バーレーンの不動産開発会社Bin Faqeehについて、2023年1月にBinance Payを使った暗号資産決済の導入が報じられました。7万バーレーン・ディナールを表示した支払い紹介も話題になりましたが、決済操作を示す映像と、不動産の売買が完了した証拠は異なります。2025年のBinance公式記事や現行のPay説明も参照し、何が確認できる事例なのかを整理します。
2023年に報じられたのは決済手段の導入
2023年1月27日付のcrypto.newsは、Bin Faqeehが物件代金を暗号資産で支払う方法として、Binance Payを導入したと報じました。同社のAhmed Radhi氏による説明と紹介映像をもとに、購入者が提示されたQRコードを読み込み、使う暗号資産を選ぶ流れを紹介しています。
このニュースの中心は、不動産の代金を支払う際の選択肢が増えたという点です。建物や土地の権利をNFTに分割したという発表ではなく、物件をブロックチェーン上で売買する仕組みを公開したという内容でもありません。暗号資産での支払いと、不動産自体のトークン化は分けて理解する必要があります。
報道は企業による導入説明を伝えたもので、同社の全物件、すべての購入者、あらゆる金額について同じ決済条件が適用されると確認した調査ではありません。予約金だけに使えるのか、売買代金の全額にも対応するのかといった契約別の条件も、短い紹介だけでは確定できません。
7万ディナールの紹介映像は何を証明するか
元記事が引用したTrustnodesは、決済端末を使う映像について、7万バーレーン・ディナール、概算で約18万米ドルの支払いを紹介していました。この金額はニュースの中で示された例です。現在販売されている物件の価格や、すべての物件に共通する最低購入額として案内することはできません。
今回確認できた記事からは、その操作に対応する売買契約、買主への引き渡し、所有権の移転記録まで確認できませんでした。そのため「暗号資産で住宅が実際に成約した」「7万ディナールの決済で家の所有者になった」とまでは断定しません。導入を説明する映像として報じられたという範囲に限定します。
これは、映像が事実ではないと判断したという意味でもありません。決済画面で確認できる事項と、不動産取引の完了を判断する事項が違うということです。金額や支払先の表示は決済の説明に役立ちますが、物件の特定、契約条件、権利の帰属をそれだけで読み取ることはできません。
Binance Pay対応と全暗号資産対応は違う
旧記事は「Binanceにあるありとあらゆる暗号通貨」を使えると記していました。しかし、取引所で売買できる銘柄と、Payで支払える銘柄は同じ集合とは限りません。さらに、個人間送金と加盟店への支払いでも対応範囲が異なります。「Binanceを使っている」という一点から、任意のトークンで支払えるとは言えません。
Binanceの公式FAQは、Payを使えるのは対応国の対象利用者で、本人確認が必要と説明しています。また、個人間送金と加盟店決済の対応銘柄数を別々に示し、地域によって制限される銘柄があるとしています。公開ページ間でも数の記載が異なるため、本記事では固定の銘柄数を物件購入の条件として掲げません。
特に重要なのは、Pay全体で対応する銘柄と、特定の販売会社が当該支払いで受け付ける銘柄を区別することです。購入する物件、請求金額、支払い時点の設定が変われば確認すべき条件も変わります。2023年の紹介でビットコインが挙げられたことから、現在のすべての支払いでBTCが必ず選べるとまでは判断できません。
「直接支払い」でも決済サービスは介在する
本件ではBinance Payという決済機能を利用しています。そのため、売主と買主が仲介サービスを使わず、任意の自己管理ウォレット間でビットコインを直接送金した事例と同じ説明にはできません。QRコードを使う操作が簡単であることと、資産の受け渡しに誰が関わるかは別の話です。
また、購入者が選ぶ暗号資産と、売主が最終的に受け取る資産や通貨が一致するかも、決済や換算の条件によります。今回の資料からは、Bin Faqeehが代金をどの資産で保有したか、その後に法定通貨へ換えたかを確認できませんでした。売主が受け取ったBTCをそのまま長期保有している、という推測はできません。
代金をディナールで示し、支払いに使う暗号資産へ換算する場合は、見積もり時点や有効期限が取引条件として重要になります。たとえば価格の変動で必要な枚数が変われば、同じディナール額でもウォレットから移す数量は異なります。これは金額の読み方を示す例であり、本件の具体的な換算レートや手数料を再現したものではありません。
2025年にも公式紹介はあるが、成約統計ではない
Binanceが2025年5月22日に公開した旅行と暗号資産決済に関する公式ブログは、バーレーンのBin Faqeehを取り上げ、Binance Payを通じて不動産の支払いに暗号資産を受け付けると紹介しています。導入の話が2023年の報道だけにとどまらず、その後も決済事業者によって説明されていたことを確認できます。
ただし、この公式記事は利用例を紹介する広報資料です。Bin Faqeehの暗号資産決済による成約件数、年間取引総額、決済比率などを監査した資料ではありません。紹介が続いていることを根拠に、暗号資産決済が同社の主流になった、住宅販売を大きく増やしたと評価することはできません。
2026年9月の確認では、この2025年の記事とPayの現行説明を参照できました。一方、同社の全物件に関する最新の支払い条件や成約統計は確認できていません。2025年時点の紹介と、現在の個別取引で利用できるかという確認は分けて扱います。導入を伝える過去記事だけで代金を送る判断はできません。
日本の利用者にとっての確認点
Binance Payの公式説明は、対応する国・地域と利用者資格に条件があるとしています。海外で加盟店がPayを導入したことは、日本のBinance利用者にも同じ機能が提供されるという意味ではありません。本記事では日本居住者が当該決済を使えることを確認しておらず、日本向けの登録や送金手順としては案内しません。
名前が似たサービスにも注意が必要です。Binance Japanが案内するPayPayマネーとの連携は、日本円の入出金や暗号資産売買に関する国内サービスです。海外の加盟店で使うBinance Payとは別の説明であり、PayPay連携が利用できることを、Bin Faqeehへの支払い資格の証明にはできません。
加えて、売主が暗号資産を受け付けることと、国がその資産を法定通貨として採用することは異なります。不動産の取得資格、契約上の義務、引き渡しの条件も、決済アプリへのアクセスとは別に確認が必要です。QRコードの支払い機能だけでそれらの手続きまで完結したと考えるのは早計です。
旧記事にあった他社との「直接・間接」の比較は、双方の受取構造を裏付ける資料が不足しているため省きました。本件で確かめられる意義は、不動産会社が既存の決済サービスを使い、暗号資産保有者向けの支払い経路を紹介したことです。取引の安全性や物件価値、投資収益を保証する情報として読むものではありません。
よくある質問
Q. 7万ディナールで住宅が成約したのですか?
A. 報道にはその金額を示す決済紹介がありますが、本記事では対応する売買契約や所有権移転まで確認できていません。成約実績とは分けて記述しています。
Q. Binanceで扱うすべての銘柄を支払いに使えますか?
A. いいえ、そのようには判断できません。Payの対応範囲、個人間送金と加盟店決済の違い、地域や加盟店の条件を確認する必要があります。
Q. 日本のBinance利用者も同じ方法で払えますか?
A. 今回の確認では日本居住者の利用可否を確定していません。Binance JapanのPayPay連携も、海外加盟店向けのBinance Payとは異なります。
この記事の出典
- crypto.news:Bin Faqeehの暗号資産決済導入(2023年1月27日)
- Trustnodes配信記事:7万ディナールの決済紹介(Followin掲載)
- Binance:2025年の暗号資産決済事例紹介
- Binance:What is Binance Pay?
- Binance Japan:PayPayマネーとの入出金連携
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




