FacebookのNFT表示テスト(2022年)|EthereumとPolygon対応のその後

2022年6月29日、Metaのプロダクトマネージャーがツイッターで、Facebookのプロフィールに「デジタルコレクティブル」(NFT)を表示する機能のテストを始めたと明かしました。対象は米国の一部クリエイターに限られ、対応するブロックチェーンはEthereumとPolygonの2つでした。旧版の記事はこの出来事を翌週に紹介し、「近々全ユーザーに拡大すると見られている」と結んでいました。

その後、機能は確かに広がりましたが、2023年3月には提供が打ち切られています。この記事では、2022年のテストが何を可能にしたのか、旧版の記事で不正確だった点、打ち切りまでの流れ、そして2026年にMetaが暗号資産とどう関わっているのかを、公式発表と主要報道をもとにまとめます。

2022年6月末に何が発表されたか

Metaの広報とプロダクトマネージャーのNavdeep Singh氏によると、テストに参加したクリエイターは、Facebookのプロフィールに新しく設けられたタブでNFTを並べて見せられるようになりました。NFTには「デジタルコレクティブル」というラベルが付き、クリックするとコレクション名や作者の情報が表示される仕組みです。TechCrunchは2022年6月30日にこの内容を報じています。

対応チェーンは当初EthereumとPolygonで、SolanaとFlowへの対応も準備中と説明されました。NFTを通常の投稿として流すこともでき、ほかのユーザーはいつもの投稿と同じように「いいね」やコメント、シェアができます。ただし、この時点では米国の限られたクリエイターだけの試験で、一般ユーザーが自由に使える段階ではありませんでした。

マーク・ザッカーバーグCEOは2022年3月の時点でInstagramにNFTを導入する考えを示しており、Instagramでは同年5月にすでに同様のテストが始まっており、Facebookはその後を追う形になります。つまり、2022年7月の記事が伝えたのは、Meta全体でNFTを扱う取り組みの一部だったといえます。

機能の中身:売買ではなく「見せる」ための仕組み

この機能で押さえておきたいのは、Facebook自体がNFTを保管したり売買を仲介したりするものではなかった点です。ユーザーは外部の暗号資産ウォレットをプロフィールに接続し、自分のアドレスにあるNFTを選んで表示します。NFT本体はブロックチェーン上にあり、Facebookはその記録を読み取って画像や情報を見せているにすぎません。

2022年8月末の時点で接続できたウォレットは、Rainbow、MetaMask、Trust Wallet、Coinbase Wallet、Dapperの5つでした。チェーンはEthereum、Polygon、Flowに広がっています。一度ウォレットをつなげば、FacebookとInstagramの両方に同じコレクションを投稿できるようにもなりました。

Instagramの公式発表には、デジタルコレクティブルの投稿や共有に手数料はかからないと明記されています。一方で、コレクティブルの投稿を広告に変えることはできないとされていました。収益化の道具というより、SNS上での見せ方を増やす機能だったと理解すると、その後の打ち切りの判断も読みやすくなります。

旧版記事の訂正:InstagramとMeta Avatars Store

旧版の記事には、事実と異なる、あるいは誤解を招く記述がいくつかありました。まず「近々全ユーザーに拡大すると見られている」という部分は、Metaが示した方針ではなく推測でした。実際に米国の全ユーザーが使えるようになったのは2022年9月で、日本を含む世界の全ユーザーへの一斉展開は最後まで行われていません。

次に「インスタグラムはアバターストアというショップと提携する」という記述です。正しくは、Metaが自社で「Meta Avatars Store」を立ち上げたもので、外部のショップとの提携ではありません。2022年6月20日の公式発表によると、Instagram、Facebook、Messengerでアバター用の服を買える仕組みで、Balenciaga、Prada、Thom Browneのデジタル衣装が並びました。

このアバター用の服は法定通貨で買うデジタル商品で、NFTではありません。報道では1着2.99〜8.99ドルで、米国・カナダ・タイ・メキシコから始まったと伝えられています。旧版の記事はNFT機能とアバター販売を一続きに書いていましたが、両者は別の取り組みとして読むのが正確です。

その後の広がりと2023年3月の打ち切り

テスト開始後、Metaは段階的に対象を広げました。2022年8月にはInstagramのデジタルコレクティブルがアフリカ、アジア太平洋、中東、南北アメリカの約100か国に広がり、9月には米国の全ユーザーがFacebookとInstagramの両方で使えるようになります。11月には一部のクリエイターがPolygon上で自分のNFTを発行し、Instagramから直接販売できる機能の試験も始まりました。

ところが2023年3月13日、Metaでコマース・金融技術を率いるStephane Kasriel氏が、デジタルコレクティブルを「ひとまず縮小する」とツイッターで表明します。理由として挙げたのは、クリエイターや企業を別の方法で支えることに集中するためでした。Instagramの公式ページには、2023年3月31日で機能を終了したと追記されています。

背景には、Metaが「効率化の年」と位置づけたコスト削減と、NFT市場の熱が冷めたことがあったと報じられています。TechCrunchによると、Metaは今後、決済サービスのMeta Payや、投げ銭機能、リール動画の広告収益といった、クリエイターが直接稼げる仕組みに力を移すとしていました。テスト開始から打ち切りまで、1年もかからなかったことになります。

打ち切り後、表示していたNFTはどうなったか

Instagramの公式ページによると、終了前に共有したデジタルコレクティブルは通常の投稿として残りますが、ブロックチェーンに関する情報は表示されなくなりました。つまり、画像は見えても「どのチェーンの、どのコントラクトのNFTか」という裏付けは画面から消えた形です。

一方で、NFTそのものは各ユーザーのウォレットに残っています。Facebookは記録を読み取って表示していただけなので、機能が終わってもトークンが消えたり移動したりすることはありません。ウォレットの接続を解除しても、MetaMaskなどのアプリや対応マーケットプレイスでは引き続き確認できます。

この経緯から読み取れるのは、「どこに表示されているか」と「誰が持っているか」は別の話だということです。大手SNSが対応を発表すると価値が上がったように感じられがちですが、表示機能はサービス側の都合で止まることがあります。NFTを持つうえで大切なのは、ウォレットの鍵を自分で管理できているかどうかです。

2026年のMetaと暗号資産:USDCでのクリエイター支払い

NFTから手を引いたMetaですが、暗号資産との関わりが完全に途切れたわけではありません。CoinDeskなどによると、Metaは2026年4月29日までに、コロンビアとフィリピンの一部クリエイター向けに、米ドル連動のステーブルコインUSDCで報酬を受け取れる試験を始めました。使われるチェーンはSolanaとPolygonで、決済会社Stripeが仕組みを支えています。

Stripeはこの試験で、クリエイターの収益や暗号資産の取引に関する報告書類の作成を担うと説明されています。Metaは2022年に独自通貨の計画(Libra、のちのDiem)を断念しており、Fortuneは今回の動きを約4年ぶりの暗号資産決済への復帰として伝えました。2022年のNFT表示で使われたPolygonが、今度は支払いの基盤として登場している点は興味深いところです。

ただし、2026年9月時点で確認できた対象国はコロンビアとフィリピンで、日本のクリエイターが使えるという発表は確認できませんでした。ステーブルコインの基本や日本での位置づけは、ステーブルコインの種類と日本の規制をまとめた記事で整理しています。

読者が知っておきたいこと:SNSとウォレットをつなぐときの注意

SNSがNFTやウォレット連携に対応すると、それを装った詐欺も増えます。「Metaの公式サポート」を名乗るDMや、NFT機能の復活をうたう偽サイトに誘導され、ウォレットをつないで署名した結果、資産を抜き取られる被害は典型的なパターンです。公式の機能であれば、秘密鍵やシードフレーズの入力を求めることはありません。

ウォレットを外部サービスにつなぐときは、アドレスを見せるだけの「接続」と、資産の移動を許可する「承認」や「署名」を区別して確認しましょう。不要になった接続や承認は、ウォレットの設定や承認管理ツールで取り消しておくと安全です。NFT表示用に、資産の少ない別のアドレスを使い分ける方法もあります。

なお、日本の税務では、NFTや暗号資産を売ったり交換したりして利益が出たときに課税の対象になります。SNSに表示するだけでは取引は発生しませんが、SNS経由で販売した場合は記録を残しておくことが大切です。Instagramでの販売機能については、当時の動きを伝えたInstagramでのNFT直接販売に関する記事もあわせて参考にしてください。

よくある質問

Q. 今でもFacebookやInstagramにNFTを表示できますか?

A. できません。Metaはデジタルコレクティブル機能を2023年3月31日で終了しました。以前に共有した投稿は残っていますが、ブロックチェーンの情報は表示されなくなっています。

Q. 機能が終わったとき、持っていたNFTは消えましたか?

A. 消えていません。FacebookやInstagramはウォレット内のNFTを読み取って表示していただけなので、NFTは各自のウォレットに残っています。

Q. 2022年のテストは日本でも使えましたか?

A. Facebookのテストは米国の一部クリエイターが対象でした。Instagramは2022年8月に約100か国へ広がりましたが、対象国の一覧は今回確認できなかったため、日本が含まれていたかは断定できません。

Q. MetaのUSDC支払いは日本のクリエイターも受け取れますか?

A. 2026年4月時点で報じられた対象はコロンビアとフィリピンの一部クリエイターです。日本での提供は確認できませんでした。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。