暗号資産の相続税評価の方法|取引価格と残高証明書で決める手順

この記事の結論

  • 暗号資産を相続・遺贈・贈与で取得すると相続税または贈与税の課税対象になる(国税庁FAQ 4-1)。
  • 活発な市場が存在する暗号資産は、納税義務者が取引している暗号資産交換業者が公表する課税時期の取引価格で評価する(同4-2)。
  • 活発な市場が存在しない場合は、内容・性質・取引実態等を勘案して個別に評価する。売買実例価額や精通者意見価格を参酌する方法が例示されている。

本記事は国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」令和7年12月最終改訂版(令和7年12月1日現在の法令・通達等)にもとづく2026年9月時点の整理です。

結論:評価は「活発な市場があるか」で分岐する

暗号資産の評価方法は財産評価基本通達に定めがないため、同通達5(評価方法の定めのない財産の評価)にもとづき、通達に定める評価方法に準じて評価します。活発な市場が存在する暗号資産は客観的な交換価値が明らかなので、外国通貨に準じて、納税義務者が取引を行っている暗号資産交換業者が公表する課税時期の取引価格で評価します。

評価方法の一覧

区分評価の基礎根拠・補足
活発な市場が存在する暗号資産納税義務者が取引している暗号資産交換業者が公表する課税時期の取引価格外国通貨に準じた取扱い(FAQ 4-2)
活発な市場が存在しない暗号資産内容・性質・取引実態等を勘案して個別に評価売買実例価額、精通者意見価格等を参酌する方法が例示(FAQ 4-2 注5)
NFT内容・性質・取引実態等を勘案して個別に評価評価通達135(書画骨とう品の評価)に準じる。市場取引価格があればその価格で差し支えない(NFT FAQ 問9)

「活発な市場が存在する」とは何を指すか

FAQ 4-2 の注1は、暗号資産取引所または暗号資産販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われており、継続的に価格情報が提供されている場合と定義しています。取引が細く価格情報が途切れる銘柄は、この定義に当てはまりません。

残高証明書に記載された取引価格も使える

注2は、「暗号資産交換業者が公表する課税時期における取引価格」には、暗号資産交換業者が納税義務者の求めに応じて提供する残高証明書に記載された取引価格を含むと明記しています。相続開始後にまず残高証明書を取り寄せるのが実務上の出発点になります。

販売所の売却価格でも差し支えない

注3は、販売所で購入価格と売却価格がそれぞれ公表されている場合、納税義務者が売却する側の価格(売却価格)で評価して差し支えないとしています。スプレッドがある販売所では、この点が評価額に影響します。

複数の交換業者で取引している場合

注4は、複数の暗号資産交換業者で取引を行っている場合、納税義務者が選択した交換業者が公表する課税時期の取引価格で評価して差し支えないとしています。どの業者の価格を採ったかは、根拠資料とあわせて残しておくのが安全です。

贈った側にも所得税の論点がある

FAQ 4-1 の注記は、個人が贈与(相続人に対する死因贈与を除く)または遺贈(包括遺贈および相続人に対する特定遺贈を除く)により暗号資産を移転させた場合、所得税の計算上、その贈与または遺贈の時における暗号資産の価額(時価)を総収入金額に算入する必要があると述べています。受け取る側の相続税・贈与税だけを見ていると見落としやすい論点です。

実務で先に確認したいこと

  • どの交換業者・どのウォレットに、どの銘柄が何単位あるか
  • 各交換業者から残高証明書を取得できるか、記載される価格は購入価格か売却価格か
  • 活発な市場が存在しない銘柄やNFTが含まれていないか
  • 財産債務調書・国外財産調書の記載要否(FAQ 7-1〜7-3)に該当しないか

評価額そのものより、根拠となる価格をどこから取ったかを説明できる状態にしておくことが重要です。個別の判断は税理士や所轄税務署にご確認ください。

よくある質問(FAQ)

暗号資産にも相続税はかかりますか?

かかります。相続税法上、金銭に見積もることができる経済的価値のある財産を相続・遺贈・贈与により取得した場合は課税対象で、暗号資産は資金決済法上「財産的価値」と規定されているためです(国税庁FAQ 4-1)。

評価に使う価格はどこの取引所のものですか?

納税義務者が取引を行っている暗号資産交換業者が公表する課税時期の取引価格です。複数の業者で取引している場合は、納税義務者が選択した業者の価格で評価して差し支えないとされています。

残高証明書の価格を使ってもよいですか?

使えます。FAQ 4-2 の注2は、暗号資産交換業者が納税義務者の求めに応じて提供する残高証明書に記載された取引価格を、公表する取引価格に含むと明記しています。

出典(一次情報)

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言・税務助言ではありません。個別の判断は専門家や公的機関の一次情報をご確認ください。