暗号資産の年間取引報告書の見方|10項目と計算書の使い方を整理

この記事の結論

  • 年間取引報告書は、国税庁が国内の暗号資産交換業者に交付を「お願いしている」書類で、平成30年1月1日以後の取引が対象。法令で交付が義務づけられた法定調書ではない。
  • 記載事項は10項目(年始数量/年中購入数量/年中購入金額/年中売却数量/年中売却金額/移入数量/移出数量/年末数量/損益合計/支払手数料)で、様式は交換業者によって異なる場合がある。
  • 国税庁の「暗号資産の計算書(総平均法用)」に報告書の数値を転記すれば所得金額を計算できる。国税庁のFAQは、A取引所とB取引所の2社分を合算した例で所得金額2,189,000円という計算結果を示している。

本記事は2026年9月11日に国税庁「暗号資産及び電子決済手段に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」(令和7年12月最終改訂・令和7年12月1日現在の法令等に基づく版)を取得して作成しました。

年間取引報告書とは何か

国税庁のFAQ「2-7 暗号資産の取得価額や売却価額が分からない場合」は、平成30年1月1日以後の暗号資産取引について、国税庁から暗号資産交換業者に対して「年間取引報告書」の交付をお願いしていますと書いています。義務ではなく要請という位置づけであることは、原文どおりに読むと分かります。

同じ項目には「お手もとに年間取引報告書がない場合は、暗号資産交換業者に年間取引報告書の(再)交付を依頼してください」という一文と、「平成29年以前は、年間取引報告書が交付されない場合があります」という注が置かれています。

記載される10項目(FAQ 2-9の原文)

FAQ「2-9 年間取引報告書の記載内容」が挙げる欄は次の10個です。

FAQ本文の説明
年始数量その年の1月1日現在の暗号資産の保有数量
年中購入数量その年の暗号資産の購入数量
年中購入金額その年の暗号資産の購入金額(取得価額)
年中売却数量その年の暗号資産の売却数量
年中売却金額その年の暗号資産の売却金額
移入数量その年に購入以外で口座に受け入れた暗号資産の数量
移出数量その年に売却以外で口座から払い出した暗号資産の数量
年末数量その年の12月31日現在の暗号資産の保有数量
損益合計その年の暗号資産の証拠金取引の損益の合計額
支払手数料その年に暗号資産交換業者に支払った支払手数料の額

外貨建てで売買した場合は、取引時の電信売買相場の仲値(TTM)で円換算した金額に基づいて各欄が記載されます。また同FAQは末尾で「暗号資産交換業者により、様式が異なる場合があります」と明記しています。

迷いやすい3つのケースの表示

FAQ 2-9は、次の取引について各欄がどう表示されるかを個別に示しています。

ケース各欄の表示
交換業者から無償で暗号資産の交付を受けた年中売却数量は「-」、年中売却金額は交付を受けた暗号資産の時価、年中購入数量は交付数量、年中購入金額は同じ時価
暗号資産で決済した(業者で円転)年中売却数量は円転した数量、年中売却価額は円転した時価
暗号資産で決済した(暗号資産そのもので支払)移出数量に決済で使用した数量が載る
暗号資産Aと暗号資産Bを交換したAの年中売却数量は交換したAの数量、Aの年中売却金額は取得したBの時価。Bの年中購入数量は取得数量、年中購入金額は同じ時価

無償交付を受けた場合に「年中売却金額」へ時価が入る点と、暗号資産同士の交換で売却が発生する点は、報告書だけを眺めていると読み違えやすい部分です。

計算書への転記と、FAQの計算例

FAQ「2-8 年間取引報告書を活用した暗号資産の所得金額の計算」は、報告書の太枠(赤字)部分と太字点線枠(青字)部分を、国税庁ホームページの「暗号資産の計算書(総平均法用)」に入力すれば簡便に所得金額を計算できる、と答えています。掲載されているのは次の数値です。

項目FAQの計算例(A取引所+B取引所の合計)
購入等 数量6.50
購入等 金額4,037,800円
売却 数量5.00
収入金額(売却価額)5,295,000円
売却原価3,106,000円
所得金額2,189,000円
年末残高・翌年繰越1.50(931,800円)

総平均単価は621,200円です。FAQは「暗号資産の譲渡原価を含め、その売却等に係る所得金額の計算については、暗号資産交換業者から送付される『年間取引報告書』を基に『暗号資産の計算書(総平均法用・移動平均法用)』を作成することで、簡便に行うことができます」とも書いています。

報告書が手に入らないとき

国外の交換業者や個人間取引はこの仕組みの外側です。FAQ 2-7は、銀行口座の入出金状況から確認する方法、取引履歴と交換業者が公表する取引相場から確認する方法を挙げたうえで、売却した暗号資産の取得価額について売却価額の5%相当額とすることが認められると書いています(500万円で売却したなら25万円)。関係法令等の欄には所基通達48の2-4が示されています。

この記事で扱っていないこと

個別の暗号資産交換業者が発行する報告書の様式・入手手順・ダウンロード場所は書いていません。各社のヘルプページを本記事の作成時に機械的に取得して確認できなかったため、社名を挙げた説明は省いています。取得できた一次情報は下の出典のとおり国税庁のものだけです。移動平均法を届け出ている場合の計算、法人の期末時価評価、損益通算の可否も対象外です。

よくある質問(FAQ)

年間取引報告書は必ずもらえますか?

法令で交付が義務づけられた書類ではありません。国税庁FAQは「国税庁から暗号資産交換業者に対して、次の事項などを記載した『年間取引報告書』の交付をお願いしています」と書いています。手元にない場合は交換業者に再交付を依頼してください、というのがFAQの案内です。平成29年以前は交付されない場合があります。

年間取引報告書には何が書かれていますか?

年始数量、年中購入数量、年中購入金額、年中売却数量、年中売却金額、移入数量、移出数量、年末数量、損益合計、支払手数料の10項目です。損益合計は証拠金取引の損益の合計額を指します。様式は暗号資産交換業者によって異なる場合があるとFAQに明記されています。

取得価額が分からないときはどうすればよいですか?

国税庁FAQ 2-7は、銀行口座の入出金状況や取引履歴と公表相場から確認する方法を挙げています。それでも分からない場合、売却した暗号資産の取得価額を売却価額の5%相当額とすることが認められます。500万円で売却した場合は25万円を取得価額にできる、という例が示されています。

出典(一次情報)

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言・税務助言ではありません。個別の判断は専門家や公的機関の一次情報をご確認ください。