2022年7月20日、世界的な人気ゲーム「Minecraft」を開発するMojang Studiosは、ゲームのクライアントやサーバーにブロックチェーン技術を組み込むことを認めず、NFTにも対応しないという方針を公表しました。旧版の記事は「アイテムの使用禁止」と見出しを付けていましたが、実際に対象になったのは、NFTを使った改造サーバーや連携サービス全般です。
この記事では、Mojangが示した理由を整理し、最も大きな影響を受けたNFT Worldsがその後どうなったかを追います。旧版が触れていたスクウェア・エニックスの動きについても、提携先の名前などの誤りを直して紹介します。
何が発表されたか
Mojangは公式サイトの記事「Minecraft and NFTs」で、ブロックチェーン技術をMinecraftのクライアントやサーバーのアプリケーションに組み込むことは認めない、ゲーム内のコンテンツ(ワールド、スキン、アイテムなど)をNFTにすることも許可しない、という考えを示しました。前提にあるのは既存の「Minecraft Usage Guidelines」です。このガイドラインは、サーバーの運営者が参加料を取る場合のルールを定め、すべてのプレイヤーが同じ機能を使えるようにすることを求めています。NFTはこの考え方と相いれない、というのがMojangの整理でした。
記事は冒頭でNFTの仕組みも説明しており、NFTを買って手に入るのは元のファイルの所有を示すトークンであって、ファイル自体は複製も移動も削除もできること、NFTやブロックチェーンには急な値上がりと値下がりを伴う投機がつきまとうことを指摘しています。NFTを使ったスキンやワールドを売り買いしている人に向けて、特に注意を促す内容でした。
米Deseret Newsは発表の翌日、Microsoft傘下のMinecraftが、NFTは一部の人しか参加できない性質を持ち、怪しい投資として見られていることを理由に挙げたと伝えました。報道の日付から、発表は米国時間の7月20日で、旧版の記事の「7月21日」は日本時間での報道日とみられます。
Mojangが挙げた理由
Mojangの説明の中心にあったのは、次の三つの懸念です。
- 「持つ人と持たない人」を分ける:NFTはアイテムや土地に希少性を持たせる仕組みです。Minecraftが大切にしてきた「誰でも同じコンテンツで遊べる」という考えと合わないとしました。
- 遊ぶことより儲けることに意識が向く:値上がりを期待した売買や投資の感覚が広がると、ゲームを楽しむことより利益を得ることが目的になってしまう、という懸念です。
- 第三者のNFTは信頼しにくい:外部の事業者が作るNFTは、買ったプレイヤーが損をするおそれがあり、資産を管理する事業者が予告なく姿を消すこともありうるとしました。人為的に、あるいは不正に吊り上げた価格で売られた例があることにも触れています。
旧版の記事も、NFTをめぐる詐欺や盗難、行き過ぎた価格設定に触れていました。Mojangはこうした問題を、プレイヤーを守る観点から取り上げています。一方で、ブロックチェーン技術が今後どう発展するかは注視するとも書いており、技術そのものを否定したわけではありません。ただし、Minecraftに組み込む計画はないと明言しています。
直撃を受けたNFT Worlds
この方針で最も大きな影響を受けたのが、NFT Worldsというプロジェクトです。Decryptによると、NFT WorldsはMinecraftを土台にした独自サーバーを運営し、その中の土地(ワールド)をPolygon上のNFTとして販売していました。二次流通では1区画が数万ドル相当のETHで取引されることもあり、禁止の発表までに約1億6,300万ドル分の取引があったとされます。
ゲームの中でしか使えない土地のNFTは、そのゲームを動かす土台が使えなくなれば、機能の多くを失います。NFT WorldsはMinecraftの開発者と話し合いを試みましたが、共同創設者のArkDev氏は、やがて返事が来なくなったと語っています。
その後:NFT WorldsはHytopiaへ
NFT Worldsは、他社のゲームに頼るのをやめ、自前のゲームを作る道を選びました。プロジェクト名を「Hytopia」に改め、Minecraftに似たブロック状の世界に、プレイヤーがゲームを作れる仕組みを組み合わせたゲームを開発しています。
2024年3月には、ゲーム向けのブロックチェーン「HYCHAIN」のメインネットを立ち上げ、ネットワークを支えるノードの権利の販売で2,098ETH(当時800万ドル超)を集めたと報じられました。元のNFT Worldsの土地の保有者には手数料の優遇などが用意されましたが、土地の希少性を前提にした仕組みはなくなっています。
Hytopiaの公式ブログによると、2025年2月に最初のアルファ版が公開されました。同じ月の28日には、HYCHAINで他社のゲームを扱うパブリッシング事業を終了し、Hytopia自体の成長に集中すると発表しています。
同じ時期のスクウェア・エニックス
Minecraftの発表とほぼ同じ時期、スクウェア・エニックスは「ファイナルファンタジーVII」の25周年を記念したNFT付き商品を発表しました。旧版の記事は提携先を「エニックス」と書いていましたが、正しくはブロックチェーン企業のEnjinです。
報道によると、クラウド・ストライフのフィギュアに、デジタル版のフィギュアと真正性の証明を受け取れる引換券を付けた「デジタルプラス版」と、200点以上のアートを収めたトレーディングカードの実物・デジタル版が用意され、デジタルカードは2023年にEnjinのネットワークで提供される予定とされました。ゲームファンの間では反発の声も上がりましたが、同社は計画を続けています。
同じ業界でも、NFTへの向き合い方は会社によって大きく分かれていました。
ここから学べること:プラットフォームに依存するリスク
Minecraftの件は、NFTプロジェクトが「他社の土台」に乗っているときの弱さを示しました。NFTそのものはブロックチェーン上に残っても、使い道を提供していたゲームや規約が変われば、価値の前提が崩れます。
ゲームに関連するNFTを検討するときは、次の点を確かめておくと判断の材料になります。
- 誰の権利の上に成り立っているか:ゲームの開発元が公式に認めた企画か、外部の事業者が非公式に作ったものか。
- 規約でどう扱われているか:元のゲームの利用規約やガイドラインが、NFTや二次流通を認めているか。
- 運営が止まったらどうなるか:サーバーが閉じたとき、NFTで何ができるのか(表示できるだけか、ほかで使えるのか)。
- 情報の出どころ:公式サイトや公式SNSで発表されているか。
NFTを使った詐欺の典型例はNFT詐欺の手口と見分け方にまとめています。
2026年時点の状況
2026年9月までの調査では、MinecraftがNFTを認める方向に方針を変えたという公式発表は確認できませんでした。一方、NFT Worlds改めHytopiaは、Minecraftから離れた独自のゲームとして開発を続けています。
ブロックチェーンゲームの多くは、2022年以降の市場の冷え込みで計画の縮小や終了を迫られました。大手のゲームが自社の世界観や公平性を理由にNFTを締め出した判断は、ゲームにNFTを取り入れる側にとって、プレイヤーの反応を見極めることがどれだけ大切かを示す例として残っています。国内のブロックチェーンゲームの動きはブロックチェーンゲームの解説記事でも扱っています。
よくある質問
Q. MinecraftでNFTを使うことはできますか?
A. 2022年7月にMojangが示した方針では、ゲームのクライアントやサーバーへのブロックチェーンの組み込みや、ゲーム内のコンテンツのNFT化は認められていません。この方針を変えたという公式発表は、今回の調査では確認できませんでした。
Q. NFT Worldsはどうなりましたか?
A. Minecraftから離れて自前のゲームHytopiaを開発する方針に切り替えました。2024年にHYCHAINを立ち上げ、2025年2月にHytopiaのアルファ版を公開しています。
Q. Mojangが問題にしたのはどんな点ですか?
A. NFTが持つ人と持たない人を分けること、投資目的の売買で遊ぶことより儲けることが目的になること、外部のNFTは信頼できず、管理者が消えたり不当に高い価格で売られたりするおそれがあることです。
Q. スクウェア・エニックスのFF7のNFTは何でしたか?
A. 25周年を記念して、フィギュアやトレーディングカードにデジタル版を付けた商品です。提携先はブロックチェーン企業のEnjinでした。
この記事の出典
- Minecraft:Minecraft and NFTs
- Deseret News:Minecraft owner Microsoft bans NFTs
- Decrypt:Minecraft Banned NFTs—So 'NFT Worlds' Built Its Own Crypto Game Instead
- The Block:Minecraft-inspired crypto game Hytopia launching beta after $8 million node sale
- HYTOPIA Blog:February Update: Alpha Launch
- Nintendo Life:Square Enix Confirms It's Making Final Fantasy NFTs
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




