関税延期と暗号資産の大量清算|2025年2月4日の市場動向

2025年2月初め、米国の追加関税をめぐる不安と交渉の進展に合わせて、暗号資産市場は大きく変動した。清算額やトークン関連の利益には巨額の数字が並んだが、観測値と推計、送金と売却益を分けて読む必要がある。2月4日の日本時間昼までの情報を基準に、主要な論点を整理する。

関税発表と延期を時系列で確認する

米国が2月1日に発表した追加関税は、中国からの輸入に10%、カナダとメキシコからの輸入に25%を上乗せする内容だった。カナダのエネルギー資源は10%とされ、国別にも品目別にも条件が違う。発表した瞬間に、すべての輸入品へ同じ税率が適用されたという理解は正しくない。

その後、米政府は2月3日付の命令で、メキシコに対する追加関税の適用を3月4日午前0時1分、米東部時間まで延期した。カナダについても同日付の命令で同じ期限まで停止するとした。2月4日の日本時間に状況を振り返る際は、最初の強硬な発表と、その後の交渉による変更を一緒に確認する必要がある。

この延期は恒久的な撤回を意味せず、中国への措置まで一律に停止したという発表でもない。市場は政策の見出しだけでなく、対象、期限、交渉の進展に反応する。追加関税の予定が変われば、それを前提にした企業収益や物価への見通しも変わり得る。

暗号資産は週末にも取引が続くため、株式市場の取引時間外にニュースを織り込む場合がある。ただし、同時に価格が動いたことだけでは原因を一つに絞れない。関税への警戒と、レバレッジの解消による売りを分けて考えることが重要だ。

清算額は観測値と推計を区別する

Cointelegraphの2月3日付記事は、CoinGlassが集計した24時間の清算額を約22億4,000万ドルと伝えた。清算されたトレーダーは73万超と報じられたが、これは集計サービスの指標であり、複数口座を統合した世界の実人数を確定する国勢調査のようなものではない。

一方、BybitのBen Zhou CEOは、同社だけで約21億ドルの清算があったと述べ、市場全体では80億〜100億ドル規模ではないかと推計した。同氏は、取引所から外部へ送るデータの件数制限が、集計サービスとの差を生むと説明している。大きい方の数字を、そのまま検証済みの全市場合計とすることもできない。

金額の単位にも注意が必要だ。例えば21.19億ドルは約21億ドルであり、約2.12億ドルとは桁が異なる。また、24時間の数字は観測した時刻によって更新されるため、違う記事の値が必ずしも同じ時間帯を測っているとは限らない。

2020年3月12日の急落との比較も、対象取引所、取得方法、期間をそろえて初めて意味を持つ。清算額は強制決済されたポジションの規模を示すもので、市場全体の時価総額減少や投資家の純損失と同じ指標ではない。単純な過去最大という表現より、集計条件を確認したい。

急変時に強制決済が増える仕組み

証拠金取引では、保有するポジションに対して必要な担保が不足すると、取引所の規則に沿って強制決済が行われる。価格下落を見越す売りのポジションも、急反発すれば清算され得るため、急落局面の清算をすべて買い手の損失として扱うことはできない。

清算に用いる価格が、画面で目立つ直近の約定価格と同じとは限らない。参照価格や維持証拠金の条件は商品ごとに異なる。担保に暗号資産を使っている場合には、ポジションの含み損と担保価値の低下が同時に進むこともある。

市場の注文が薄くなれば、強制決済が価格をさらに動かし、他のポジションの決済につながる可能性がある。こうした連鎖を理解するには、清算総額だけでなく、建玉や市場の厚みも見る必要がある。

このため、反発を見込むことと、反発までポジションを維持できることは別の問題だ。短時間の安値を後から見て底値だったと評価できても、その途中で必要な証拠金を確保できるとは限らない。

関税がBTCに有利という見方は長期シナリオ

BitwiseのJeff Park氏は2月2日の投稿で、関税を国際交渉の手段と捉え、長期的にはBTCに追い風となる可能性を論じた。Pintuの翌日の紹介記事によれば、ドルの国際的な役割や、ドル安と金利低下へ向かう交渉を想定した見解だった。

これは、関税が発表されれば直ちにBTC価格が上がるという観測結果ではない。通貨政策、相手国の対応、インフレ、金利などに関する前提を置いた将来のシナリオであり、米政府がその道筋を公式に採用したことを示すものでもない。

短期の市場では、投資家が損失や証拠金不足に対応するため、長期的に有望と考える資産まで売却することがある。長期の見通しと当日の売買圧力は、互いに矛盾せず存在し得る。

分析者の強気な見解を読む際は、結論だけでなく、どの条件が成立すれば実現するのかを確認したい。交渉が進まない場合や、物価上昇で金利が下がらない場合にも同じ説明が成り立つかを考えると、予測の限界が見えやすくなる。

Sacks氏の会見は日本時間では2月5日未明の予定

当時の報道では、David Sacks氏と米議会の関係者によるデジタル資産政策の会見が、2月4日午後2時30分、米東部時間に予定されていた。日本時間では2月5日午前4時30分に当たり、2月4日昼の本記事の基準時点ではまだ開催前のイベントだった。

政策への期待が相場を動かすことはあっても、開催前に具体的な制度変更が決定したかのように書くことはできない。政府の方針説明、法案提出、議会での成立、規制当局による実施は異なる手続きになる。

会見を追う際には、何を検討すると述べたのか、何を正式に実施すると決めたのかを分けて記録したい。発言の一部だけを切り取って、特定銘柄の公的購入や価格上昇を約束したものとして読むのは避けるべきだ。

Hyperliquidの配布実績と将来の報酬は別に考える

HyperliquidのHYPE配布は、2月の急落時に初めて始まったものではない。あたらしい経済の2024年12月2日付記事は、同年11月29日にジェネシス配布が実施されたと報じている。発表された総供給量10億HYPEのうち、初期配布への割り当ては31%、3億1,000万HYPEだった。

初期ユーザーへの配分が注目されたことと、参加した全員が同じ利益を得たことは区別する必要がある。配布時の数量、売却時期、取引費用、利用中の損益によって結果は変わる。トークンの評価額を、そのまま参加者全員の確定利益とみなすことはできない。

ポイント制度は利用を促す手段になり得るが、過去にポイントと配布が結び付いたからといって、将来も同じ換算率や条件が約束されるわけではない。報酬への期待だけで取引を増やすと、手数料や価格変動による負担が先に発生する。

プロジェクトの継続性を見るなら、配布直後の評判に加えて、報酬がなくても利用する理由や、取引環境、安全性を確認する必要がある。「史上最も成功した」という評価には比較基準が必要であり、それだけで将来の成長を証明するものではない。

TRUMPの約8億ドル推計は全額が確定利益ではない

Coinliveが紹介したConor Grogan氏の2月3日の分析では、TRUMP関連の資金移動や流動性、手数料を合わせた金額が約8億200万ドルとされた。その内訳には取引所へ送られた資産、流動性に置かれたUSDC、手数料収入が含まれている。

同氏自身が、取引所へ移された暗号資産がすべて売却されたかは不明と留保している。したがって、この推計をトランプ氏本人が受け取った現金の純利益として扱うことはできない。資産の移動、保有残高、収入、費用を引いた利益は別の概念だ。

流動性プールに置いた資産にも価格変動や運用上の条件がある。評価額の大きさだけでは、同額を市場価格を動かさずに引き出せるか、誰に分配されるかは分からない。関連ウォレットの推定には帰属の不確実性も残る。

また、crypto.newsは2月3日、Binance共同創業者の何一氏が過去2年の内部調査を120件超、回収額を約3,000万ドルと説明したと報じた。これは同社幹部による説明であり、個別事件すべての司法判断を示す数字ではない。大口資金や取引所に関するニュースほど、発言者と確認範囲を明確にして読むことが大切だ。

よくある質問

Q. 市場全体の清算額は100億ドルと確定したのですか?

A. いいえ。80億〜100億ドルはBybit CEOの推計として報じられた数字です。集計サービスの観測値とはデータの範囲や取得条件が異なります。

Q. TRUMPの約8億ドルは全額が売却利益ですか?

A. そうは確認できません。分析には取引所への移動や流動性内の資産も含まれ、送金先での売却はすべて確認されていません。

Q. Hyperliquidの過去の配布は将来の報酬を保証しますか?

A. 保証しません。将来の参加条件や割り当ては別の問題で、取引に伴う費用や損失も考慮する必要があります。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。