「ビットコインは8,000ドルまで下落」予想はどうなったか|2022年の発言を検証

2022年5月23日、米資産運用会社グッゲンハイム・パートナーズの最高投資責任者(CIO)だったスコット・マイナード氏は、スイスで開かれた世界経済フォーラム(ダボス会議)の場でCNBCの取材に応じ、ビットコインが8,000ドルまで下がる可能性があると述べました。当時の価格は3万ドル前後で、実現すれば7割以上の下落になる見方でした。

旧版の記事はこの発言を紹介しつつ、半減期のサイクルから2024年以降の上昇を予想する内容でした。この記事では、発言の正確な中身と前提条件を確認し、その後の値動きと照らし合わせたうえで、著名人の価格予想をどう受け止めればよいかを整理します。特定の売買をすすめるものではありません。

発言の中身:条件付きの「底値」予想だった

マイナード氏の発言は、CNBCの報道によると「3万ドルを継続的に下回れば、8,000ドルが最終的な底になる。特に米連邦準備制度理事会(FRB)が引き締めを続けるなら、まだ下落の余地は大きい」という趣旨でした。つまり「必ず8,000ドルになる」という断定ではなく、3万ドル割れが続くことと、金融引き締めという2つの条件を置いた見通しです。

同氏はあわせて、暗号資産の大半は「がらくた」だが、ビットコインとイーサリアムは生き残るだろうとも述べ、当時の状況を2000年前後のインターネットバブルになぞらえました。バブルの中から少数の勝者が残るという見方です。

旧版の記事には、発言の引用が不自然な訳になっている箇所や、FRBの政策を「財政政策」と書いている箇所がありました。FRBが担うのは金利などを通じた金融政策で、財政政策は政府の予算や税に関わるものです。

背景:2022年5月の市場で何が起きていたか

発言の直前、暗号資産市場は大きく揺れていました。2022年5月上旬には、米ドルと連動するよう設計されたステーブルコイン「TerraUSD(UST)」が価格を維持できなくなり、関連する暗号資産LUNAとともに急落しました。この連鎖で市場全体から資金が流出し、ビットコインは3万ドルを割り込みます。

さらに、米国では40年ぶりの高インフレを抑えるため、FRBが利上げを急いでいました。金利が上がると、株式や暗号資産のように値動きの大きい資産から資金が離れやすくなります。マイナード氏が「FRBの引き締め」を条件に挙げたのは、この流れを踏まえたものです。

なお、同氏は2020年12月には、ビットコインが長期的に40万ドルに達し得るとも語っていました。1年半で見方が大きく変わったこと自体、暗号資産の予想の難しさを示しています。

2022年後半:連鎖した破綻と底打ち

発言のあとも、暗号資産業界では大きな破綻が続きました。2022年6月には暗号資産の貸し付けサービスを手がけていた米Celsius Networkが顧客の出金を停止し、7月には大手ヘッジファンドのThree Arrows Capitalが破産手続きに入りました。いずれもTerraの崩壊による損失や、価格下落で担保が不足したことが引き金とされています。

そして11月、世界有数の取引所だったFTXが、顧客資産の扱いをめぐる疑惑から資金繰りに行き詰まり、破綻しました。創業者は後に米国で詐欺などの罪で有罪判決を受けています。この混乱の中でビットコインは約1万5,500ドルまで下がり、ここがこの下落局面の底になりました。

振り返ると、2022年の下落は金融引き締めという外部要因に加え、業界内部で過度な借り入れや資産の混同が積み重なっていたことが表に出た結果でした。価格予想の多くは、こうした個別企業の破綻までは織り込めていませんでした。

その後どうなったか:実際の値動き

その後の主な節目は次のとおりです。

時期 出来事 ビットコインの価格
2022年5月23日 マイナード氏の発言 約3万ドル
2022年11月 大手取引所FTXの破綻 約1万5,500ドルまで下落(この周期の最安値)
2024年1月 米国で現物ETFが承認 上昇基調に
2024年3月 2021年の最高値を更新 約6万9,000ドル超
2024年4月 4回目の半減期 —
2025年10月6日 過去最高値 約12万6,000ドル
2026年9月25日 本稿執筆時点 約8万4,000ドル

3万ドル割れは実際に続き、FRBの引き締めも2023年まで続きましたが、価格は8,000ドルには届かず、最安値は約1万5,500ドルでした。条件の一部は満たされたものの、予想した水準までは下がらなかったことになります。マイナード氏は2022年12月21日に63歳で急逝しており、その後の上昇局面を見ることはありませんでした。

旧版が紹介した「半減期サイクル」はどうだったか

旧版の記事は、半減期の前に2年ほどの回復局面があり、半減期後に大きな上昇が来るという過去のパターンを紹介し、2024年までは最高値の更新を待つ必要があると書いていました。

半減期とは、ビットコインの新規発行ペースを約4年ごとに半分にする仕組みです。2024年4月の半減期で、1ブロックあたりの採掘報酬は6.25BTCから3.125BTCに減りました。この点は旧版の記述どおりです。

ただし実際には、2024年3月、つまり半減期の前に最高値を更新しました。米国での現物ETFの承認によって新しい資金が流れ込んだことが大きく、過去のサイクルとは違う要因が値動きを左右しました。過去のパターンは参考にはなっても、同じ形で繰り返される保証はありません。半減期の日程はビットコイン半減期の日程一覧にまとめています。

著名人の価格予想を読むときの5つの視点

この一件から、価格予想のニュースを読むときに確認したい点が見えてきます。

  1. 条件は何か:「〜なら」という前提が付いていないか。見出しでは条件が省かれがちです。
  2. いつまでの話か:期限のない予想は、外れたかどうかを判断できません。
  3. 過去の的中率:CoinDeskは当時、マイナード氏の過去の予想を検証する記事を出しています。同じ人物の過去の発言と結果を比べるのは有効です。
  4. 発言者の立場:運用会社、取引所、発行体など、立場によって見通しに偏りが出ることがあります。
  5. 一つの予想で決めない:上昇予想と下落予想は常に並存します。予想を根拠に借金や全財産を投じる判断は避けるべきです。

NFT市場との関係

旧版の記事は「基軸通貨の動きはNFT市場にも相関がある」と書いていました。多くのNFTはイーサリアムなどの暗号資産で値付けされるため、暗号資産の価格が下がると、円やドルで見たNFTの価値も下がりやすくなります。2022年の下落局面では、NFTの取引額も大きく落ち込みました。

一方で、暗号資産の価格が下がったときに「NFTを安く買える」と考えるのは早計です。NFTは暗号資産以上に買い手が限られ、売りたいときに売れない場合があります。価格の動向を追うことと、購入の判断は分けて考えてください。実際、2024年から2025年にかけてビットコインが最高値を更新した局面でも、NFTの取引額は2021年の水準には戻りませんでした。暗号資産の相場とNFT市場の関係は、旧版の記事が想定していたほど単純ではありません。

日本の読者が押さえておきたいこと

日本でビットコインを売買する場合は、金融庁に登録された暗号資産交換業者を使うのが前提です。登録の有無は暗号資産交換業者の登録確認方法で確かめられます。

また、個人が暗号資産の売買で得た利益は原則として雑所得となり、給与などと合算して課税されます。価格の変動が大きい資産なので、利益が出たときの税金も含めて、生活に影響しない範囲で扱うことが大切です。

よくある質問

Q. スコット・マイナード氏はビットコインについて何と言ったのですか?

A. 2022年5月23日、3万ドルを継続的に下回れば8,000ドルが最終的な底になり得ると述べました。FRBの金融引き締めが続くことも条件に挙げていました。

Q. ビットコインは実際に8,000ドルまで下がりましたか?

A. 下がっていません。2022年11月のFTX破綻後に約1万5,500ドルまで下落したのが、この周期の最安値でした。その後2025年10月には約12万6,000ドルの最高値を付けています。

Q. 半減期の後には必ず価格が上がりますか?

A. 保証はありません。2024年は半減期の前に最高値を更新しており、米国の現物ETF承認など別の要因が大きく影響しました。

Q. 価格予想のニュースはどう読めばいいですか?

A. 予想の前提条件と期限、発言者の過去の的中率や立場を確認し、一つの予想だけで売買を決めないことが大切です。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。