NFTアワード2022(ニューヨーク)の受賞作と4年後の現在地

2022年6月21日、米ニューヨークで開かれたNFTのカンファレンス「NFT.NYC 2022」の中で、第2回「NFTアワード」の授賞式が行われました。ビジュアルアート、ゲーム、ファッションなど30を超える部門があり、Bored Ape Yacht Club(BAYC)が4部門を獲得したほか、村上隆氏やBeeple(ビープル)氏らが選ばれています。

旧版の記事はこの結果を紹介していましたが、日付や金額にいくつか誤りがありました。この記事では受賞の内容を報道で確かめ直し、受賞したプロジェクトや作家がその後どうなったのか、そしてNFTの「賞」をどう受け止めればよいのかをまとめます。

何が起きたか:NFT.NYC 2022の中で開かれた授賞式

NFT.NYCは2019年に始まったNFTの大型カンファレンスで、ニューヨークのタイムズスクエア周辺を会場にしています。2022年は6月20日から23日までの4日間、マリオット・マーキースやラジオシティ・ミュージックホールなど複数の会場で開かれました。NFTアワードは会期2日目の6月21日に行われ、今回が2回目です。

英The Art Newspaperによると、2022年の参加者は1万5,000人を超え、5,000人余りだった2021年の約3倍に増えました。主催者は自社サイトで2022年の参加者を1万8,000人超としています。

開催時期は、暗号資産の相場が大きく下がり、NFTの詐欺や盗難の被害が相次いでいた時期と重なります。それでもカンファレンスには多くの人が集まり、業界の勢いがまだ残っていたことがうかがえます。

主な受賞者と部門

報道やOpenSeaの記事で確認できた主な受賞は次のとおりです。

部門 受賞
売上高トップのコレクション Bored Ape Yacht Club
取引件数トップのコレクション Zed Run
取引高トップのアートコレクション My Curio Cards
伝統的なアーティストからNFTに転じた最優秀作家 村上隆
最優秀の実績あるNFTアーティスト Beeple
最優秀NFTアーティスト XCOPY
取引高トップのゲームコレクション Parallel Alpha
最大の単独ドロップ Otherdeed for Otherside
保有者数が最も多いコレクション ENS
社会貢献のためのトップコレクション RELI3F UKR

BAYCはこのほか、取引高トップのコレクティブル、最も革新的なNFTプロジェクト、最優秀NFTビジネスモデルでも選ばれ、合計4部門を獲得しました。村上隆氏の「Murakami.Flowers Seed」は、アジア発で取引高が最も大きいコレクションにも選ばれています。

部門には、売上高や取引件数といった数字で決まるものと、候補の中から選ばれるものが混在していました。どの部門がどちらに当たるのかを意識して結果を見ると、当時の市場の姿がわかりやすくなります。

旧版の記事からの訂正

旧版の記事は授賞式の日付を6月20日としていましたが、20日はカンファレンスの初日で、授賞式は21日です。また、BAYCの累計売上高を「20億円」と書いていましたが、報道では20億ドルです。2021年4月の発売から約1年で到達した数字でした。

参加者についても「2020年より5,000人多い15,000人以上」と書いていましたが、比較の対象は2021年で、5,000人余りから1万5,000人超へと約3倍になったというのが正しい内容です。BAYCの説明にあった「Aloof Cartoon Ape」という表現は英文記事の形容を訳しきれなかったもので、BAYCは退屈そうな表情のサルを描いたアバター型のコレクションを指します。

Beeple氏の作品の落札額については、2021年3月11日にクリスティーズで手数料込み約6,930万ドルで落札されたという点は正しいものの、「約93億円」は2022年の為替で換算した値です。落札当時のレートでは約75億円でした。

受賞した作家とプロジェクトの横顔

BAYCは米Yuga Labsが2021年4月に発行した1万点のコレクションです。保有者だけが参加できるイベントや、画像の商用利用を保有者に認める方針が話題を呼び、著名人の保有も注目を集めました。BAYCがなぜ伸びたのかはBAYCの躍進を分析した記事で詳しく扱っています。

Beepleことマイク・ウィンケルマン氏は、2007年から毎日1点ずつ作品を作り続けてきた米国のデジタルアーティストです。その5,000日分をまとめた「Everydays: The First 5000 Days」は、存命の作家の作品としてはジェフ・クーンズ氏、デイヴィッド・ホックニー氏に次ぐ史上3番目の高値で落札されました。

村上隆氏は、日本のアニメや漫画の表現を取り入れた「スーパーフラット」で知られる現代美術家です。2022年春には、NFTコレクション「Murakami.Flowers」の遅れや価格の低迷について繰り返し謝罪していましたが、受賞はNFTへの取り組みそのものが評価された形でした。XCOPYは、死やディストピアを題材にした点滅するループ映像で知られる英国の作家です。

その後どうなったか:2026年時点の受賞者

BAYCは、その後の市場の冷え込みの影響を大きく受けました。Decryptによると、2025年3月の時点で最低取引価格(フロア価格)は約13.9ETHで、最高値だった153.7ETHから約9割下がっていました。同じ月には、2022年から続いていた米証券取引委員会(SEC)のYuga Labsへの調査が、処分なしで終わっています。

取引件数の部門で選ばれたZed Runは、NFTの競走馬を育ててレースに出すゲームでしたが、運営のVirtually Humanが2025年2月28日にサービスを終え、新作「Zed Champions」をBaseに移して始めました。旧作の馬のNFTは新作に引き継がれませんでした。村上隆氏がアバターの制作に関わったRTFKTも、親会社のナイキが2024年12月に事業の終了を発表しています。

NFT.NYC自体は続いており、主催者のサイトでは、2026年の会期を9月1日から3日まで、会場をタイムズスクエアのホテル・エジソンと案内しています。ただ、2022年のような熱気や規模が戻ったとは言いにくく、受賞者の多くも当時とは違う立場に置かれています。

NFTの「賞」をどう読むか

2022年のNFTアワードでは、売上高や取引件数で決まる部門が目立ちました。こうした部門は、その時点でどれだけ売買が活発だったかを表すもので、作品の質や将来の価値を示すものではありません。相場が過熱していた時期の数字は、後から見ると一時的な盛り上がりだったことも少なくありません。

一方、候補から選ばれる部門は、作家やプロジェクトがコミュニティの中でどう評価されていたかを知る手がかりになります。XCOPYのように、市場が冷えた後も作品の評価が語られ続ける作家もいます。

受賞歴を見るときは、選考の方法、主催者と候補の関係、数字の集計期間を確かめることが大切です。賞の多くは主催者の事業の一部として運営されており、受賞がそのまま価値の保証になるわけではありません。

日本の読者が知っておきたいこと

村上隆氏の受賞は、日本の作家が海外のNFT市場で評価された例として注目されました。一方で、BAYCやZed Runの例が示すように、有名な賞を取ったプロジェクトでも、その後に価格が大きく下がったり、サービスが終わったりすることがあります。

日本からOpenSeaなど海外のマーケットプレイスでNFTを買うことはできますが、運営会社の方針変更やサービス終了の影響は保有者が引き受けることになります。購入を考えるときは、受賞歴や著名人の保有だけで判断せず、運営の体制、発行元の資金状況、NFTを持つことで何ができるのかを確かめてください。

BAYCをめぐる規制当局の動きは、SECによるYuga Labsの調査を伝えた記事でも取り上げています。Beeple氏のその後の活動の一端は没入型3D NFTの記事で紹介しています。

よくある質問

Q. NFTアワード2022はいつ、どこで開かれましたか?

A. 2022年6月21日、ニューヨークで開かれたカンファレンス「NFT.NYC 2022」(6月20日〜23日)の中で行われました。第2回の開催で、30を超える部門がありました。

Q. BAYCはどの部門で受賞しましたか?

A. 売上高トップのコレクション、取引高トップのコレクティブル、最も革新的なNFTプロジェクト、最優秀NFTビジネスモデルの4部門です。

Q. 村上隆氏はどの賞を受けましたか?

A. 伝統的なアーティストからNFTに転じた最優秀作家の部門で選ばれました。コレクション「Murakami.Flowers Seed」も、アジア発で取引高が最も大きいコレクションに選ばれています。

Q. 受賞したNFTは今も価値がありますか?

A. 一概には言えません。BAYCのフロア価格は2025年3月時点で最高値から約9割下がり、Zed Runは2025年2月にサービスを終えました。受賞歴は購入の判断材料の一つにとどめ、運営状況を確かめることが大切です。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。