NFTの世界では、取引の歴史が長く時価総額の大きいコレクションを「ブルーチップNFT」と呼びます。株式市場で優良大型株を指す言葉を借りたものです。2022年の前半、こうしたコレクションは相場全体が崩れる中でも比較的しっかりしていると見られていましたが、春以降は値下がりを避けられませんでした。
旧版の記事は、ブルーチップNFTの規模が「2022年4月29日に14,900ETH近く、6月13日に9,331ETHまで下落」したと書き、PFP(プロフィール画像用)NFTの市場価値や保有者数の数字も挙げていました。ただし出典が示されておらず、今回の調べでもこれらの数字を一次情報で確かめることはできませんでした。この記事では、確かめられる事実を中心に当時の相場と盗難対策の動きを振り返り、2026年時点の状況と合わせて整理します。
ブルーチップNFTとは何か
明確な定義はありませんが、一般には次のような条件を満たすコレクションがブルーチップと呼ばれてきました。
- 発行から一定の年月がたち、取引が途切れずに続いている
- 時価総額(発行数×フロア価格)が大きく、取引高も多い
- 保有者が多くのアドレスに分散している
- 運営やコミュニティが続いており、知名度が高い
2022年当時によく名前が挙がったのは、CryptoPunks、BAYC(Bored Ape Yacht Club)、Azuki、Clone X、Doodlesといったコレクションです。旧版で名前が出ていたCyberKongzも、初期から続く有力なコレクションの一つに数えられていました。
分析会社のNansenは、時価総額の大きいコレクションを集めた「Blue Chip-10」などの指数を公表していました。暗号資産メディアCointelegraphの2022年4月11日の記事によると、Nansenは同年第1四半期の報告書で、ブルーチップの分野がNFTの中で最も値動きが小さかったと分析しています。
2022年に何が起きたか:春の高値からの下落
同じCointelegraphの記事によると、Nansenの幅広いNFT指数「NFT-500」は、2022年の年初から3月末までにイーサリアム建てで103.7%、ドル建てで82.1%上がっていました。この時点では、NFTは暗号資産全体より強い動きを見せていたことになります。
流れが変わったのは4月以降です。5月にはステーブルコインのTerraUSD(UST)とLUNAが崩壊し、6月には暗号資産の貸付業者が相次いで出金を止めました。資金がNFTにも入りにくくなり、代表的なコレクションの価格や取引高は第2四半期に大きく下げました。ブルーチップはNFTの中でも資金が集中していた分野だったため、下落の影響も大きく受けました。
旧版が挙げたCyberKongzの価格調整が下落の主因だったという説明についても、裏づけとなる資料は見つかりませんでした。個別のコレクションの動きより、暗号資産市場全体の資金の引き揚げが大きかったと見るのが自然です。
投資家心理:損失と参加者の増加が同時に起きた
2022年の夏には、NFTを売って損失を出す人が増える一方で、NFTに関心を持つ人はそれほど減らないという、ちぐはぐな状況が見られました。旧版は「6月に50%以上の投資家が損失を出した」「6〜7月に50万人が常時参加した」と書いていますが、これらの数字の出典は確認できませんでした。
こうした局面では、次のような心理が働きやすいことが知られています。
- 損を確定したくない気持ち:買値を下回ると売れずに持ち続け、下落が長引くほど判断が遅れる。
- 有名コレクションなら安全という思い込み:ブルーチップという呼び名が、値下がりしにくいという印象を生む。
- 乗り遅れへの不安:下落局面でも、話題の新しいコレクションに資金を移してしまう。
ブルーチップという言葉は、過去の取引実績を表すものであって、将来の価格を約束するものではありません。
OpenSeaの盗難品ポリシーはどう変わったか
参加者が増えるにつれて、NFTの盗難も大きな問題になりました。最大手のマーケットプレイスOpenSeaは2022年8月11日、盗まれたNFTの報告の扱いを見直すと発表しました。
Cointelegraphによると、それまで警察への被害届は争いが大きくなった場合にしか使っていませんでしたが、この変更で全ての盗難報告の確認に使うことになりました。報告から7日以内に被害届が出されなければ、偽の報告を防ぐため、対象のNFTの売買を再び可能にします。OpenSeaは、盗品とは知らずに買った人が不利益を受ける例があったことを認め、利用者の意見を受けて改めたと説明しています。
2026年7月27日に更新されたOpenSeaのヘルプページでは、仕組みがさらに具体的になっています。
- 地元の警察か、米連邦捜査局(FBI)のインターネット犯罪苦情センター(IC3)に被害を届け、その書類を添えて報告する
- 確認されたNFTはOpenSea上で取引できなくなり、「不審な活動」の印が付く
- 取引停止は90日間で、捜査機関からの要請がなければ自動的に解除される
- 解除後も最長12か月、所有権に争いがあることを示す表示が残る
ただし、NFTそのものはブロックチェーン上にあり、OpenSeaが預かっているわけではありません。ヘルプページも、盗まれたNFTを取り戻したり、他のマーケットプレイスでの売買を止めたりすることはできないと明記しています。
その後どうなったか:縮んだ市場と残った指標
NFT市場は2022年の後半から長い縮小期に入りました。2026年6月のcrypto.newsの報道に出てくる数字では、年間の取引高はピークだった2022年の500億ドル超に対し、2025年は約55億ドルにとどまりました。2025年の第4四半期は12.5億ドルで、前の四半期から28%減っています。
取引の舞台も変わりました。大手の暗号資産取引所が運営していたNFTの販売所は相次いで閉じられ、2026年7月にはバイナンスも取引所内のNFTマーケットプレイスを終えています。売買の中心は、OpenSeaのような専門のマーケットプレイスや、ウォレットに組み込まれた取引機能に移りました。
2026年時点でも、CryptoPunksやBAYCのように発行から年数を重ねたコレクションは取引が続いていますが、2022年春の水準からは大きく離れています。個々のコレクションの現在のフロア価格は日々変わるため、この記事では扱いません。確かめるときは、マーケットプレイスの表示と合わせて、保有者の分布や実際の取引件数も見てください。
読者が知っておくべきこと:盗難を防ぐ基本と税の扱い
OpenSeaのルールが示すとおり、盗まれたNFTを取り戻すのは難しく、予防が最も大切です。
- ウォレットの復元フレーズは誰にも教えず、オンラインに保存しない
- 知らないサイトで「承認(Approve)」や「全て承認(setApprovalForAll)」を求められたら署名しない
- 高額なNFTは、日常の取引に使うウォレットとは別のウォレットで保管する
具体的な対策はウォレットの安全対策の基本、OpenSeaが以前導入した凍結機能は盗難を防ぐFreeze機能の記事で解説しています。
日本では、NFTの売却で利益が出れば所得税の対象になり得ます。損失が出た場合に他の所得と通算できる範囲には制限があるため、取引の記録は残しておきましょう。考え方はNFTの課税区分の解説にまとめています。被害に遭ったときの日本国内の相談先は詐欺の相談窓口の一覧を参照してください。
よくある質問
Q. ブルーチップNFTなら値下がりしにくいのですか?
A. ブルーチップは取引の実績や知名度を表す呼び名で、値下がりしないことを意味しません。2022年春以降はブルーチップと呼ばれたコレクションも大きく値を下げました。
Q. NFTを盗まれたらOpenSeaは取り戻してくれますか?
A. OpenSeaはNFTを預かっていないため、取り戻すことはできません。警察などへの被害届を添えて報告すれば、OpenSea上での取引を90日間止め、印を付ける対応をとります。
Q. 日本の警察の被害届でもOpenSeaに報告できますか?
A. OpenSeaのヘルプページは、地元の警察かFBIのIC3への届け出を求めています。日本の警察の書類で受け付けられるかは明記されていないため、提出前にOpenSeaのサポートで確かめてください。
Q. 旧版にあった「14,900ETH」などの数字は正しいのですか?
A. 出典が示されておらず、今回の調べでは一次情報で確かめることができませんでした。この記事では確認できた数字だけを使っています。
この記事の出典
- Cointelegraph:Blue Chip and Metaverse NFTs propel growth of NFT market, says Nansen report
- Cointelegraph:OpenSea introduces new stolen item policy to combat NFT theft
- OpenSea Help Center:What is OpenSea's stolen item policy?
- crypto.news:Binance shuts down NFT marketplace amid prolonged market downturn
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




