暗号資産の贈与を受けた場合の税金と注意点|基礎控除と評価のタイミング

暗号資産(仮想通貨)を家族から譲り受けた場合、それが生前の「贈与」であれば、原則として贈与税の課税対象になり得ます。現金や不動産の贈与と同じ枠組みが適用されますが、価格が変動する暗号資産特有の評価のタイミングや、送金記録の残し方に注意が必要です。この記事では、暗号資産の贈与を受けた場合の税金の基礎と注意点を整理します。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務判断には対応しません。

暗号資産の贈与にも贈与税がかかる(結論)

暗号資産は財産的価値を持つため、現金や株式と同様に贈与税の課税対象となります。国税庁の見解では、個人から個人へ財産の贈与を受けた場合、1年間(1月1日〜12月31日)に受けた財産の合計額から基礎控除額110万円を差し引いた残額に対して贈与税が課されるとされています(暦年課税の場合)。制度の詳細は国税庁のタックスアンサー「贈与税がかかる場合」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4402.htm)で確認できます。「家族間だから」「暗号資産だから」といった理由で課税が免除されるわけではない点に注意してください。

基礎控除110万円の考え方

暦年課税の贈与税では、1年間に受けた贈与財産の合計額が110万円以下であれば贈与税はかかりません。複数人から贈与を受けた場合も、贈与者ごとではなく受贈者(もらった側)が1年間に受け取った合計額で判定される点に注意が必要です。具体的な税率や計算方法は国税庁のタックスアンサー「贈与税の計算と税率(暦年課税)」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm)にまとめられています。暗号資産以外の財産(現金、株式など)と合算して判定する必要がある点にも留意してください。

暗号資産の評価タイミングと評価額

贈与税の計算では、贈与によって財産を取得した日(暗号資産が受贈者のウォレットや口座に移転した日)における時価で評価するという考え方が基本です。暗号資産は価格変動が大きいため、贈与を約束した時点と実際に送付された時点、税務申告を行う時点とで評価額が異なり得ます。評価のもととなる価格の考え方は、国税庁の「暗号資産等に関する税務上の取扱い」のページ(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/kakuteishinkokukankei/kasoutuka/index.htm)で示されている暗号資産の税務上の扱いの考え方が参考になります。取引所を経由する場合は、贈与日時点の取引レート(終値等)のスクリーンショットや取引履歴を保存しておくと、後日の説明がしやすくなります。

贈与契約書は必要か

贈与契約書の作成は法律上の必須要件ではありませんが、暗号資産の贈与では特に作成しておくことが望ましいとされています。理由は次のとおりです。

  • ウォレットへの送付記録だけでは、それが「贈与」なのか「一時的な預かり」なのか「貸付」なのかが客観的に分かりにくい
  • 税務調査の際に、贈与の事実・時期・当事者の合意を説明する資料として役立つ
  • 複数回に分けて贈与する場合、各回の贈与であることを明確にし、いわゆる「定期贈与」(あらかじめ決まった総額を分割して渡す契約とみなされるケース)との誤解を避けやすくなる

契約書には贈与者・受贈者、贈与する暗号資産の種類と数量、贈与日、送付先ウォレットアドレス等を記載し、双方が保管しておくことが基本です。

贈与税の申告と納付

項目 内容
申告期間 贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日まで
申告先 受贈者の住所地を管轄する税務署
基礎控除 年間110万円(暦年課税の場合)
納税義務者 財産をもらった人(受贈者)

申告を怠った場合、後日の税務調査により無申告加算税や延滞税が課される可能性があります。基礎控除を超える贈与を受けた場合は、期限内の申告が重要です。

相続時精算課税制度を選択している場合

受贈者が一定の要件を満たし「相続時精算課税」を選択している場合、暦年課税とは異なる控除額や計算方法が適用されます。相続時精算課税を選択すると、その後の贈与は原則として暦年課税の基礎控除(110万円)に戻せない点や、将来の相続時に贈与財産を合算して相続税を計算する仕組みである点など、制度の性質が大きく異なります。選択の可否や有利・不利の判断は個別の資産状況によるため、税理士への相談を推奨します。

相続との違いに注意

暗号資産の移転は、贈与(生前)か相続(死亡後)かによって適用される税制が異なります。生前に家族へ資産を移す「贈与」は贈与税、死亡によって財産が引き継がれる「相続」は相続税の対象です。暗号資産の相続に関する手続きの流れや、相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)といった相続税特有の考え方は暗号資産の相続手続きの流れと相続税の基礎|家族が知るべき備えで解説しています。生前贈与か相続かの選択は、資産状況や家族構成によって有利・不利が異なるため、早い段階で専門家に相談しておくことが望ましいとされています。

贈与を受けた暗号資産を売却した場合

贈与によって取得した暗号資産を後日売却して利益が出た場合、売却時の利益は別途、所得税(雑所得)の課税対象になり得ます。取得価額は原則として贈与者の取得価額を引き継ぐ(贈与者が取得した時点の価額を基準とする)という考え方が示されていますが、贈与時に贈与税評価額として計算した価額とは異なる点に注意が必要です。仮想通貨の売却益にかかる税金と確定申告の基礎的な考え方は仮想通貨の税金と確定申告が必要なケース|雑所得と計算の基礎で解説しています。

海外送金・海外在住の家族が関わる場合の注意

海外に住む家族からの贈与や、海外の取引所・ウォレットを経由した暗号資産の移転には、国内外の贈与者・受贈者の住所や国籍によって課税関係の判定が複雑になるケースがあります。また、送金の実態が不明確なまま多額の暗号資産を受け取ると、税務調査の際に贈与か別の取引かの説明を求められることもあります。海外が絡む贈与や、多額の暗号資産の移転を検討している場合は、事前に税理士へ相談することを強くおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q1. 家族から少額の暗号資産を譲り受けただけでも申告が必要ですか。

A. 1年間に受けた贈与財産の合計額(暗号資産以外も含む)が基礎控除110万円以下であれば、原則として贈与税はかからず申告も不要とされています。ただし他の財産の贈与と合算した金額で判定される点に注意してください。

Q2. 暗号資産の評価額はどの時点のレートを使えばよいですか。

A. 贈与によって財産を取得した日(受贈者のウォレット等に移転した日)の時価で評価するという考え方が基本です。取引所の当日レートの記録を保存しておくと、後日の説明がしやすくなります。具体的な評価方法に迷う場合は税理士にご相談ください。

Q3. 贈与契約書がないと贈与として認められませんか。

A. 契約書がなければ贈与そのものが無効になるわけではありませんが、暗号資産は送金記録だけでは贈与の事実や時期の証明が難しい場合があります。税務調査時の説明資料として、契約書の作成をおすすめします。

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務判断や申告の要否を保証するものではなく、投資助言に該当するものではありません。正確な取り扱いについては、国税庁(https://www.nta.go.jp/)または税理士等の専門家にご相談ください。