Ethereum NFTの時価総額113億ドルとは|2023年のNansen推定を検証

2023年1月26日、Nansenの発表を引用した報道は、Ethereum上の主要NFTコレクションの推定時価総額を704万ETH、約113億米ドルと伝えました。対象は上位1,500コレクションであり、全チェーンのNFT総額や実際の売買代金ではありません。当時の数字の範囲を確認し、旧記事にあった通貨や順位の誤りを訂正します。

113億ドルはいつ、何を対象にした数字か

Coin Editionの2023年1月26日付記事は、Nansenが公表した推定値として704万ETH、米ドル換算で113億ドルを紹介しています。記事に埋め込まれたNansen公式投稿では、対象がEthereum上の上位1,500コレクションであると示されていました。世界中のすべてのNFTを合計した数字ではありません。

この限定は、ほかのブロックチェーンや対象外のコレクションを含む調査と比較するときに重要です。対象の範囲が広い調査の数値が大きくても、同じ市場の評価が上がったとは限りません。数字を比べる前に、どこまでを集計したものかを揃える必要があります。

また、原資料はある時点の推定値を示しています。「到達した」という見出しだけから、直前まで連続して増えていた、あるいは過去最高を更新したと読み取ることはできません。その判断には、同じ方法で計算した過去の値が必要です。本記事は2023年1月の記録として残し、最新の市場規模を知らせるものではありません。

旧記事の通貨表記と順位の重複を修正

当時の記事で大きな評価額が示されたものには、CryptoPunksの約105万ETH、Bored Ape Yacht Clubの95万7,255 ETHがあります。後者の米ドル換算は約15億ドルと記載されていましたが、旧記事では「約15億円」となっていました。通貨を取り違えていたため、米ドルとして訂正します。

続くOtherdeedは36万3,988 ETH、Mutant Ape Yacht Clubは31万8,890 ETHと紹介されていました。旧記事は両方を3位と記していましたが、この並びでは同順位を意味しません。ただし、順位表を正すことと、当時の全コレクションの評価を独立に再計算することは別です。ここでは報道にある数値の関係を整理しています。

これらはNFT一つの購入価格ではなく、コレクション単位の評価額です。たとえば95万7,255 ETHという数字を、一つのBored Apeに付いた価格として紹介することはできません。桁の大きな数字ほど、通貨の単位だけでなく、一点・一群・市場全体のどれを指すのかを確かめる必要があります。

後半に並んでいた各作品の順位も、あくまで当時の同じ集計の中での位置です。「歴代トップ」とする旧記事の表現から、過去の全期間を比較して順位付けしたと解釈するのは適切ではありません。

推定時価総額と実際の売買代金の違い

時価総額は一定の価格の基準を使って資産の規模を表す評価指標です。その時点までに購入者が支払った金額を合計した「累計取引額」とは異なります。113億ドルという推定値から、同じ額のお金が新しく市場へ入ったと結論付けることはできません。

評価指標の計算には方法の違いがあります。例としてCoinGeckoの公式ヘルプは、同社のNFT時価総額を、コレクションの供給数に最低出品価格を掛けたものと説明しています。ただし、これはCoinGeckoの定義であり、Nansenが2023年1月の数値にまったく同じ手順を用いたと確認した説明ではありません。

Nansenの当該投稿だけでは、全対象について採用した価格、例外処理、推定の詳細までは再現できませんでした。そのため本記事は、独自の式で当時の704万ETHを算出し直したとは主張しません。計算過程を確認できない部分を残したまま、精密な再現値のように扱わないことが必要です。

指標の名称が同じでも、対象に含める作品、価格が付かない場合の扱い、参照する市場が違えば結果は変わり得ます。異なるサービスの集計をつなげて成長率を作る場合は、こうした条件の差が数字に混ざる可能性があります。

ETH建てとドル建ては別の変化を含む

同じNFT市場を見ていても、ETHで示した評価と米ドルで示した評価は、必ず同じ割合で変わるわけではありません。ドルへの換算にはETH自体のドル価格が関わるためです。NFT側のETH建て評価が動かなくても、換算額が変わる場合があります。

仮に、あるNFTの評価を1 ETHのまま据え置き、ETHのドル価格だけが上昇したとします。この場合、ドル建ての評価は増えますが、そのNFTへ必要なETHの枚数は変わりません。逆にNFTのETH建て価格が上がっても、ETHのドル価格が下がれば、ドル換算では上昇が目立たない場合があります。これは単位の違いを示す例です。

NansenのNFT指標に関する研究も、ETH建ての最低出品価格を用いる分析と、ETH価格の影響を受けるドル建て価格を区別しています。したがって、2023年の704万ETHと113億ドルを、別々の市場規模として足し合わせることはできません。同じ推定を異なる単位で表した数字です。

日本円へ換算する場合は、さらにドルと円の為替が関係します。記事の公開日、元データの取得時刻、換算時点を揃えずに現在の円表示と比較すると、NFTの評価の変化と為替の変化が混ざります。

評価額が大きくても、その額で売却できるとは限らない

NFTは個々の作品や属性によって需要が異なります。一つの代表価格を使った指標は、全体の規模を比較する助けになりますが、すべての作品がその価格で売れることを保証しません。市場に買い手がどれだけいるか、どれくらいの数量を求めているかは別に見る必要があります。

特に出品が少ない市場では、少数の売り手が高い希望価格を付けるだけでも、表示上の価格が大きく変わり得ます。CoinGeckoも、取引量の基準に加え、流動性が低く人為的に高い最低出品価格が疑われる場合などには、ランキングを付けないことがあると説明しています。これは同社の運用方針であり、今回の上位作品に不正があったとする指摘ではありません。

数字の読み方としては、評価額だけでなく実際に成立した取引、出品の分布、売買に参加する相手の広がりを区別すると理解しやすくなります。ただし、一つの指標を追加しただけで将来の価格が分かるわけではありません。大きい評価額を安全性や元本の裏付けに置き換えないことが大切です。

2026年に過去の集計を参照する意味

2026年9月の確認では、当時の報道とNansen公式投稿への参照を確認できましたが、同じ1,500コレクション、同じ価格推定方法、同じ取得時刻を再現した現在値は取得していません。そのため、このページの見出しに残す113億ドルを、現在も維持されている水準として扱いません。

なお、NansenのNFT-500は上位500コレクションを時価総額で加重する指標として説明されています。今回の上位1,500件を対象とした推定と、名前に500を含む指数は同じ集計ではありません。指数の値と市場の総額を取り違えると、比較する単位そのものが変わってしまいます。

この古い記事を読む価値は、当時の有力コレクションがどの規模で評価されていたかを知ることにあります。現在と比較したい場合は、当時と同じ条件を再現できるかを先に確かめ、できなければ別条件の比較であることを明示します。単に新しい数字へ差し替えるよりも、調査日と対象範囲を残す方が記録として役立ちます。

よくある質問

Q. 113億ドルは現在のNFT市場規模ですか?

A. いいえ。2023年1月26日に報じられたEthereum上の上位1,500コレクションについての推定です。

Q. 113億ドルが市場へ流入したという意味ですか?

A. 違います。推定時価総額は評価の指標であり、資金流入額や累計の売買代金を示しません。

Q. BAYCの評価額は15億円でしたか?

A. 旧記事の通貨表記が誤っていました。当時の報道は約15億米ドル、95万7,255 ETHと記載しています。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。