金商法と暗号資産|2026年時点の適用範囲を早見表で確認する

この記事の結論

  • 金融商品取引法第2条第24項第3号の2は「暗号等資産」を金融商品として定義している。資金決済法第2条第14項の暗号資産と、同条第5項第4号のうち投資者の保護を確保することが必要と認められるものとして内閣府令で定めるものを指す。
  • 第六章の三(第185条の22〜第185条の24)に、暗号等資産に関する不正行為の禁止、風説の流布・偽計等の禁止、相場操縦行為等の禁止が置かれている。有価証券について定める第157条・第158条は、暗号等資産関連デリバティブ取引等には適用しない旨が明記されている。
  • 第43条の6は暗号等資産関連業務についての特則で、暗号等資産の性質に関する説明義務と、顧客を誤認させるような表示の禁止を定めている。

本記事は2026年9月11日にe-Gov法令検索APIで金融商品取引法の条文を取得して作成しました。条文は改正により変わるため、実務では取得時点の版をご確認ください。

早見表:暗号資産に関係する金商法の条文

「暗号資産は金商法の外にある」という説明を見かけますが、2026年9月時点でe-Gov法令検索から取得できる金融商品取引法には、暗号等資産に関する規定が既に置かれています。関係する条文を並べると次のとおりです。

条文見出し定めていること
第2条第24項第3号の2定義「金融商品」の一つとして暗号等資産を掲げる。資金決済法第2条第14項の暗号資産、および同条第5項第4号のうち投資者の保護を確保することが必要と認められるものとして内閣府令で定めるもの。
第43条の6暗号等資産関連業務に関する特則暗号等資産関連業務を行うときの、暗号等資産の性質に関する説明義務。契約の締結・勧誘に際して顧客を誤認させるような表示の禁止。
第185条の22不正行為の禁止不正の手段・計画・技巧の禁止、虚偽表示等を用いた財産の取得の禁止、虚偽の相場の利用の禁止。第157条は暗号等資産関連デリバティブ取引等には適用しない。
第185条の23風説の流布、偽計、暴行または脅迫の禁止相場の変動を図る目的での風説の流布・偽計・暴行・脅迫の禁止。第158条は暗号等資産関連デリバティブ取引等および暗号等資産等には適用しない。
第185条の24相場操縦行為等の禁止暗号等資産の売買、暗号等資産関連市場デリバティブ取引、暗号等資産関連店頭デリバティブ取引についての相場操縦行為等の禁止。
e-Gov法令検索API(law_id: 323AC0000000025)で2026年9月11日に取得した条文をもとに作成。

定義の読み方:資金決済法を経由している

第2条第24項第3号の2は、暗号等資産を独立に定義しているのではなく、資金決済に関する法律第2条第14項に規定する暗号資産を引いています。加えて、同条第5項第4号に掲げるもののうち、投資者の保護を確保することが必要と認められるものとして内閣府令で定めるものが含まれます。したがって、ある資産が金商法上の暗号等資産にあたるかどうかは、資金決済法側の定義と、内閣府令の指定の両方を見ないと判断できません。

また、条文は「暗号等資産関連金融指標」という用語を置いています。第185条の23が定義するとおり、これは暗号等資産の価格および利率等ならびにこれらに基づいて算出した数値に限られます。デリバティブ側の規制範囲も、この指標の定義で切られています。

有価証券の規定をそのまま流用していない

見落とされやすいのが、第185条の22第2項と第185条の23第2項です。前者は「第157条の規定は、暗号等資産関連デリバティブ取引等については、適用しない」、後者は「第158条の規定は、暗号等資産関連デリバティブ取引等及び暗号等資産等については、適用しない」と定めています。有価証券について古くからある不正行為・風説の流布の規定をそのまま及ぼすのではなく、第六章の三に暗号等資産用の規定を置いて、そちらで規律する構造になっています。条文を引用するときに第157条・第158条を持ち出すと、適用関係を取り違えることになります。

それでも現物ETFが国内で上場していない理由は別のところにある

金商法が暗号等資産を取り込んでいる一方で、投資信託及び投資法人に関する法律施行令第3条が定める特定資産の範囲には暗号資産が列挙されていません。同条第2号のデリバティブ取引に係る権利についても、括弧書きで暗号等資産および暗号等資産関連金融指標に係るものが除かれています。国内でビットコイン現物ETFが組成されていない理由を金商法側に求める説明は、条文を当たると成立しません。制度の層を分けて確認する必要があります。

この記事で扱っていないこと

インサイダー取引規制の創設や、資金決済法から金商法への移行といった今後の制度変更については、金融審議会の報告書が方向性を示していますが、施行時期や最終的な条文は確定していないため、本記事では現行条文の整理にとどめています。罰則の内容および課徴金の水準も扱っていません。

よくある質問(FAQ)

金融商品取引法に暗号資産の規定はありますか?

あります。第2条第24項第3号の2が「暗号等資産」を金融商品として定義し、第43条の6が暗号等資産関連業務の特則、第六章の三(第185条の22〜第185条の24)が不正行為・風説の流布・相場操縦の禁止を定めています。

金商法上の「暗号等資産」はどう定義されていますか?

資金決済に関する法律第2条第14項に規定する暗号資産、および同条第5項第4号に掲げるもののうち投資者の保護を確保することが必要と認められるものとして内閣府令で定めるものです。金商法の中で完結した定義ではなく、資金決済法と内閣府令を経由します。

有価証券の不正取引規制(第157条・第158条)は暗号資産にも適用されますか?

適用されません。第185条の22第2項は第157条を暗号等資産関連デリバティブ取引等に適用しない旨を、第185条の23第2項は第158条を暗号等資産関連デリバティブ取引等および暗号等資産等に適用しない旨を明記しています。暗号等資産については第六章の三の規定が適用されます。

出典(一次情報)

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言・税務助言ではありません。個別の判断は専門家や公的機関の一次情報をご確認ください。