この記事の結論
- 国税庁のFAQは、売却・商品購入・暗号資産同士の交換をいずれも暗号資産の譲渡として扱っています。
- 収入すべき時期は原則として引渡しがあった日の属する年分で、選択により契約をした日の属する年分にもできます。
- 暗号資産取引による利益は原則として雑所得(その他雑所得)で、その損失は他の所得と通算できません。
本記事は国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」令和7年12月改訂(令和7年12月1日現在の法令・通達等に基づくもの)の記述に基づきます(2026年9月11日時点)。
場面別に見る課税タイミング
「含み益に税金がかかるのか」という疑問は、どの行為が譲渡にあたるのかを押さえると整理できます。国税庁のFAQに書かれている扱いを場面ごとに並べます。
| 場面 | FAQの扱い | 該当箇所 |
|---|---|---|
| 買って保有しているだけ | 譲渡にあたる行為がないため、所得の計算は生じない | 1-1〜1-3の裏返し |
| 暗号資産を売却した | 暗号資産の譲渡として所得金額を計算する | 1-1 |
| 暗号資産で商品を購入した | 暗号資産の譲渡として所得金額を計算する | 1-2 |
| 暗号資産同士を交換した | 暗号資産Aで暗号資産Bを購入したことになり、Aの譲渡として計算する | 1-3 |
| マイニング・ステーキング・レンディングで取得 | 取得時点の価額(時価)を総収入金額に算入し、要した費用を必要経費に算入 | 1-7 |
| 分裂(分岐)で取得 | 取得価額は0円 | 1-5の注記 |
保有しているだけの状態は、FAQが挙げる譲渡の場面に当てはまりません。値上がりしただけでは所得の計算は生じない、という整理になります。ただし、法人の場合は期末時価評価の論点が別にあります(FAQ 3-1-3)。
いつの年分になるのか
FAQ 2-1は、暗号資産取引により生じた利益について「原則として売却等をした暗号資産の引渡しがあった日の属する年分」とし、「ただし、選択により、その暗号資産の売却等に関する契約をした日の属する年分とすることもできます」と述べています。年末をまたぐ取引では、この2つのどちらを採るかで年分が変わります。
所得区分は収入金額300万円と帳簿で分かれる
FAQ 2-2(令和7年12月更新)は、暗号資産取引により生じた利益は原則として雑所得(その他雑所得)に区分されるとしたうえで、その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合の扱いを次のように示しています。
- 帳簿書類の保存がある場合……原則として事業所得
- 帳簿書類の保存がない場合……原則として業務に係る雑所得
注記では、帳簿書類の保存があっても営利性が認められない場合などには、事業所得に該当するかを個別に判断するとされています。
損失と証拠金取引の扱い
FAQ 2-11は、雑所得の金額の計算上生じた損失について、給与所得など他の所得から差し引く(通算する)ことはできないとしています。理由として、所得税法上、他の所得と通算できる損失は不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の計算上生じたものに限られる点を挙げています。
FAQ 2-12は、暗号資産の証拠金取引について、外国為替証拠金取引(FX)と異なり租税特別措置法の申告分離課税の適用がなく、総合課税により申告することになると述べています。FXが金融商品先物取引等として分離課税の対象となるのに対し、暗号資産の証拠金取引は措置法の規定により対象から除かれている、という説明です。
取得価額と評価方法の届出
FAQ 1-5は、対価を支払って購入した場合の取得価額は購入時に支払った対価の額であり、購入手数料など購入のために要した費用があれば加算するとしています。例として、2BTCを2,000,000円で購入し手数料550円を支払った場合、取得価額は2,000,550円と示されています。
FAQ 2-5は、初めて暗号資産を取得した年分の確定申告期限(原則として翌年3月15日)までに、納税地の所轄税務署長へ「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」を提出する必要があるとしています。届出がない場合、評価方法は総平均法になります。
個別の取引がどう扱われるかは実態によって変わります。判断に迷う場合は、所轄の税務署または税理士に確認してください。
よくある質問(FAQ)
暗号資産を持っているだけで税金はかかりますか。
国税庁のFAQが所得計算の対象として挙げているのは、売却、商品の購入、暗号資産同士の交換、マイニング等による取得といった場面です。保有しているだけの含み益はこれらに当てはまりません。なお法人については期末時価評価の論点が別にあります。
利益はいつの年分の所得になりますか。
FAQ 2-1では、原則として売却等をした暗号資産の引渡しがあった日の属する年分とされ、選択により売却等に関する契約をした日の属する年分とすることもできるとされています。
暗号資産で損失が出たら給与所得と相殺できますか。
できません。FAQ 2-11は、雑所得の計算上生じた損失を他の所得から差し引くことはできないとしています。他の所得と通算できるのは不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の損失に限られるためです。
出典(一次情報)
- 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」令和7年12月改訂(PDF・68ページ)
- 国税庁 タックスアンサー No.1524 暗号資産を使用することにより利益が生じた場合の課税関係
- 国税庁 タックスアンサー No.1525 暗号資産交換業者から暗号資産に代えて金銭の補償を受けた場合
- 国税庁 タックスアンサー No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言・税務助言ではありません。個別の判断は専門家や公的機関の一次情報をご確認ください。




