この記事の結論
- 暗号資産Aを暗号資産Bと交換した場合は、AでBを購入したことになり、Aの譲渡に係る所得金額を計算する必要がある(国税庁FAQ 1-3)。
- 譲渡原価は総平均法または移動平均法のうち選択した方法で計算し、選択しない場合は個人が総平均法、法人が移動平均法になる(同1-3 注1)。
- 収入すべき時期は原則として引渡しがあった日の属する年分。選択により契約をした日の属する年分とすることもできる(同2-1)。
本記事は国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」令和7年12月最終改訂版(令和7年12月1日現在の法令・通達等)にもとづく2026年9月時点の整理です。
結論:円に換えていなくてもスワップで損益が確定する
DeFiで最も誤解が多いのが「日本円にしていないから課税されない」という理解です。国税庁FAQ 1-3 は、保有する暗号資産Aを他の暗号資産Bと交換した場合、暗号資産Aで暗号資産Bを購入したことになるため、暗号資産Aの譲渡に係る所得金額を計算する必要があると明記しています。DEXでのスワップも、この考え方が出発点になります。
FAQに示された計算の型
FAQ 1-3 の設例は次のとおりです(売買手数料は勘案していない、一時的に必要な暗号資産を取得した場合には該当しないケース)。
- 4月2日 4,000,000円で4BTCを購入
- 11月2日 40XRPを購入する際の決済に1BTCを支払った。取引時のレートは1XRP=30,000円
このとき所得金額は「(30,000円×40XRP)−(4,000,000円÷4BTC)×1BTC=200,000円」と計算されます。左側がリップルの購入価額(=ビットコインの譲渡価額)、右側が譲渡原価です。
論点ごとの取扱い
| 論点 | 取扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 暗号資産同士の交換(スワップ) | 交換した側の暗号資産の譲渡として所得金額を計算 | FAQ 1-3 |
| 譲渡原価の計算方法 | 総平均法または移動平均法から選択。無選択なら個人は総平均法、法人は移動平均法 | FAQ 1-3 注1、2-4、2-5 |
| 収入すべき時期 | 原則は引渡しがあった日の属する年分。選択により契約をした日の属する年分も可 | FAQ 2-1 |
| 個人の所得区分 | 原則は雑所得(その他雑所得)。収入金額300万円超は帳簿書類の保存の有無で事業所得/業務に係る雑所得 | FAQ 2-2 |
| 法人がDEXで取引される暗号資産を保有 | 活発な市場が存在する暗号資産に該当すれば期末時価評価の対象 | FAQ 3-1-5 |
DEXも「市場」に含まれうる
FAQ 3-1-5 は、自動マーケットメイカーによって現時点の交換比率が明らかにされ、その比率にもとづき随時交換の取引が行われているDEXについて、随時、売買・換金等を行うことができる取引システム等は市場の範囲に含まれると考えられるとして、市場に含まれるとの整理を示しています。そのうえで、公表される交換比率が他の取引所と著しく異なる特殊な事情がなく、継続的に交換取引が成立しているのであれば、所定の要件を満たす限り活発な市場が存在する暗号資産になるとしています。
活発な市場が存在する暗号資産の3要件
- 継続的に売買価格等(売買の価格または他の暗号資産との交換の比率)が公表され、その公表価格が売買価格・交換比率の決定に重要な影響を与えていること
- 継続的に上記の公表がされるために十分な数量および頻度で取引が行われていること
- 売買価格等の公表がその法人以外の者によりされていること、または取引が主としてその法人により自己の計算において行われた取引でないこと
流動性提供で気をつけること
流動性提供やイールドファーミングは、実装によってスワップ・預入れ・報酬の受取りといった複数の行為が組み合わさります。国税庁FAQには「流動性提供」という項目そのものはないため、個々の行為を、交換にあたるのか、取得にあたるのかへ分解して当てはめるのが基本になります。報酬として暗号資産を取得した場合は、FAQ 1-7 のとおり取得時点の時価が総収入金額に算入されます。判断に迷う構成は、税理士や所轄税務署に事実関係を示して確認してください。
記録として残すべきもの
- 各スワップの日時・ペア・数量・そのときのレート
- 取引ハッシュとチェーン、使用したプロトコル名
- ガス代など必要経費に該当しうる支出
- 選択した評価方法(総平均法か移動平均法か)と届出の有無
DEXは年間取引報告書が交付されないため、記録を自分で残せているかが計算精度をそのまま決めます。本記事は一般的な情報提供であり、税務助言ではありません。
よくある質問(FAQ)
暗号資産同士のスワップでも課税されますか?
されます。国税庁FAQ 1-3 は、暗号資産Aを暗号資産Bと交換した場合はAでBを購入したことになり、Aの譲渡に係る所得金額を計算する必要があるとしています。
譲渡原価はどう計算しますか?
総平均法または移動平均法のうち選択した方法です。選択しない場合は、個人は総平均法、法人は移動平均法によって計算します。
DEXで取引される銘柄も期末時価評価の対象ですか?
法人の場合、活発な市場が存在する暗号資産に該当し、特定自己発行暗号資産や特定譲渡制限付暗号資産に該当しなければ、FAQ 3-1-5 のとおり対象になります。
出典(一次情報)
- 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」(令和7年12月)PDF
- 国税庁 暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について
- 国税庁 タックスアンサー No.1524 ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係
- 国税庁 確定申告特集
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言・税務助言ではありません。個別の判断は専門家や公的機関の一次情報をご確認ください。




