2022年7月29日(金)、大手NFTマーケットプレイスのOpenSeaは、NFTを購入すると同時に別のウォレットへ送れる「ギフト」機能を追加しました。ところが数日のうちに、この機能を使って有名人やインフルエンサーがNFTを買ったように見せかける動きが指摘され、議論になりました。
問題の本質はOpenSeaの機能そのものより、「誰が買ったか」を表示する外部のウォレット追跡ツールの読み取り方にありました。この記事では当時の経緯を整理し、その後のOpenSeaの動きと、有名人の売買を参考にするときに知っておきたい取引履歴の読み方をまとめます。
ギフト機能で何ができるようになったか
それまでOpenSeaでNFTを買うと、代金を払ったウォレットにそのままNFTが届きました。人に贈りたい場合は、いったん自分で受け取ってから、別の取引で相手のアドレスに送る必要がありました。
新しい機能では、購入の手続きの中で受取先のアドレスを指定でき、1回の取引で代金の支払いと相手への送付が完了します。手数料(ガス代)の負担が減り、プレゼントやキャンペーンの配布には便利な機能でした。
ただし、ブロックチェーン上の取引は誰でも見られます。誰が誰にNFTを贈ったかは、アドレスをたどれば第三者にも分かります。贈り物として使う場合も、自分のアドレスと相手のアドレスが結びつけて見られることは意識しておく必要があります。
何が起きたか:有名人が「買った」ように見える
Decryptの2022年8月2日の報道によると、Metaverse HQの創設者として知られる「JakeandBake」氏は、この機能がすでに悪用されているとTwitter(現X)で指摘しました。第三者が買ったNFTを、起業家のゲイリー・ヴェイナチャック氏など著名人のウォレットに送りつけることで、追跡ツールの画面上ではその著名人が購入したように見えていたのです。
NFTの世界では、影響力のある人のウォレットの動きを見て同じコレクションを買う人が少なくありません。ある著名人が買ったと表示されれば、そのコレクションに注目が集まり、価格が動くこともあります。実際には本人は何も知らず、NFTを贈られただけという状況でした。ヴェイナチャック氏自身も、問題が解決されることを望むとともに、自分が買ったからといって誰も何かを買うべきではないと投稿しています。
OpenSeaと追跡ツール各社の対応
OpenSeaは取材に対し問題を認めたうえで、悪用というより「データの誤解」だと説明しました。同社は、外部のウォレット追跡ツールがギフトを受取人による購入と誤って分類していると投稿し、取引データの表示方法の変更について、外部のアプリや開発者に事前にもっとうまく知らせるべきだったとして、対応を進めていると述べています。
追跡ツールの側では対応が分かれました。有力なNFT購入者の動きを配信するNinjalertsのCEOは、自社はブロックチェーンの生データを見ておりOpenSeaのAPIに頼っていないため影響はないと説明しました。別のツールMoby Insightsは、チェーン上の移転の読み取り方によっては誤表示の余地があったことを認め、修正版を公開したと発表しています。
OpenSeaの表示やデータが問題になったのは、これが初めてではありません。2022年1月には、画面上で見えにくくなっていた古い出品が有効なまま残り、Bored Ape Yacht ClubのNFTが以前の安い価格で買われてしまう問題が起きていました。
なぜ誤表示が起きたのか:支払った人と受け取った人
イーサリアムの取引には、取引を送信して手数料を払ったアドレス(From)と、NFTの移転先(To)が記録されています。通常の購入では両者が同じなので、「NFTを受け取った人=買った人」とみなしても問題はありませんでした。
ギフト機能では、支払ったのはAさん、NFTを受け取ったのはBさんという取引が生まれます。受取先だけを見て購入者を判断していたツールは、Bさんが買ったと表示してしまいます。そもそもNFTは、相手の同意がなくても任意のアドレスに送れます。ギフト機能がなくても、別の取引で送りつければ同じ見え方は作れました。今回の件は、その弱点を分かりやすく表に出したといえます。
逆に言えば、支払ったアドレスと受け取ったアドレスを両方確かめれば、ギフトかどうかは見分けられます。Ninjalertsが影響を受けなかったと説明したのも、ブロックチェーン上のこうした情報を直接読んでいたからだと考えられます。
見覚えのないNFTが届いたときの注意
ギフト機能の件とは別に、見覚えのないNFTが突然ウォレットに届くことは珍しくありません。多くは宣伝や詐欺を目的にした「送りつけ」で、画像や説明文に「特典を受け取る」「当選しました」などと書かれ、外部のサイトに誘導します。誘導先でウォレットをつなぎ、求められるまま署名に応じた結果、保有資産を動かせる許可を相手に渡してしまう例が後を絶ちません。
身に覚えのないNFTは、売ろうとしたり、書かれたリンクを開いたりせず、そのままにしておくのが基本です。マーケットプレイスの多くは、こうしたNFTを非表示にする機能を用意しています。受け取っただけで資産が抜かれることは通常ありませんが、その後の操作が危険の入口になります。典型的な手口はNFT詐欺の手口と見分け方で詳しく紹介しています。
その後のOpenSea(2026年時点)
- 人員削減:ギフト機能の追加直前の2022年7月14日、OpenSeaは従業員の約20%を削減しました。NFT市場の冷え込みが続いていた時期です。
- 米SECとの関係:2024年8月、CEOのデビン・フィンザー氏は、米証券取引委員会(SEC)から、プラットフォーム上のNFTが未登録の有価証券にあたるとするウェルズ通知を受けたと明らかにしました。調査は2025年2月に終了したと報じられています。
- OS2とトークン:2025年2月には、NFTと暗号資産のトークンをまとめて売買できる新しい「OS2」のオープンベータを始め、独自トークン「SEA」の発行計画を公表しました。
- SEAの延期:CoinDeskによると、2026年3月16日、フィンザー氏は3月30日に予定していたSEAの発行開始を延期すると発表しました。理由は厳しい市場環境で、新しい日程はまだ示されていません。代わりに、報酬プログラムの参加者への手数料の払い戻しや、3月31日から60日間のトークン取引手数料の無料化が実施されました。
OS2への移行の詳細はOpenSea 2.0(OS2)の解説もあわせて読んでください。
有名人の売買を参考にする前に確かめたいこと
- 支払ったのは誰か:Etherscanなどのブロックエクスプローラーで取引を開き、手数料を払ったアドレスと、代金がどこから出たかを確認します。受取人だけでは購入者とは限りません。
- そのアドレスは本当に本人のものか:本人が公式に公表したアドレスか、第三者がそう呼んでいるだけかを区別します。
- 追跡ツールのデータの出どころ:ブロックチェーンのデータを直接読んでいるのか、特定のマーケットの情報に頼っているのかで、誤りの出方が変わります。
- 一時点の売買で判断しない:有名人が買ったことは、そのNFTの価値を保証しません。
日本では、2026年7月に成立した改正金融商品取引法で、報酬を受けて暗号資産の売買について意見を述べる場合に、報酬を受けている旨の表示が義務づけられることになりました。ステルスマーケティングへの規制で、施行後はインフルエンサーの発信を読むときの目安の一つになります。制度の全体像は暗号資産と金商法の早見表を参考にしてください。
よくある質問
Q. OpenSeaのギフト機能とは何ですか?
A. NFTを購入するときに受取先のアドレスを指定し、1回の取引で別のウォレットに届けられる機能です。2022年7月29日に追加されました。
Q. なぜ有名人がNFTを買ったように見えたのですか?
A. 一部のウォレット追跡ツールが、NFTを受け取ったアドレスを購入者とみなしていたためです。ギフトとして送られたNFTも、受取人の購入として表示されていました。
Q. ウォレットの取引が本人の購入かどうかを確かめる方法は?
A. ブロックエクスプローラーで取引を開き、手数料を払ったアドレスと代金の出どころを確認します。NFTは同意なく任意のアドレスに送れるため、受け取った記録だけでは購入とはいえません。
Q. OpenSeaのSEAトークンはもう発行されましたか?
A. 2026年3月30日に予定されていた発行開始は、同月16日に延期が発表されました。新しい日程は示されておらず、2026年9月時点で発行開始は確認できませんでした。
この記事の出典
- Decrypt:OpenSea NFT Gifting Feature Raises Concerns About Mislabeled Transactions
- The Crypto Times:OpenSea NFT Gifting Feature Poses Threats of NFT Scams
- CoinDesk:OpenSea delays launch of SEA token, citing challenging crypto market conditions
- CryptoSlate:OpenSea Foundation announces upcoming SEA token amid OS2 open beta launch
- Wikipedia:OpenSea
- 金融庁:金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




