2025年2月2日前後は、公的なビットコイン保有の議論と、トランプ関連トークンの売買が注目された。政策の提案、法律の改正、実際の資産購入はそれぞれ別の段階にある。当時の報道と議会・国際機関の資料を照らし合わせ、決まったことと未確定のことを整理する。
米州のBTC備蓄は法案の内容と審議段階を確認する
2月2日のPANewsのニュースまとめでは、米国の15州でビットコイン備蓄を推進する動きがあると報じられた。ただし、この数字は法律が成立した州や、実際にBTCを購入した州の数ではない。政策への支持表明と具体的な公金運用には距離がある。
アリゾナ州のSB1025について、1月23日付の州上院資料は、対象となる公的資金の最大10%を暗号資産へ投資できるようにする案と説明している。投資を認める上限であって、直ちに10%を購入する義務を設けるものではない。法案名にビットコイン備蓄とあっても、投資対象の定義や資金の範囲を本文で確かめる必要がある。
ユタ州では、1月28日の下院委員会報告がHB230の第2代替案を賛成8、反対1で推奨している。これは委員会での手続きであり、両院による最終可決を意味しない。両州をまとめて「成立まであと一歩」と扱うと、その後に必要な審議や修正を見落とす。
備蓄の議論を将来の買い需要と結び付けるには、成立の有無に加え、予算、実施主体、購入時期を確認したい。購入権限ができても、運用者が実際に執行するまでは保有数量は増えない。発表された上限額を、そのまま市場に流入する資金として計算するのは早計だ。
サルバドルは受け入れ義務を見直し、施行は4月30日
サルバドルのビットコイン法改正は、「法定通貨を完全に撤回した」という一文だけでは正確に説明できない。議会が公開する改正反映版の第1条には、法的通用を表すスペイン語のcurso legalが残る一方、民間での受け入れを任意とする内容が記されている。
改正では、支払いへの受け入れ義務が見直され、BTCでの納税を認めていた第4条も削除される。重要なのは、どの呼称を使うかだけでなく、店舗が受け取りを断れるか、公的な支払いに使えるかという具体的な条件の変化だ。
同資料の注記によれば、改正法令は1月29日付で、1月30日に公布され、施行日は4月30日とされている。したがって、2月2日時点の記事で改正後の制度がすべて施行済みと説明することはできない。可決や公布のニュースと、実際に適用される日を分ける必要がある。
背景にはIMFとの協議がある。IMFは2024年12月18日、約14億ドルの支援について職員レベルの合意を発表し、民間でのBTC受け入れを任意にすることや、税を米ドルで納めることなどを説明した。この段階では理事会承認などが条件として残っており、融資の全額受領が完了したという発表ではない。
WLFIの購入報道はウォレットの帰属を含めて読む
PANewsは2月2日、Onchain Lensの分析を引用し、WLFIが新設したとされるマルチシグウォレットについて報じた。報道内容は、Coinbaseから1,000万USDCを引き出し、2億WLFIを購入したというものだ。本稿では、このウォレットの管理者や取引の目的を独立に確認した事実としては扱わない。
マルチシグは、資産を動かす際に複数の署名を必要とする仕組みを指す。しかし、その形式だけで誰が最終的に管理しているか、資金がどこから来たかまでは判定できない。分析サービスのラベルと、当事者が公表した保有情報は区別したい。
また、WLFIというプロジェクト名と、同じ略称のトークン名が一つの見出しに現れると、何を買ったのかが曖昧になりやすい。WLFIトークンの購入報道を、プロジェクトによるBTCやETHの購入へ読み替えることはできない。
大きな購入額は注目を集めるが、それだけでトークンの売却可能性や保有者の権利は分からない。参加条件、移転に関する制限、購入者への割り当て条件などは、それぞれ当時の公式文書で確認すべき事項である。
TRUMPの大口売却はSOL建ての取引とドル換算を分ける
同日のPANewsは、オンチェーン分析者の余烬が追跡したTRUMPの取引を紹介した。約63.7万TRUMPを売却して約5万5,000 SOLを得たとされ、売却時のドル換算額は約1,259万ドル、推計利益は約1,187万ドルと報じられている。取得時には3,000 SOLを使ったという分析だ。
ここで確認したいのは、受け取った資産がSOLとされている点だ。ドル換算の利益が表示されていても、米ドルの現金を引き出したことと同じではない。受け取ったSOLを保有していれば、その後のSOL価格によって資産評価は変わる。
記事に示された利益は、分析者が把握した取得と売却、換算時点の価格に基づく推計として読む必要がある。別のウォレットでの取引、手数料、税負担まで含めた本人の最終損益を確定する資料ではない。
早期の大口購入が確認されても、それだけで内部関係者と断定することはできない。また、成功した一つのアドレスは市場参加者全体の成績を代表しない。後から同じトークンを買う人には、取得価格も市場の厚みも異なる条件が待っている。
DEXの1月取引高は4,541億ドルとの集計
PANewsが2月1日に紹介したThe Blockの集計では、2025年1月の主要DEXの現物取引高は4,541億ドルだった。2024年12月の3,238.9億ドルと比べると約40%増で、当時の集計では過去最高と報じられた。Raydiumの取引高は1,241.3億ドルとされている。
取引高は、対象期間中に成立した売買を積み上げた指標だ。同じ資金で何度も交換すれば取引高は増えるため、4,541億ドルの新規資金が流入したという意味にはならない。利用者数や預け入れ残高、利益額とも別の数字である。
比較する際には、現物かデリバティブか、どのチェーンや取引基盤を含むか、期間の区切りが同じかを確認したい。データ提供元が後から対象や数値を修正することもあり、当時の記事の値と現在のダッシュボードが一致しない場合がある。
DEXの活発さを見るには取引高が有用だが、個別トークンを売却しやすいかは、その取引ペアの流動性に左右される。市場全体の月間記録が大きくても、少額の注文で価格が動くペアはあり得る。利用するプールの条件まで確かめることが必要だ。
DeepSeekの影響と中銀の検討を混同しない
1月27日にはDeepSeekへの注目が高まるなか、テック株と暗号資産の値動きが話題となった。CoinDeskは同日、BTCが9万9,000ドルを下回った動きを報じ、DeepSeekとFOMCを市場の関心事項として挙げている。値動きに複数の材料が重なる局面では、すべてを一つの技術ニュースの結果と断定しない方がよい。
AIの計算費用が下がれば、サービスや企業の収益構造に影響する可能性はある。ただし、そこから物価、金融政策、暗号資産価格へ至る経路には多くの条件がある。低コストのAIが普及すればBTCも必ず上がる、という直接的な関係が実証されたわけではない。
公的機関の動きも別に確認したい。チェコ中銀が公表する総裁の説明によると、1月30日に理事会が承認したのは、追加の資産クラスへの投資可能性を分析する提案だった。その結果を踏まえて次の対応を判断し、それまでは変更を実施しないとしていた。
分析の開始は購入決定ではない。米州の法案、サルバドルの法改正、チェコ中銀の資産運用検討は、いずれもBTCに関わるが、決済制度、公金投資、外貨準備という異なる課題を扱う。共通の強気材料として一括りにせず、誰が何を決め、いつ実行するのかを追うとニュースの意味が明確になる。
よくある質問
Q. 米国15州がすでにBTCを備蓄していたのですか?
A. その意味ではありません。報道された推進の動きには提案や審議が含まれ、成立・購入執行・保有数量は個別に確認する必要があります。
Q. サルバドルの制度は2月2日に変更済みでしたか?
A. 議会資料に記された改正法の施行日は2025年4月30日です。1月の改正・公布と施行を区別して読む必要があります。
Q. DEXの取引高は資金流入額と同じですか?
A. 異なります。同じ資金を繰り返し取引した分も含むため、新規流入、利用者数、預け入れ残高を直接示すものではありません。
この記事の出典
- PANews・2月2日ニュースまとめ(MEXC転載)
- アリゾナ州上院・SB1025説明資料
- ユタ州下院・1月28日委員会報告
- サルバドル議会・改正を反映したビットコイン法
- IMF・2024年12月18日職員レベル合意
- PANews・WLFI購入の分析報道
- PANews・TRUMP大口売却の分析報道
- PANews・2025年1月DEX取引高
- CoinDesk・1月27日のBTCとDeepSeek
- チェコ中銀・総裁によるBTC検討の説明
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




