暗号資産(仮想通貨)の税金 計算・確定申告リファレンス【国税庁ベース/令和7年時点】

暗号資産(仮想通貨)の売却や決済で利益が出たとき、税金がどう計算されるのかを、国税庁の公式見解にもとづいて整理したリファレンスです。所得区分、税率、損益の計算方法(総平均法・移動平均法)、確定申告が必要になる基準までを一通り確認できます。制度は毎年見直されるため、本記事は令和7年(2025年)12月時点で国税庁が公表している取扱いを基準にしています。実際の申告にあたっては、必ず最新の一次資料と税務署・税理士の確認を優先してください。

暗号資産の利益は原則「雑所得」

暗号資産取引で生じた利益は所得税の課税対象で、原則として雑所得(その他雑所得)に区分されます。株式の譲渡益(申告分離課税)や、給与所得とは扱いが異なる点が出発点です。国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」の「2-2 暗号資産取引の所得区分」で、次のように整理されています。

状況(令和7年12月時点の取扱い) 所得区分
原則 雑所得(その他雑所得)
その年の収入金額が300万円超 かつ 帳簿書類の保存あり 原則として事業所得(営利性等により個別判断)
その年の収入金額が300万円超 かつ 帳簿書類の保存なし 原則として雑所得(業務に係る雑所得)
事業所得等の基因となる行為に付随する場合(例:事業用資産としての暗号資産を決済に使用) 事業所得

根拠は所得税法27条・35条・36条ほか。詳細は国税庁の該当ページで確認できます(タックスアンサー No.1524 暗号資産を使用することにより利益が生じた場合の課税関係暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和7年12月))。

総合課税と所得税の速算表

雑所得は総合課税が原則です。給与所得など他の所得と合算した課税所得金額に対し、金額が大きくなるほど税率が上がる累進税率で所得税額を計算します。所得税の速算表(国税庁「No.2260 所得税の税率」令和7年4月1日現在法令等)は次のとおりです。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 〜 1,949,000円 5% 0円
1,950,000円 〜 3,299,000円 10% 97,500円
3,300,000円 〜 6,949,000円 20% 427,500円
6,950,000円 〜 8,999,000円 23% 636,000円
9,000,000円 〜 17,999,000円 33% 1,536,000円
18,000,000円 〜 39,999,000円 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

所得税額は「課税所得金額 × 税率 − 控除額」で求めます。これとは別に、復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)や、別途住民税(標準税率で所得割10%程度)も課されます。数値の出典は国税庁 No.2260 所得税の税率を参照してください。

税金が発生するタイミング

暗号資産は「保有しているだけ(含み益)」では所得税の課税対象になりません。利益が確定した時点で総収入金額に算入されます。国税庁FAQで示されている主な課税タイミングは次のとおりです。

  • 暗号資産を売却して日本円などに換えたとき(売却額 − 譲渡原価 − 手数料が利益)
  • 暗号資産で商品やサービスを購入(決済)したとき(使用時の時価で利益を認識)
  • 暗号資産同士を交換したとき(交換により保有暗号資産を手放したものとして計算)
  • マイニング・ステーキング・レンディングなどで暗号資産を取得したとき(取得時点の時価を収入に算入)

収入すべき時期は、資産の譲渡による所得の収入すべき時期に準じて判定します(所得税法35条・36条、所得税基本通達36-12ほか)。

損益の計算方法:総平均法と移動平均法

売却時などの利益を計算するには、手放した暗号資産の「1単位当たりの取得価額(=譲渡原価)」を求める必要があります。国税庁は評価方法として総平均法移動平均法の2つを認めています。

評価方法 考え方
総平均法 1年間の取得価額の合計を、取得数量の合計で割って平均単価を求める。年間取引報告書を使う場合はこちらが案内されている。
移動平均法 暗号資産を取得するたびに、その時点の残高と合算して平均単価を計算し直す。

重要な点として、評価方法を選ばずに届け出をしなかった場合、個人は「総平均法」が法定評価方法として適用されます(国税庁FAQ「2-5 暗号資産の評価方法の届出」)。評価方法は暗号資産の種類(名称)ごとに選定し、選定する場合は「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」を納税地の所轄税務署長に提出します。いったん選んだ方法は継続して適用するのが原則で、同じ年でも方法によって譲渡原価(=利益額)が変わり得る点に注意してください。

必要経費として認められるもの

雑所得の金額は「総収入金額 − 必要経費」で計算します。国税庁FAQ「2-3 暗号資産の必要経費」では、暗号資産の売却に直接必要と認められる支出の例として次が挙げられています。

  • その暗号資産の譲渡原価
  • 売却の際に支払った手数料
  • インターネット・スマートフォンの回線利用料、パソコン等の購入費用のうち、暗号資産の売却のために直接必要と認められる部分

ただし注意点があります。回線利用料などは暗号資産取引分を明確に区分できる場合に限り算入でき、パソコンなど使用可能期間が1年以上かつ一定金額を超える資産は、その年に一括ではなく減価償却で複数年に分けて経費化します(所得税法37条・45条・48条の2ほか)。何がどこまで経費になるかは個別性が高いため、判断に迷う場合は税務署・税理士に確認するのが安全です。

会社員の「20万円ルール」

給与を1か所から受けていて年末調整が済んでいる会社員などの場合、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計額が年間20万円を超えるときに所得税の確定申告が必要になります(国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」)。暗号資産の利益もこの「その他の所得」に含まれます。逆に、給与収入が2,000万円を超える人などは、20万円以下でも申告が必要です。

注意したいのは、この20万円は所得税の申告要否の基準であって、住民税は別ということです。20万円以下で所得税の申告が不要な場合でも、住民税の申告は原則として必要になります。詳しい要件は国税庁 No.1900と、お住まいの自治体の案内を確認してください。仮想通貨の税金と申告が必要になるケースの全体像は仮想通貨の税金 確定申告の基礎知識でも解説しています。

損失(マイナス)の扱い

暗号資産取引で損失が出た場合の扱いは、株式やFXと大きく異なります。雑所得の損失は、給与所得など他の所得と損益通算できません(国税庁FAQ、所得税法69条)。他の所得と通算できる損失は不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得に限られ、雑所得はこれに該当しないためです。また、暗号資産の雑所得の損失を翌年以降に繰り越す制度も、原則としてありません。

ただし、同じ雑所得の中での相殺(たとえば暗号資産取引の利益と損失の通算)は計算上行われます。株式の譲渡損失や先物取引に係る雑所得等(申告分離課税)とは通算できない点にも注意が必要です。

マイニング・ステーキング・レンディング

マイニング(採掘)、ステーキング、レンディングなどで暗号資産を取得した場合、取得した時点の価額(時価)が総収入金額に算入され、それに要した費用は必要経費に算入されます(国税庁FAQ「1-7」、所得税法27条・35条・36条・37条)。取得後にその暗号資産を売却すれば、取得時の時価が取得価額となり、売却額との差額がさらに損益として計算されます。取得時と売却時の2段階で損益を考える点がポイントです。

NFTの課税タイミングと区分

NFT(非代替性トークン)の課税は、国税庁「No.1525-2 NFTやFTを用いた取引を行った場合の課税関係」で整理されています。財産的価値のある資産と交換できるNFTが対象で、値上がり益が生じる基因資産に当たるかどうかなどで区分が分かれます(掲載日:令和7年4月1日現在法令等)。

取引の場面 主な所得区分(概要)
デジタルアート等に紐づくNFTを購入し、値上がり後に譲渡(継続的・営利目的でない) 原則として譲渡所得
NFTの転売を反復・継続し営利目的で行う場合 雑所得または事業所得
役務提供の対価としてNFTを取得 事業所得・給与所得・雑所得のいずれか
臨時・偶発的にNFTを取得 一時所得
自らNFTを組成して第三者に譲渡 所得の性質に応じて判定(雑所得・事業所得など)

NFTは取引の実態によって区分が変わり、譲渡所得なら特別控除(年間50万円)や長期・短期の区分といった論点も関わります。判断が難しい領域なので、詳細は国税庁 No.1525-2を確認し、必要に応じて専門家に相談してください。NFT取引にまつわる詐欺・トラブルの手口はNFT詐欺の典型的な手口と見分け方で別途解説しています。

記録の保存と計算書の活用

正しい損益計算には、取引の記録が欠かせません。暗号資産交換業者から交付される「年間取引報告書」を基に、国税庁が配布する「暗号資産の計算書」(総平均法用・移動平均法用、Excel形式)を使うと損益を集計できます。年間取引報告書を活用する場合は総平均法用の計算書が案内されています。計算書は国税庁の暗号資産関連ページから入手できます。取引履歴・送付書類・ウォレットの記録は日頃から保存しておきましょう。ウォレットの安全な管理については仮想通貨ウォレットのセキュリティ基礎と管理の注意点もあわせて参考にしてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 暗号資産を買って持っているだけで税金はかかりますか。

A. 個人の場合、保有しているだけの含み益には所得税は課されません。売却・決済・交換・マイニング等での取得など、利益が確定・実現した時点で課税対象になります。

Q2. 暗号資産で別の暗号資産に交換しただけでも課税されますか。

A. 国税庁FAQでは、暗号資産同士の交換も課税対象として扱われます。交換時点で保有していた暗号資産を手放したものとして損益を計算します。日本円に換えていなくても対象になる点に注意してください。

Q3. 利益が20万円以下なら何もしなくてよいですか。

A. 給与所得者で一定の要件を満たす場合、給与・退職所得以外の所得が20万円以下なら所得税の確定申告は不要とされますが、これは所得税の基準です。住民税の申告は別途必要になるのが原則です。ご自身が要件に当てはまるかは国税庁 No.1900と自治体の案内で確認してください。

Q4. 損失が出たら翌年に繰り越せますか。

A. 暗号資産の雑所得の損失は、原則として他の所得との損益通算も、翌年以降への繰越しもできません。株式の譲渡損失やFX(先物取引に係る雑所得等)とは扱いが異なります。

Q5. どの計算方法を選べばよいですか。

A. 個人は総平均法と移動平均法から選べますが、届け出をしない場合は総平均法が法定評価方法として適用されます。年間取引報告書を使う場合は総平均法用の計算書が案内されています。どちらが有利かは取引状況によるため、継続適用が原則である点も踏まえて検討してください。

免責事項

本記事は暗号資産・NFTの税金に関する一般的な情報提供を目的としており、令和7年(2025年)12月時点で国税庁が公表している取扱いを基準にまとめたものです。税制は毎年改正される可能性があり、個々の取引の課税関係は取引実態によって異なります。本記事は特定の節税手法や取引を推奨・勧誘するものではなく、脱税等の不適切な申告を助長する意図もありません。実際の申告・納税にあたっては、必ず国税庁の最新の一次資料を確認し、個別の判断については所轄の税務署または税理士にご相談ください。