この記事の結論
- 個人から暗号資産を贈与により取得した場合、贈与税の課税対象になる(暗号資産FAQ 4-1、相法2・2の2)。
- 評価は評価通達5により、活発な市場が存在する暗号資産は外国通貨に準じて、納税義務者が取引を行っている交換業者が公表する課税時期の取引価格で行う(FAQ 4-2)。
- 暦年課税の基礎控除は110万円で、1年間の合計がこれ以下なら申告は不要。超える場合は翌年2月1日から3月15日までに申告と納税を行う(タックスアンサー No.4402・No.4429)。
本記事は国税庁の公表内容(暗号資産FAQ 令和7年12月版、タックスアンサー)に基づく一般的な整理です。
結論:もらった側は贈与税、贈った側にも所得税の話がある
暗号資産を人からもらった場合、贈与税の対象になります。さらに見落とされやすいのが、贈った側にも所得税の計算上の処理が生じる点です。この記事では国税庁の公表内容をもとに、評価方法・申告期限・双方の課税関係を整理します。
もらった側:贈与税がかかる(FAQ 4-1)
相続税法では、個人が金銭に見積もることができる経済的価値のある財産を贈与により取得した場合、贈与税の課税対象になるとされています。暗号資産は資金決済法上「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値」と規定されているため、贈与により取得すれば贈与税が課税されます(関係法令:相法2・2の2、相基通達11の2-1)。
評価方法(FAQ 4-2)
暗号資産の評価方法は評価通達に定めがないため、評価通達5(評価方法の定めのない財産の評価)に基づき、評価通達に定める評価方法に準じて評価します。
| 場面 | 評価の考え方 |
|---|---|
| 活発な市場が存在する暗号資産 | 外国通貨に準じて、納税義務者が取引を行っている交換業者が公表する課税時期の取引価格で評価 |
| 残高証明書がある場合 | 交換業者が納税義務者の求めに応じて提供する残高証明書に記載された取引価格を含む |
| 販売所で購入価格と売却価格が別に公表 | 納税義務者が交換業者に売却する価格(売却価格)で評価して差し支えない |
| 複数の交換業者で取引 | 納税義務者が選択した交換業者が公表する課税時期の取引価格でよい |
| 活発な市場が存在しない暗号資産 | 内容・性質・取引実態等を勘案し個別に評価(売買実例価額、精通者意見価格等を参酌する方法など) |
「活発な市場が存在する」とは、取引所または販売所で十分な数量および頻度で取引が行われており、継続的に価格情報が提供されている場合を指します。
基礎控除と申告期限(No.4402・No.4408・No.4429)
- 暦年課税:その年の1月1日から12月31日までに贈与を受けた財産の価額の合計額から、基礎控除額110万円を差し引いた残りに課税されます。合計が110万円以下なら贈与税はかからず、申告も不要です。
- 相続時精算課税:一定の要件を満たす場合に選択でき、特定贈与者ごとに基礎控除額110万円を控除したうえで、特別控除額2,500万円を控除した残額に課税されます。特別控除は期限内申告書を提出した場合に限り適用されます。
- 申告と納税の期限:財産をもらった人が、もらった年の翌年の2月1日から3月15日までに申告と納税を行います。期限までに申告しなかった場合や少なく申告した場合は加算税、納税が遅れた場合は延滞税がかかります。
税率は速算表で計算します。直系尊属(父母や祖父母など)から18歳以上の人が受けた贈与には「特例税率」、それ以外には「一般税率」が使われます。たとえば贈与財産の価額が500万円の場合、基礎控除後の課税価格は390万円となり、一般税率では390万円×20%−25万円=53万円、特例税率では390万円×15%−10万円=48.5万円です(No.4408 の計算例)。
贈った側の課税(FAQ 2-10)
ここが見落とされやすい論点です。個人が贈与(相続人に対する死因贈与を除く)または遺贈(包括遺贈および相続人に対する特定遺贈を除く)により暗号資産を他の個人または法人に移転させた場合、その贈与または遺贈の時における暗号資産の価額(時価)を総収入金額に算入する必要があります(所法40、所令87、所基通達40-2・40-3)。つまり、含み益のある暗号資産を渡した側にも所得税の計算が発生し得ます。
あわせて、時価の70%相当額未満で売却する「著しく低い価額の対価による譲渡」に当たる場合は、時価の70%相当額との差額を総収入金額に算入する必要があります。FAQ の例では、時価100万円のBTCを45万円で売却したケースで、総収入金額が70万円、所得金額が25万円と計算されています。
なお、贈与により暗号資産を取得した個人が後にそれを譲渡する場合、取得価額はその贈与または遺贈の時における暗号資産の価額となります。
よくある質問(FAQ)
暗号資産の贈与はいくらから申告が必要ですか。
暦年課税では、その年に贈与を受けた財産の価額の合計額が基礎控除額110万円以下であれば贈与税はかからず、申告も不要です。110万円を超える場合は翌年2月1日から3月15日までに申告と納税を行います。
贈与された暗号資産の価額はいつの価格で評価しますか。
課税時期の取引価格です。活発な市場が存在する暗号資産は、納税義務者が取引を行っている交換業者が公表する課税時期の取引価格で評価し、残高証明書に記載された取引価格も含まれます(FAQ 4-2)。
暗号資産を贈った側にも税金がかかりますか。
贈与または遺贈により暗号資産を移転させた場合、所得税の計算上、その時の時価を総収入金額に算入する必要があります(FAQ 2-10、所法40)。含み益がある場合は渡した側にも課税関係が生じ得ます。
出典(一次情報)
- 国税庁 暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)令和7年12月(PDF)
- 国税庁 タックスアンサー No.4402 贈与税がかかる場合
- 国税庁 タックスアンサー No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
- 国税庁 タックスアンサー No.4429 贈与税の申告と納税
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言・税務助言ではありません。個別の判断は専門家や公的機関の一次情報をご確認ください。




