この記事の結論
- 令和6事務年度の暗号資産等取引を行う個人への実地調査は613件で、前事務年度の535件から増えています。
- 1件当たりの申告漏れ所得金額は2,538万円、1件当たりの追徴税額は745万円でした。
- 同年度の所得税の実地調査(特別・一般)全体の1件当たり追徴税額は299万円で、暗号資産等は約2.5倍です。
本記事は国税庁が令和7年11月に公表した「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」と、令和7年12月改訂の暗号資産FAQに基づきます(2026年9月11日時点)。
数字で見る暗号資産の調査状況
国税庁は毎年、所得税及び消費税の調査等の状況を公表しています。そのなかで「暗号資産(仮想通貨)等取引を行っている個人に対する調査状況」が独立した項目として集計されており、件数と金額を年度で比べられます。
| 項目 | 令和5事務年度 | 令和6事務年度 |
|---|---|---|
| 実地調査(特別・一般)の件数 | 535件 | 613件 |
| 申告漏れ等の非違件数 | 491件 | 575件 |
| 申告漏れ所得金額の総額 | 126億円 | 156億円 |
| 追徴税額の総額 | 35億円 | 46億円 |
| 1件当たり申告漏れ所得金額 | 2,356万円 | 2,538万円 |
| 1件当たり追徴税額 | 662万円 | 745万円 |
同じ資料では、令和6事務年度の所得税の実地調査(特別・一般)全体の1件当たり追徴税額が299万円と示されています。暗号資産等の745万円はその約2.5倍です。国税庁は「資料情報の収集・分析に努め、積極的に調査を実施しています」と記載しています。
対象になりやすい場面として資料から読み取れること
公表資料は個別の選定基準を示していません。ここでは、公表されている制度の枠組みから、申告内容と実態がずれやすい場面を挙げます。いずれも「必ず調査になる」という意味ではありません。
1. 日本円に換えていない取引を申告していない場合
国税庁の暗号資産FAQでは、暗号資産同士の交換について「保有する暗号資産Aを他の暗号資産Bと交換した場合、暗号資産Aで暗号資産Bを購入したことになります」として、暗号資産Aの譲渡に係る所得金額を計算する必要があるとしています。日本円に出金していなくても計算の対象です。
2. マイニングやステーキングの取得を収入に入れていない場合
同FAQは、マイニング・ステーキング・レンディングなどで暗号資産を取得した場合、その取得時点の価額(時価)が総収入金額に算入され、要した費用が必要経費に算入されるとしています。
3. 所得区分の判断がずれている場合
令和7年12月更新のFAQでは、暗号資産取引による利益は原則として雑所得(その他雑所得)に区分され、その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合は、帳簿書類の保存があるときは原則として事業所得、保存がないときは原則として業務に係る雑所得に区分されるとしています。帳簿の有無が区分に直結します。
手元に用意しておきたい書類
国税庁のFAQが計算の根拠として挙げている資料を、そのまま準備物として並べると次のようになります。
- 取引所が交付する年間取引報告書(FAQ 2-8・2-9 で計算への活用方法が示されています)
- 取得価額が分かる資料。購入手数料を含めた金額が取得価額になります(FAQ 1-5)
- 暗号資産の評価方法の届出書の控え。届出がない場合、個人の法定評価方法は総平均法です(FAQ 2-5)
- 暗号資産同士の交換、商品購入、マイニング等での取得の記録(FAQ 1-2、1-3、1-7)
- 帳簿書類。収入金額が300万円を超える場合の所得区分に影響します(FAQ 2-2)
調査手続の一般的な枠組み
税務調査の手続そのものは、国税通則法の改正を受けて国税庁が定めた「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)」に整理されています。同指針は、調査と行政指導の区分を明示したうえで手続を行うこと、法令に定められた調査手続を遵守することを求めています。暗号資産に固有の手続が別に定められているわけではありません。
個別の事案でどう扱われるかは、取引の実態によって変わります。判断に迷う場合は、所轄の税務署または税理士に確認してください。
よくある質問(FAQ)
暗号資産の税務調査は増えているのですか。
国税庁の公表資料では、暗号資産等取引を行っている個人に対する実地調査(特別・一般)は令和5事務年度の535件から令和6事務年度は613件へ増えました。申告漏れ所得金額の総額も126億円から156億円へ増えています。
追徴税額はほかの調査と比べて大きいのですか。
令和6事務年度の1件当たり追徴税額は、暗号資産等取引を行う個人が745万円、所得税の実地調査(特別・一般)全体が299万円で、約2.5倍と公表されています。
日本円に出金していなければ申告は不要ですか。
不要とは限りません。国税庁のFAQでは、暗号資産同士の交換も暗号資産の譲渡として所得金額を計算する必要があるとされています。商品の購入に使った場合も同様の扱いです。
出典(一次情報)
- 国税庁「令和6事務年度における所得税及び消費税調査等の状況」
- 同 報道発表資料(PDF・18ページ)
- 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」令和7年12月改訂
- 国税庁「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)」
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言・税務助言ではありません。個別の判断は専門家や公的機関の一次情報をご確認ください。




