2022年11月2日、Metaは、Instagramのクリエイターが自分のNFT(Metaの呼び方では「デジタルコレクティブル」)を作り、ファンに販売できる機能の試験を始めると発表しました。NFTの発行にはPolygonのブロックチェーンを使うとされ、発表の直後にはPolygonのトークンMATICの価格が大きく上がりました。
旧版の記事はこのニュースを「NFTがInstagramで直接販売可能に」と伝え、Web3が中間業者を減らしてクリエイターの利益になると結んでいました。しかし、この販売機能は米国の一部クリエイターによる試験の段階を出ないまま、約5か月後に打ち切られています。この記事では、2022年11月に発表された内容を正確に確かめたうえで、トークン価格が反応した理由、その後の終了、そしてPolygon側の変化までを順に整理します。
11月2日に発表された内容
Metaの公式ニュースルームに追記された2022年11月2日の更新によると、発表の中身は次のとおりでした。
- クリエイターがInstagram上で自分のデジタルコレクティブルを作り、Instagramの中でも外でもファンに販売できるようにする
- 作成から展示、販売までを一通りそろえた道具を提供し、作成にはまずPolygonのブロックチェーンを使う
- 表示できるNFTの対象にSolanaのチェーンを加え、Solana向けのウォレットPhantomにも対応する
- まず米国の少数のクリエイターで試し、その後に対象を広げる
旧版の記事には「11月02日(木)」とありましたが、2022年11月2日は水曜日です。また「100カ国のInstagramとFacebookのユーザーが両プラットフォームでNFTを共有できるようにした後、新機能を展開」という説明は、時期の異なる話が混ざっています。Metaが約100か国に広げたのは、2022年8月に拡大した「持っているNFTを見せる」表示機能のほうで、11月に発表された発行・販売の機能は米国の一部の作り手に限られていました。
なぜMATICの価格が上がったのか
発表を受けて、PolygonのネイティブトークンであるMATICは大きく値上がりしました。上昇率は報道によって数字の取り方が違い、24時間で十数%、水曜夜から木曜朝にかけて17%などと伝えられています。旧版の「12.8時間で24%」という記述は、裏付けを確認できませんでした。
値上がりの理由として多くの報道が挙げたのは、世界で数十億人が使うMetaのサービスがPolygonを採用したことへの期待です。同じ週には、米金融大手JPモルガンがPolygon上で初めての実際のDeFi取引を行ったことも伝えられ、Polygonに関する好材料が重なっていました。
Polygonは、イーサリアムと連携しながら、より安い手数料で速く取引を処理することを目指したブロックチェーンです。NFTを1点作るたびに高い手数料がかかると、少額の作品を多くのファンに売る使い方には向きません。手数料の安さと、イーサリアム系のウォレットやマーケットプレイスとの相性の良さが、SNSでの発行に選ばれた理由と考えられます。
ただし、「大企業が採用する」というニュースで上がった価格は、その採用が実際の利用につながらなければ維持されにくいものです。Instagramでの発行・販売は米国の少人数の試験にとどまり、Polygonのネットワーク全体の利用を押し上げるほどの規模にはなりませんでした。
約5か月後の打ち切り
2023年3月13日、Metaで決済や金融技術を担当していた幹部は、デジタルコレクティブルの取り組みを縮小し、クリエイターを支援する別の方法に力を注ぐと表明しました。米テック系メディアの報道では、代わりに力を入れる分野として、支払い機能のMeta Pay、メッセージ、短尺動画リールの収益化などが挙げられていました。
その後、Metaはニュースルームに「InstagramとFacebookでのデジタルコレクティブルの提供を終了した」と追記しています。過去にシェアした作品の画像は投稿として見られますが、チェーン上の記録にひも付く情報は消えています。11月に発表された発行・販売の機能が、米国外の利用者に開放されることはありませんでした。
MetaがNFTへの姿勢をどう変えてきたのかは、2022年7月の「NFTの計画は変えない」という発言からたどったMetaのNFT計画に関する記事で詳しく扱っています。
PolygonとMATICのその後
Polygonの側も大きく変わりました。Polygonは2024年9月4日、ネットワークの基本となるトークンをMATICから「POL」へ切り替える移行を始めています。イーサリアム上のMATICを持つ人は、所定の手続きでPOLに交換する仕組みで、多くの取引所は利用者に代わって交換を行いました。Polygonの公式ブログによると、移行開始から約1年でMATICの99%がPOLへの移行を終えています。
このため、2022年当時の記事に出てくる「MATIC」は、2026年の今では主にPOLという名前で扱われています。過去の価格を調べるときや、手元に古いMATICが残っているかを確かめるときは、この名称の変化に注意してください。国内の交換業者が移行をどう扱ったかは、各社の告知で確認できます。
Polygon上のNFT市場の動きは、当時のポリゴンとソラナのNFT売上を比べた記事も参考になります。
2026年のMetaとブロックチェーン
NFT機能を終えた後、MetaがInstagramやFacebookでNFTの発行や販売を再び始めたという公式発表は、2026年9月時点で見当たりません。一方で、ブロックチェーンそのものから完全に離れたわけではありません。経済誌Fortuneは2026年4月、Metaがコロンビアとフィリピンの一部の作り手に向けて、ドルと価値が連動するUSDCでの報酬支払いを試し始めたと伝えています。使われるチェーンにはPolygonとSolanaが含まれています。
2022年には「NFTを売ってクリエイターが稼ぐ」ことが掲げられましたが、2026年の取り組みは「作り手への支払いにブロックチェーンを使う」という、より地味で実務的な形になっています。
読者が学べること
この出来事から、SNSとNFTのニュースを読むときに役立つ視点を3つ挙げます。
- 「試験」と「提供開始」を区別する:大企業の発表でも、対象が一部の国や一部の利用者に限られた試験であれば、実際に使える人はごくわずかです。
- 採用の発表と利用の実態を分ける:どのチェーンが選ばれたかというニュースで価格が動いても、その後の取引件数や利用者数が増えなければ、評価は長続きしにくくなります。
- 機能は終わることがある:SNS上のNFT機能は、運営企業の方針ひとつで終了します。作品やトークンそのものはブロックチェーンに残りますが、見せる場は失われることがあります。
日本のクリエイターがNFTを販売して収入を得た場合、その所得は原則として課税の対象になります。扱いの整理はNFTの税金の記事を参照してください。
よくある質問
Q. 日本のInstagramでもNFTを作って売ることはできましたか?
A. できませんでした。2022年11月に発表された発行・販売の機能は、米国の少数のクリエイターを対象にした試験で、2023年春に取り組み全体が終了しています。
Q. InstagramのNFT機能はいつ終わりましたか?
A. Metaは2023年3月13日に縮小を表明し、その後ニュースルームで提供の終了を告知しました。共有済みの投稿は残りますが、ブロックチェーンの情報は表示されません。
Q. MATICは今どうなっていますか?
A. Polygonは2024年9月4日からMATICをPOLへ移行する手続きを始め、約1年で99%の移行が完了したと公表しています。現在は主にPOLとして扱われています。
この記事の出典
- Meta Newsroom:Introducing Digital Collectibles to Showcase NFTs on Instagram(2022年11月2日・2023年3月の更新を含む)
- The Daily Hodl:Meta Announces New Product Allowing Creators To Build Instagram NFTs on Polygon (MATIC)(2022年11月3日)
- TechCrunch:Meta winds down support for NFTs on Instagram and Facebook(2023年3月13日)
- Polygon:MATIC to POL Migration Is 99% Complete
- Fortune:Meta quietly rolls out stablecoin payments(2026年4月29日)
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




