NFTの1日平均販売数はどう推移したか|2022年の急減と指標の読み方

2022年5月、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、データサイトNonFungibleの集計をもとにNFTの1日平均販売数が約1万9,000件まで落ち込み、2021年9月のピーク(約22万5,000件)から92%減ったと報じました。旧版の記事はこの数字を紹介し、7月に入って販売数が持ち直していると伝えていました。

ところが、同じ2022年について、別のデータ会社は年間の取引件数が2021年を大きく上回ったと集計しています。この記事では、2022年に何が報じられたのかを確かめ直したうえで、なぜ数字が食い違うのか、そして2026年までにNFT市場の数字がどう動いたのかを整理します。

何が起きたか:2022年5月の「92%減」報道

WSJが2022年5月3日に報じた記事は、NFTの販売が「横ばいに沈んでいる(flatlining)」として注目を集めました。NonFungibleのデータによると、1日平均の販売数は2021年9月の約22万5,000件から約1万9,000件へと92%減り、NFT市場で活動しているウォレットの数も、2021年11月の約11万9,000から約1万4,000へと88%減ったとされています。

2022年5月は、暗号資産の相場が崩れた時期と重なります。同月にはアルゴリズム型ステーブルコインのTerra(UST)が価値の連動を失って崩壊し、暗号資産全体の価格が大きく下がりました。NFTの多くはイーサリアム(ETH)で取引されるため、ドル換算の売上は暗号資産の相場とあわせて縮みやすい性質があります。

この報道は「NFTブームは終わった」という見方を広める一方で、業界からは数字の取り方に疑問を示す声も上がりました。

旧版の記事からの訂正と補足

旧版の記事は「2021年11月以降、1日平均売上高は大きく減少した」と書いていましたが、報道で示されたピークは販売数が2021年9月、アクティブなウォレット数が2021年11月です。また「売上高」と「販売数」が混在していましたが、92%減は金額ではなく件数の話です。

旧版は、7月初めの1週間の1日平均販売数が4,410件、前週が4,134件だったとして「持ち直し」を伝えていました。しかし、この週次の数字がどのデータ提供元のものかは確認できませんでした。5月の約1万9,000件と比べて桁が大きく違うことから、集計の範囲が異なる数字だった可能性があります。

さらに旧版にあった「Meebitsの売上25億ドル」という記述も、該当する数字を確認できませんでした。Meebitsの売上がこの規模に達したという報道は見当たらず、誤記と考えられます。

なぜ数字が食い違ったのか

WSJの報道のすぐ後、Cointelegraphは、ブロックチェーンのデータを集計するDune Analyticsの数字では利用者数も取引件数もかなり多かったと伝えました。DappRadarのデータでは、同じ時期の1週間にOpenSeaの契約(スマートコントラクト)を使ったウォレットは約15万あり、NonFungibleの数字の約10倍だったとされています。

食い違いの一因として挙げられたのが、ゲーム「Axie Infinity」の扱いです。遊んで稼ぐ型のこのゲームは、2021年に大量のNFT取引を生みましたが、2022年には取引が激減しました。こうしたゲームの取引をどこまで含めるかで、ピークからの落ち込み方は大きく変わります。

ほかにも、どのブロックチェーンやマーケットプレイスを集計に含めるか、報酬目当てに同じ人が売買を繰り返す「ウォッシュトレード」を除くかどうかで、数字は大きく変わります。NFTの市場規模を示す数字は、どのデータ会社がどんな条件で集計したのかとセットで読む必要があります。

2022年を通して見ると:件数は増え、金額は減った

DappRadarが2023年1月にDecryptに示した集計では、2022年のNFTの取引件数は約1億100万件で、2021年の約5,860万件を大きく上回りました。ウォッシュトレードと疑われる取引を除いた取引高は、2022年が247億ドル、2021年が251億ドルでほぼ同じ水準です。

ただし、四半期ごとに見ると、2022年の取引高は1〜3月に最も多く、その後は大きく落ち込みました。4月にはYuga Labsの仮想空間「Otherside」の土地NFTの発売で一時的に取引が増えましたが、5月のTerraの崩壊、11月の大手取引所FTXの破綻を経て、市場は冷え込みました。

つまり、2022年は「件数は多いが、1件あたりの金額が下がった年」でした。1日平均の販売数だけを見ると急減に見え、年間の件数だけを見ると成長に見えるという、指標の選び方で印象が逆になる典型的な例です。

その後どうなったか:2023年から2025年の推移

The Blockが伝えたDappRadarの集計によると、NFTの取引高は2023年が約168億ドル、2024年が約137億ドルで、2024年の取引件数は約4,980万件と前年から18%減りました。2024年はイーサリアムなどの価格上昇でNFT1件あたりの金額は上がったものの、全体の取引は縮みました。

2025年は、件数と金額の動きがさらに分かれました。DappRadarの報告では、2025年7〜9月の販売件数は約1,810万件で、1〜3月の約700万件、4〜6月の約1,250万件から大きく増えた一方、取引高は約16億ドルにとどまりました。データ会社CryptoSlamの集計では、2025年のNFTの売上は約56億3,000万ドルで、2024年の約89億ドルから37%減り、1件あたりの平均販売価格も124ドルから96ドルに下がりました。

2026年については、集計元によって示される数字の差が大きく、年間を通した信頼できる数字は執筆時点で確認できませんでした。安い価格帯のNFTの売買が増え、件数は多いが金額は伸びないという傾向が続いていると見られます。

NFT市場を見るときに確かめたい指標

NFT市場の動きを数字で追うときは、次の指標を分けて見ることが大切です。

指標 わかること 注意点
取引高(ドル建て) 市場に流れたお金の量 暗号資産の価格の上下に大きく左右される
販売件数 売買の活発さ 低価格のNFTや自動取引が多いと膨らむ
アクティブなウォレット数 参加者の広がり 1人が複数のウォレットを使う場合がある
平均販売価格 1件あたりの価格帯 一部の高額取引で大きく動く
フロア価格 そのコレクションの最低出品価格 出品数が少ないと実態を表しにくい

取引量とフロア価格が逆の動きをした事例は、NFTの取引量が増えてもフロア価格が下がった事例の記事でも取り上げています。

どの指標にも、ウォッシュトレードを除いているか、どのチェーンとマーケットプレイスを含めているかという前提があります。複数のデータ会社の数字を比べるときは、この前提が同じかどうかを先に確かめてください。

日本の読者が知っておきたいこと

SNSやニュースでは「NFTの取引が急増」「市場が崩壊」といった見出しがよく使われますが、その多くは特定の指標の一部分を切り取ったものです。旧版の記事のように、1週間の小さな変化から市場全体の回復を読み取るのは難しく、期間の選び方ひとつで結論が変わってしまいます。

OpenSeaのような海外の売買サイトを日本から利用する場合も、市場全体の数字と、自分が関心を持つコレクションの数字は分けて考えることが大切です。市場全体の件数が増えていても、個別のコレクションの売買が細っていれば、売りたいときに買い手が見つからないこともあります。

市場の数字は、NFTを買うか売るかの判断を直接示すものではありません。2023年に売上が持ち直した時期の動きは2023年のNFT売上の回復を伝えた記事で紹介しています。

よくある質問

Q. 2022年5月にNFTの販売数はどれくらい減ったのですか?

A. WSJが伝えたNonFungibleのデータでは、1日平均の販売数が2021年9月の約22万5,000件から約1万9,000件へ、92%減りました。ただし、集計の範囲が異なる他社のデータでは、ここまで大きな落ち込みは示されていません。

Q. 2022年のNFT取引は2021年より少なかったのですか?

A. DappRadarの集計では、2022年の取引件数は約1億100万件で2021年の約5,860万件を上回り、ウォッシュトレードを除いた取引高もほぼ同じ水準でした。件数は増え、1件あたりの金額が下がった年だったと言えます。

Q. 2025年のNFT市場はどうでしたか?

A. CryptoSlamの集計では2025年の売上は約56億3,000万ドルで、前年から37%減りました。一方でDappRadarは7〜9月の販売件数が前の四半期から45%増えたと報告しており、安い価格帯の売買が増えていました。

Q. データ会社によって数字が違うのはなぜですか?

A. 集計に含めるブロックチェーンやマーケットプレイス、ゲームの取引の扱い、ウォッシュトレードの除外の有無などが会社ごとに異なるためです。比べるときは同じ条件の数字かどうかを確かめてください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。