暗号資産(仮想通貨)を保有したまま亡くなる方が増えるにつれ、「家族がビットコインを持っていたようだが、どう手続きすればよいのか」という相続の場面での悩みが現実的な問題になっています。暗号資産は相続財産に含まれ、相続税の課税対象になり得ます。この記事では、暗号資産の相続手続きの一般的な流れと、注意点を整理します。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務・法務判断には対応しません。
暗号資産も相続財産に含まれる
暗号資産は財産的価値を持つため、現金や株式と同様に相続の対象となり、遺産分割や相続税の計算に含める必要があります。相続税には基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)があり、課税の要否や計算の基本は国税庁のタックスアンサー「相続税がかかる場合」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4102.htm)で確認できます。暗号資産の評価や課税上の取り扱いの詳細は、国税庁の「暗号資産等に関する税務上の取扱い」のページ(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/kakuteishinkokukankei/kasoutuka/index.htm)にまとめられています。
相続手続きの一般的な流れ
- 保有状況の調査: 取引所からのメール、アプリ、確定申告書の控え、銀行口座の入出金履歴などから、利用していた取引所や保有銘柄を特定する
- 取引所への連絡: 各取引所の相続手続き窓口に死亡の事実を連絡し、必要書類の案内を受ける
- 必要書類の提出: 死亡の記載のある戸籍、相続人全員の戸籍、遺産分割協議書または遺言書など、取引所の定める書類を提出する
- 残高の承継: 取引所の手続きに従い、残高の払い戻しや相続人名義への移管を受ける
- 相続税の申告: 課税対象となる場合、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納付する
必要書類や手続きの方法は取引所ごとに異なります。連絡前に取引所の公式サイトで相続手続きの案内を確認するとスムーズです。故人が利用していた取引所が判明した場合は、金融庁の登録業者一覧と照合し、正規の窓口かどうかを確認しておくと安心です。確認手順は暗号資産交換業者の登録確認方法と無登録業者の見分け方(金融庁一覧)で解説しています。
自己管理ウォレットの場合の注意点
取引所を経由せず、故人が自分で管理するウォレット(ハードウェアウォレット等)で保有していた場合、秘密鍵やリカバリーフレーズが分からなければ、相続人であっても資産を動かすことができません。取引所のような発行者側の救済手続きが存在しないためです。遺品の中にリカバリーフレーズの控え(紙のメモ、金属プレート等)がないかを慎重に確認する必要があります。ウォレットと秘密鍵の基本的な仕組みは仮想通貨ウォレットのセキュリティ基礎で解説しています。
相続時に注意したいポイント
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 評価のタイミング | 相続税の計算では、原則として相続開始時点の価額で評価される |
| 価格変動 | 手続き中も価格が変動するため、申告時の評価と売却時の価額が異なり得る |
| 売却時の所得税 | 相続した暗号資産を後日売却して利益が出た場合、別途所得税の申告が必要になり得る |
| 把握漏れ | 複数の取引所や海外サービスの利用が判明せず、申告漏れになるリスクがある |
相続した暗号資産を売却した場合の課税の考え方は、仮想通貨の税金と確定申告の基礎知識もあわせて参考にしてください。
なお、死亡後の「相続」ではなく、生前に家族へ暗号資産を移す「贈与」という選択肢もあります。贈与には相続税とは別の贈与税が課され、基礎控除110万円や評価のタイミングなど独自の注意点があります。生前贈与を検討する場合の基礎知識は暗号資産の贈与を受けた場合の税金と注意点|基礎控除と評価のタイミングで解説しています。
生前にできる備え
- 利用している取引所名と口座の一覧を、家族が分かる形で残しておく
- 自己管理ウォレットの有無と、リカバリーフレーズの保管場所の伝え方を決めておく(フレーズ自体を安易に共有しない方法を検討する)
- 遺言書やエンディングノートに暗号資産の存在を記載しておく
暗号資産は通帳のような紙の記録が残りにくく、存在自体が家族に伝わらないまま失われるおそれがあります。保有していることを伝える仕組みを作っておくことが、最も基本的な備えになります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 故人がどの取引所を使っていたか全く分かりません。
A. メールの受信履歴、スマートフォンのアプリ、銀行口座の入出金明細(取引所名義の振込)などが手がかりになります。調査が難しい場合は、相続に詳しい税理士や弁護士への相談も選択肢です。
Q2. 暗号資産の相続税評価はどの価格で行いますか。
A. 原則として相続開始時点の価額で評価するとされています。具体的な評価方法は国税庁の資料を確認のうえ、税理士にご相談ください。
Q3. 秘密鍵が見つからない暗号資産にも相続税はかかりますか。
A. 個別の事情により判断が分かれ得る論点です。自己判断せず、税務署または税理士に相談してください。
Q4. 相続放棄をすれば暗号資産の借金(証拠金取引の損失等)も引き継ぎませんか。
A. 相続放棄は資産と負債の両方を放棄する手続きで、家庭裁判所への申述には原則3か月の期限があります。判断に迷う場合は早めに弁護士等へ相談してください。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務・法務判断や手続きの結果を保証するものではなく、投資助言に該当するものではありません。正確な取り扱いについては、国税庁(https://www.nta.go.jp/)、税理士、弁護士等の専門家にご相談ください。




