要約
2024年は「Crypto+AI」の投資やビットコイン関連の新興事業が活発化し、大手VCをはじめ多くの企業が暗号AI(暗号通貨+AI)やRWA、そしてレイヤー2(L2)技術に注力しました。さらに、OKX Venturesの積極的投資やSolanaでのAIハッカソンなど、DeFiやNFT、AIエージェント領域にイノベーションが広がっている点が注目されています。本記事では、2024年における暗号通貨AI動向やビットコインエコシステムの変化、主要投資機関の取り組み、そしてAI×ブロックチェーンをめぐる今後の展望を中心に概説いたします。
1.2024年「暗号AI」投資の盛況と主要プレイヤー
2024年は「Crypto+AI」が暗号資産業界の投資テーマとして急速に台頭し、a16z、Coinbase Ventures、Binance Labsといった著名VCがこぞってAI関連プロジェクトへ出資を実施しました。具体的には、GPUトークン化や分散型AIネットワークへの資金投下が活発化しており、Messariのレポートによると、暗号資産AIセクターへの投資額は前年比で約100%増加、投資ラウンドも138%増という伸びを示しています。
同時に、Pantera CapitalやPolychainなども大規模ファンドを組成してAI基盤やAIエージェントの開発を後押し。AIに必要なデータや算力(GPUリソース)の確保をメインとしたDePIN(分散型物理インフラネットワーク)も注目され、io.netやMyShell、OpenGradientなど多数のプロジェクトが台頭しました。今後は「AIエージェントが自律的にトークンを扱う」という新しい利用シナリオが2025年にかけて本格化する可能性があります。
2.OKX Venturesの積極投資と生態系構築
OKX Venturesは2024年に1億ドル以上を投じ、60を超えるプロジェクトへ投資を行いました。特にSolana、SUI、Aptos、TON、さらにビットコイン(BTC)エコシステムへも注目しており、DeFiとAI、BTC関連をバランスよく支援する姿勢が特徴です。
同社は単なる資金支援にとどまらず、複数のエコシステムパートナーや加速器と連携して、スタートアップ企業への技術サポートや市場拡大もサポート。暗号資産AIを含む革新的プロジェクトがより広く社会実装されるよう、合規(コンプライアンス)面を含めた包括的な取り組みを継続しています。
3.ビットコインエコシステムの現状:高開からの失速
ビットコインエコシステムは2024年冒頭の「Ordinals」ブームや「BRC-20」トークンへの期待から活気づきましたが、年後半には失速が目立ちました。主な要因としては、
1)新規参入者の減少による流動性不足
2)レイヤー2や再質押プロジェクト(Babylonなど)への期待過剰と失望
3)ORDIやRUNE系トークンなどの市場価格の急落
が挙げられます。
それでも、Messariの分析や一部VCは「ビットコインがデジタルゴールドとして世界の金融資産に組み込まれる中で、イノベーション余地も残る」と見ており、2025年以降に「BTCステーキング」や「OP_CAT」によるスクリプト拡張がどこまで機能するかが重要な焦点になると考えられています。
4.Marathon Digitalの動向:ビットコイン保有枚数増加
大手マイニング企業であるMarathon Digitalは、2024年を振り返る中でビットコイン保有枚数を44,394枚まで増やしたと報告しました。風力発電所の買収や油田ガスの再利用といったゼロコストエネルギー戦略を進め、さらにフィンランド拠点では余剰熱エネルギーを8万世帯に供給するなど、マイニング業の新しいビジネスモデルを提示しています。これはビットコインネットワークの環境面・社会面への取り組みとしても評価され、エネルギーとインフラを組み合わせた拡張路線が注目されています。
5.Solana AIハッカソン:ブロックチェーンとAIの接点
2024年末に開催されたSolana AIハッカソンでは、DeFi取引を自動化するAIエージェントやAIを活用したDAOプラットフォーム、さらにゲームやNFT領域とAIを組み合わせた斬新なプロジェクトが多数出品されました。
- 例として、Cod3xは「無コード」でDeFi戦略を作成するエージェント基盤を構築し、ASYMはエージェントの利益をトークンホルダーに還元する仕組みを開発。
- Elite AgentsのようにAIエージェントのエコシステム構築を狙う動きもあります。
これら取り組みは「チェーン上の取引自動化」を強化し、2025年以降の暗号資産AIブームをけん引する可能性が高いといえます。
6.2025年への期待と主要視点
Messariの「2025年展望」によれば、RWA(現実資産のトークン化)やAIエージェントの領域でさらなる資金流入が予想されるほか、ビットコイン現物ETFやイーサリアム関連の大型アップグレード(例えばCancun、blob取引の低コスト化)も市場を動かす要素になり得ます。
- L2領域では手数料収益の奪い合いが激化する一方、マルチチェーンやモジュール型アーキテクチャへの関心が拡大。
- SolanaはDePIN(分散型物理インフラ)や高速処理を武器に、Baseなどと並び「AI×ブロックチェーン」分野で先行していると評価されています。
いずれにせよ、合規対応や技術革新の双方が欠かせない段階に入り、2024年の投資動向を踏まえて2025年には大型プロジェクトの具体化が進む可能性が高いといえるでしょう。
暗号資産AIやビットコインエコシステムが拡大を続ける一方で、投資バブルの懸念やネットワークの負荷増大、そして規制強化とのバランスが課題として残ります。ビットコインエコシステムの「高開からの低下」のように、市場の楽観が急速にしぼむケースも少なくありません。
一方で、Marathon Digitalのようにエネルギー戦略を進化させる企業や、OKX Venturesのように長期的視野でエコシステムを育成する動きも活発化しており、これらが合わさることで「Crypto+AI」が新たなフェーズに到達する下地が作られつつあります。
今後は、より実用的なユースケースの誕生や再質押モデルの洗練、そしてハードウェアインフラ・ソフトウェアプロトコル双方の強化によって、2025年に大きな変革が訪れる可能性が高いと期待されています。