実地調査(特別・一般)全体の299万円に比べ、2.5倍となっています」と書いています。件数の水準は所得税の実地調査全体(36,404件)から見れば1.7%程度ですが、1件当たりの重さが違うということです。

調査は3つの類型に分かれる

同じ資料は「調査等」を実地調査と簡易な接触に分けています。令和6事務年度の合計は73万6千件(前事務年度60万5千件)で、うち申告漏れ等の非違があったのは36万9千件でした。

類型資料の定義令和6事務年度の件数追徴税額
実地調査(特別・一般)高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を対象に深度ある調査を行うもの。特別調査は1件当たり10日以上を目安に実施3万6千件1,090億円
実地調査(着眼調査)資料情報や申告内容の分析の結果、申告漏れ等が見込まれる個人を対象に実地に臨場して短期間で行う調査1万件42億円
簡易な接触原則、納税者宅等に臨場することなく、文書・電話による連絡または来署依頼による面接を行い申告内容を是正するもの68万9千件299億円

「調査等」全体の追徴税額は1,431億円で、国税庁はこれを過去最高としています(現在の集計方法となった平成21事務年度以降の比較)。暗号資産の申告漏れで最初に届くのが必ず臨場調査とは限らず、件数のうえでは簡易な接触が圧倒的多数です。

事前通知に含まれる事項(国税通則法第74条の9)

実地調査は、原則として事前通知から始まります。国税通則法第74条の9第1項は、質問検査等を行わせる場合には「あらかじめ、当該納税義務者(当該納税義務者について税務代理人がある場合には、当該税務代理人を含む。)に対し、その旨及び次に掲げる事項を通知するものとする」と定めています。掲げられている冒頭の5号は次のとおりです。

通知される事項
第1号質問検査等を行う実地の調査を開始する日時
第2号調査を行う場所
第3号調査の目的
第4号調査の対象となる税目
第5号調査の対象となる期間

このうち第4号と第5号は、第65条・第66条の加算税の規定が参照する「調査通知」の中身でもあります。加算税の率は、申告が調査通知の前か後か、更正・決定を予知してされたものかどうかで変わるため、通知を受けた日付は記録しておく意味があります。

終了の際の手続(国税通則法第74条の11)

第74条の11は、調査の終わり方を4つの局面に分けています。

局面条文が定めていること
更正決定等をすべきと認められない場合(第1項)その時点において更正決定等をすべきと認められない旨を書面により通知するものとする
更正決定等をすべきと認める場合(第2項)当該職員は、調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた額およびその理由を含む)を説明するものとする
修正申告等の勧奨(第3項)勧奨することができる。この場合、調査結果に関し納税申告書を提出したときは不服申立てはできないが更正の請求はできる旨を説明し、その旨を記載した書面を交付しなければならない
調査後の再調査(第5項)通知や更正決定等の後でも、新たに得られた情報に照らし非違があると認めるときは、第74条の2から第74条の6までに基づき質問検査等を行うことができる

第4項は、税務代理人がいて納税義務者の同意がある場合に、通知・説明・交付を税務代理人に対して行えることを定めています。第3項の「不服申立てはできないが更正の請求はできる」という説明と書面の交付は義務(「しなければならない」)である点が、他の項の「するものとする」「できる」と書き分けられています。

この記事で扱っていないこと

調査で指摘されやすい具体的な論点(交換・レンディング・エアドロップの計上漏れなど)、重加算税の賦課要件、税務代理人の選び方、個別事案の対応方針は書いていません。国税庁の資料に載っているのは調査の件数と金額であり、どの取引が狙われたかまでは公表されていないためです。加算税と延滞税の率は別記事で扱っています。

よくある質問(FAQ)

暗号資産の税務調査は年間どのくらい行われていますか?

国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」によると、暗号資産(仮想通貨)等取引を行っている個人に対する実地調査(特別・一般)は613件でした。前事務年度は535件で、114.6%の増加です。申告漏れ等の非違件数は575件、申告漏れ所得金額の総額は156億円、追徴税額の総額は46億円と公表されています。

1件当たりの追徴税額はいくらですか?

令和6事務年度で745万円です。前事務年度の662万円から112.5%になりました。国税庁は同じ資料で、所得税の実地調査(特別・一般)全体の1件当たり299万円に比べて2.5倍だと説明しています。1件当たりの申告漏れ所得金額は2,538万円です。

税務調査は事前に連絡がありますか?

国税通則法第74条の9第1項は、実地の調査で質問検査等を行わせる場合、あらかじめ納税義務者(税務代理人がいる場合は税務代理人を含む)に対し、開始する日時、調査を行う場所、調査の目的、対象となる税目、対象となる期間などを通知するものとすると定めています。なお件数の上では、臨場しない「簡易な接触」が令和6事務年度で68万9千件と大半を占めます。

出典(一次情報)

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言・税務助言ではありません。個別の判断は専門家や公的機関の一次情報をご確認ください。