NFT売上ランキングの読み方|2022年5月の上位5件はその後どうなったか

旧版の記事は、2022年5月30日時点の「24時間で最も売れたNFT」上位5件を紹介し、「短期投資の参考になる」として、稼ぎたいならAxie Infinity、集めたいならNBA Top Shotといった形で購入をすすめていました。しかし、紹介された数字には取引額と取引件数の混同が見られ、特定の銘柄をすすめる内容は投資助言にあたるおそれもありました。

この記事では、当時の上位5件がどのようなプロジェクトで、その後どうなったのかを確認したうえで、NFTの売上ランキングを見るときに知っておくべき指標の意味と落とし穴を整理します。特定のNFTの購入をすすめるものではありません。

NFTの売上ランキングとは何か

NFTの売上ランキングは、CryptoSlamやDappRadarといったデータサイトが、ブロックチェーン上の取引記録を集計して公開しているものです。主に次のような指標で順位が付けられます。

指標 意味 注意点
取引額(売上高) 一定期間に成立した売買の合計金額 高額な数件の取引だけで順位が大きく上がる
取引件数 成立した売買の数 1件数十円の安いNFTでも件数は増える
平均価格 取引額を件数で割った値 一部の高額取引に引っ張られる
最低価格(フロア) そのコレクションで今いちばん安く出品されている価格 実際に売れた価格とは限らない

旧版の記事は、ある項目では「売上高427.69ドル」と書く一方で、別の項目では数百万ドルの数字を並べるなど、指標と単位が混在していました。ランキングを読むときは、まずどの指標で並べたものかを確かめることが出発点です。

1位 NBA Top Shot:公式ライセンスのデジタルカード

NBA Top Shotは、カナダのDapper Labsが米プロバスケットボールリーグNBAと選手会の公式ライセンスを得て運営するサービスです。試合の名場面を収めた短い動画を「Moments」と呼ばれるNFTとして販売し、独自のブロックチェーンFlow上で発行しています。2020年に始まり、2021年に大きく注目を集めました。

旧版の記事は「7月13日に発売される初のコレクターズゲーム」と書いていましたが、これは特定の新企画に関する情報と混同したものとみられ、サービス自体は2020年から続いています。

その後、購入者の一部は、Momentsは登録されていない有価証券にあたるとしてDapper Labsを相手に集団訴訟を起こしました。同社は2024年6月、400万ドルを支払う和解に合意しています。和解の条件には、原告がNFTを有価証券だと主張しないことが含まれていました。

2位 Farmers World:件数は多いが単価は低い農場ゲーム

Farmers Worldは、WAXというブロックチェーン上で動く農場経営ゲームです。道具や土地をNFTとして手に入れ、ゲーム内の資源を集める仕組みで、1回の取引額はとても小さいのが特徴です。旧版の記事でも平均価格は0.179ドルとされていました。

こうしたゲームは取引件数が非常に多くなるため、件数を基準にしたランキングでは上位に入りやすくなります。DappRadarによると、Farmers Worldの取引は2022年1〜3月が最も活発で、ピーク時には1日5万4,000件の取引がありましたが、2022年6月下旬以降は1日1,000〜3,000件程度に落ち着きました。同サイトは、ゲームの取引の多くが自動化プログラム(ボット)によるものだとも指摘しています。

3位 Axie Infinity:Play to Earnの象徴とその後

Axie Infinityは、ベトナムのSky Mavisが開発した、モンスター「Axie」を育てて戦わせるゲームです。遊びながらトークンを稼ぐ「Play to Earn」の代表例として2021年に急成長し、フィリピンなどでは生活費の一部を稼ぐ人も現れました。

しかし2022年3月23日、Axie Infinityのために作られたブロックチェーン「Ronin」と外部をつなぐブリッジがハッキングされ、約6億2,500万ドル相当の暗号資産が流出しました。米財務省は翌月、北朝鮮のハッカー集団ラザルスが関与したと発表しています。旧版の記事が公開された5月は、この事件から間もない時期でした。

さらに、ゲーム内で稼げるトークンの価格が大きく下がり、「稼げる」という前提は崩れました。旧版の記事は「手出しなしでもお金を生み出せる」と書いていましたが、実際には多くの参加者がゲームを始めるためにAxieを購入する必要があり、価格下落の影響を受けました。

4位・5位:AI Apes CollectionとENS

4位に挙げられていた「AI Apes Collection」については、運営者や現在の状況を一次情報で確認できませんでした。ランキングには、短期間だけ取引が集中して順位を上げ、その後ほとんど取引されなくなるコレクションもしばしば入ります。

5位のENS(Ethereum Name Service)は、「example.eth」のような読みやすい名前を、長い英数字のウォレットアドレスに結びつける仕組みです。名前そのものがNFTとして発行され、売買できます。旧版の記事は「イーサネットアドレス」と書いていましたが、正しくはイーサリアムのアドレスです。ENSの名前は登録料を払って一定期間使う形式で、期限が切れると他の人が取得できるようになる点は、一般的なNFTとの違いです。売買の対象としてよりも、ウォレットの「住所」を覚えやすくする実用的な道具として使われている点で、ほかの4件とは性格が異なります。

上位5件から見える2022年の市場の特徴

当時の上位5件を並べると、スポーツのデジタルカード、低単価のゲームアイテム、稼ぐことを売りにしたゲーム、正体の分からないコレクション、そして名前のサービスと、性格のまったく違うものが同じ表に入っていました。売上ランキングが「何が売れているか」を示すだけで、「何に価値があるか」を示すものではないことがよく分かります。

2022年5月は、暗号資産の価格が急落し、NFT市場全体の取引額も縮み始めた時期です。そうした中でも上位に残ったのは、件数が多いゲームや、公式ライセンスを持つ大手のサービスでした。一方で、Play to Earnのように「稼げる」ことを前提にした仕組みは、トークン価格の下落とともに参加者が減っていきました。

なお日本では、ランキング上位のNFTを売って儲けが出たときも、ほかの資産と交換可能なものなら課税の対象となります。

ランキングの落とし穴:ウォッシュトレード

NFTの取引額を読むうえで最も注意したいのが、ウォッシュトレード(自己売買)です。同じ人や関係者が売り手と買い手の両方になって取引を繰り返し、取引額や価格を実態以上に大きく見せる行為を指します。

CryptoSlamは、イーサリアム上のNFT取引のうち、累計で約310億ドル、全体の約41%がウォッシュトレードだったと推計しています。取引所の報酬プログラムを目当てにした自己売買が、一時期のランキングを大きくゆがめたこともありました。

現在は一部のデータサイトがウォッシュトレードと推定される取引を除いた数字も表示しています。ランキングを見るときは、こうした調整後の数字が出ているか、取引件数に対して購入者の数が極端に少なくないかを確認すると、実態に近い姿がつかめます。

ランキングを見るときのチェックリスト

  1. どの指標の順位か:取引額、件数、平均価格のどれで並べたものか。
  2. 期間はどれくらいか:24時間の順位は、1件の高額取引で大きく入れ替わります。30日や90日の推移もあわせて見ます。
  3. どのチェーンか:手数料の安いチェーンでは件数が増えやすく、単純に比較できません。
  4. 自己売買の可能性:購入者数、売り手と買い手の重なり、調整後の取引額を確認します。
  5. 運営の状況:公式サイトやSNSが更新されているか、開発が続いているか。

ランキングは市場で何が話題になっているかを知る手がかりにはなりますが、購入の判断材料としては不十分です。NFTの詐欺の手口についてはNFT詐欺の典型的な手口と見分け方も参考にしてください。

よくある質問

Q. NFTの売上ランキングはどこで見られますか?

A. CryptoSlamやDappRadarなどのデータサイトが公開しています。サイトごとに集計方法や対象のチェーンが違うため、同じ日でも順位が異なることがあります。

Q. 取引件数が多いNFTは人気があると考えてよいですか?

A. 一概には言えません。1件数十円の安いNFTや、ボットによる自動取引で件数が増えている場合もあります。取引額や購入者数もあわせて確認してください。

Q. ウォッシュトレードとは何ですか?

A. 同じ人や関係者が売り手と買い手を兼ねて取引を繰り返し、取引額や価格を大きく見せる行為です。CryptoSlamはイーサリアム上のNFT取引の約41%がこれにあたると推計しています。

Q. Axie Infinityのハッキングとは何ですか?

A. 2022年3月、ゲーム用のブロックチェーンRoninのブリッジから約6億2,500万ドル相当の暗号資産が流出した事件です。米財務省は北朝鮮のハッカー集団ラザルスの関与を指摘しました。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。