2023年初のNFT売買は回復した?週次データと年間実績を整理

2023年の年明けには、NFTの週間売買高が増えたという報道がありました。これは2022年後半の低迷後に見られた短期的な変化で、2023年全体の回復を確定したものではありません。元記事にはBAYCをSolana上の代表的コレクションのように扱った記述や、前年との比較で年号を取り違えた箇所がありました。当時の集計を振り返り、売買高が増えたことから何が読み取れるかを整理します。

1月7日までの週間売買高は約2億900万ドル

Blockworksが2023年1月9日に伝えたCryptoSlamの集計では、1月7日までの1週間のNFT売買高は前週比26%増でした。合計は約2億900万ドル、そのうちEthereum上の取引が約1億6,400万ドルを占めたとされています。本記事では、当時の報道に残る数字として参照しています。

この2つの金額から計算すると、Ethereumの比率は約78%です。これは売買金額に占める比率で、全NFTの78%が同チェーンに存在するという意味ではありません。金額の大きい取引が多いチェーンと、少額の売買が多数あるチェーンでは、金額順と件数順の順位が異なる場合があります。

この集計は週間の販売額です。コレクション全体の時価総額や、発行者の売上、保有者の利益と同じではありません。同じNFTが期間内に複数回売買されれば、それぞれの成立した取引が売買高に影響します。記事の「売上」を、運営会社にその全額が入ったという意味で読まないことが大切です。

BAYCの増加とSolana全体の増加は別の話

同記事はBAYC(Bored Ape Yacht Club)の週間売買高について53%増、Solana上のNFT売買高が約30%増と紹介されました。この2つは異なる集計対象です。BAYCはEthereum上のコレクションであり、Solanaの販売増を代表するプロジェクトとして列挙するのは誤りです。

チェーン別統計とコレクション別統計を一文にまとめると、どの数字が何にかかるか分かりにくくなります。例えば「BAYCが53%増」は一つのコレクションの変化で、「Solanaが約30%増」はそのチェーンで集計されたNFT取引の変化です。対象の広さが違うため、単純に大小を比べても市場全体への影響は分かりません。

背景として、当時はDeGodsとy00tsがそれぞれEthereumとPolygonへの移行を計画していたことも報じられていました。ここで扱うのは2023年1月時点の計画です。その後も両プロジェクトがずっと同じチェーンだけで展開されたとする説明には使えません。移行のニュースがあったことと、その週の売買を増減させた原因の立証も区別する必要があります。

2022年の比較対象は2023年ではなく2021年

元記事は、2022年の約247億ドルを「2023年の251億ドルから減少」と説明していました。2023年1月の時点で、その年全体の売買高はまだ確定していません。DappRadarの行動分析レポートで確認できる比較は、2022年の約247億ドルと2021年の約251億ドルです。

同レポートが用いるのは、ブロックチェーンや市場を横断して集計したオーガニックな取引高です。これはDappRadarの集計条件に基づく数値であり、先に挙げたCryptoSlamの週間集計と無条件に足したり、同じ定義の連続データとして扱ったりはできません。集計会社、対象市場、除外基準がそろっているかが重要になります。

約247億ドルと約251億ドルの差は約4億ドルですが、ドル建ての年合計が近いからといって、年間を通じて同じ勢いだったとは限りません。前半の大きな取引が後半の低迷を覆い隠すこともあります。年次、四半期、月次、週次の数字は、観察する時間の幅が違います。

ドル建て金額とNFT自体の価格上昇を区別

NFT市場の売買高は、取引件数と各取引の価格の両方に左右されます。高額な作品が数点売れただけでも、全体の金額が大きく動くことがあります。その一方で、多くの保有者が持つ作品はほとんど売買されていないという状況も起こり得ます。

さらに、ETHやSOLで成立した取引をドルへ換算すると、暗号資産側の相場変動も影響します。仮に10 SOLで取引されるNFTの価格が変わらなくても、1 SOLのドル価格が上がればドル表示は大きくなります。NFTに対する評価の変化と、決済通貨の価格の変化を分けて見る必要があります。

逆に、NFTのSOL建て価格が上昇していても、SOL自体が下がればドル換算では上昇しない場合があります。売買高の増加を説明する際には、どの通貨を基準にした変化なのかを併記すると誤解を減らせます。2023年初めのSOL相場を示す過去の数字は、現在の価格や今後の方向を示すものではありません。

購入者数は実人数、取引数は利用目的と同じではない

当時のBlockworksは、週間の購入者を40万748、取引を約120万件と紹介しました。ブロックチェーンの集計では、アドレスやウォレットを基準に数える指標が使われます。一人が複数のウォレットを使うこともあるため、この数字を本人確認済みの40万748人と受け取ることはできません。

DappRadarも、ユニークな取引参加者をウォレット単位で説明しています。異なるチェーンやサービスの参加者数を合算する際には、同じ人が複数の場所に現れる可能性が残ります。利用者数について論じるなら、人、口座、アドレスのどれを数えたのかを明確にする必要があります。

元記事にあったBitcoinの週間取引件数との比較も、市場の普及度をそのまま比べる指標にはなりません。Bitcoin上の取引とNFTの売買では、目的も一件に含まれる処理も違います。取引数が多いから日常利用が多い、保有者が多いから値下がりしにくい、といった結論は、その数だけでは導けません。

見るべき指標は目的次第です。売買の活発さを知るなら成立件数と金額、保有の偏りなら所有アドレスの分布、売りやすさなら買い注文と成立実績を照合します。単一のランキングでそれらすべてを代用することはできません。

年間実績では短期反発がそのまま続いたわけではない

後に公表されたDappRadarの2023年レポートは、年間のNFT取引高を約126億ドル、前年比49%減と報告しました。同社の年次評価では、取引されるNFTの価格低下が金額に影響したと説明されています。年初の週次増加と年間の減少は矛盾しません。途中の短い期間に増加しても、年全体の金額が前年を下回ることはあります。

ただし、この年次報告も特定の集計方法と対象範囲によるものです。異なる資料にある件数や利用者数を接ぎ合わせ、独自の年間成長率を作ることは避けます。金額の減少と利用の広がりが別の動きをする可能性はありますが、それを説明するには同じ定義でそろえたデータが必要です。

2026年9月27日の更新では、過去の報道と後続の年次資料を照合しました。2026年の市場が上向いているという最新速報には置き換えていません。このニュースから得られるのは、低迷の後に週次取引が増えたという記録と、短期反発だけで長期回復や個別NFTの値上がりを断定できないという読み方です。

よくある質問

Q. 2023年初のNFT市場は本当に増加しましたか?

A. 当時の報道は、1月7日までの週間売買高が前週比26%増えたと伝えています。年全体の成長を示す数値ではありません。

Q. BAYCはSolanaのNFTですか?

A. BAYCはEthereum上のコレクションです。BAYCの売買高増加とSolana全体の増加は、別の集計対象として読む必要があります。

Q. 取引高が増えれば自分のNFTも高く売れますか?

A. 市場全体の取引高だけでは判断できません。保有作品の成立価格、買い手の有無、手数料などが関わり、掲載価格で売れるとも限りません。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。