amazarashi『スターライト』とDorako『Polaris』が俺の感性をビンビンに刺激して鳥肌。

はじめに

 2010年代の半ば頃だっただろうか。
 当時20代だった自分は、あるバンドに熱烈にハマっていた。
 青森出身のロックバンド、amazarashiである。

 amazarashiの何が良いかと聞かれたら、やはりずっしりと重厚感のある歌詞だと思う。
 音楽に乗った一言一言に、唯一無二と言っても過言ではないきりきりとした切迫感と激情と美しさがある。それに心を震わされて、打ちのめされるのだ。

 作詞作曲を担当するフロントマン・秋田ひろむはおそらくあと100年生まれるのが早ければ、国語の教科書に載る文豪になっていたんじゃないかと思う。

 そんな彼らの音楽の中で、特に好きだったのが『スターライト』という曲だった。

 夜空が目の前に浮かんできそうな表現力。
『銀河鉄道の夜』の流れを汲むような、物語性の高い歌詞とMVによって描かれる壮大な星空が広がるような世界観。
 そして、エモーショナルな歌声から放たれる、力強いメッセージ性。

 今でもふと思い出して聴き直すと感動するし、一時期は本当に狂ったように聴いていた楽曲である。

 ……と、ここまでが前置き。

 長くなって申し訳ないが、何でNFTの記事でamazarashiの話をしたかというと、この『スターライト』の世界観と自分の中で見事に共鳴して、初見で鳥肌が立ったNFTコレクションを見つけてしまったからだ。

 それこそが、Dorakoさんの描く星のカケラを探す旅の物語『Polaris』
である。


 『Polaris』の世界観を結びつける「言葉」

 これら2つの作品には世界観とテーマの親和性もあるが、スターライトをはじめとしたamazarashiの楽曲とPolarisの重要な共通点として、『言葉の重み』がある。

 音楽とイラスト、どちらも言葉を主としない表現方法でありながら、世界観を構築する上で言葉の占めるウエイトが非常に大きい。
 それはamazarashiならば音楽に乗せた歌詞が大きな魅力になっているが、Polarisではロードマップとdiscriptionに刻まれた言葉が、世界観を彩る大事な要素になっている。  

まず、ロードマップにある序章を見てほしい。

PROLOGUE OF THE STORY OF “POLARIS.” by Dorako

 そこは、緑豊かな美しい惑星。
 たくさんの生き物たちが一緒に助け合いながら暮らしていた。
 その空の真ん中にあるひときわ輝く星 「ポラリス」。
 ポラリスの輝きは星の歯車を回転させ、人々はその力をエネルギーに変え、たくさんの技術を発展させてきた。
 より効率的にポラリスの力を利用するため、人々は 「星の塔」を造り、天へ天へと高くしていった。 
 暮らしはどんどん豊かになり、たくさんのエネルギーはなくてはならないものとなった。
 ある日突然、 ポラリスは砕け、輝きを失った。 カケラが世界中に飛び散った。 エネルギーを失った人々は混乱に陥った。
 星の歯車が止まり、 夜が明けぬ世界。
 星の塔からほど遠い、 小さな村に住む少年、 ノヴァ。 不思議な星のカケラを持った小さな子熊、 カブ。
 二人は出会い、一緒に星のカケラを探す旅に出る。 昼を取り戻すために、 家族のもとに帰るために。

 正直、自分はこの序章を読んだだけでワクワクした。もうこの言葉だけで展開される導入から、ゲームが1本作れそうなくらいの壮大なスケールを感じ取れる。

 そして、序章に惹かれてopenseaのコレクションページを開いてみると、作品ごとのdiscription欄も他では類を見ないくらいに分厚い。例えば、自分が保有するPolarisの『chapter01_#08 Centaurus』のdiscriptionは、こうだ。

 ライオンの言っていたことを、ケンタウルスに伝えた。 「確かに、人々が星の力を使いすぎたことは一つの要因だろう。星の力を失った今、塔のある都でも混乱が生じている」 「カケラを集めても、星は元に戻らないのかな…。」 「わからない…星が砕けた原因を突き止めなければ。 星の塔まで私が案内しよう。穏やかな時を取り戻すため、共に行こう。 だから安心して、今日は眠るといい。」 不安でいっぱいだった心の中にほんのりと温かな光が灯った。ノヴァはそのまま眠りについた。

 それぞれlistされたイラストのdiscriptionには、このように序章からさらにもう一歩踏み込んだ物語が断片的に展開されている。
 それぞれの物語は点だが、ナンバリングの順番で見ていくと紡がれた物語が線で結ばれていくのがわかる。それこそ、まさに点と線が繋がって輪郭を形作る星座のように。

 Polarisの作品群に触れたときには、イラストはもちろん、是非discriptionもじっくり読み込んでほしい。きっと、他のNFTコレクションにはない物語としての奥深さを感じられるはずだ。

最後に

 NFTの界隈は、表現の自由度が高い世界だと思う。
 現在の主流はジェネラティブやPFP要素の強いイラストだが、それ以外の一枚絵はもちろん、音楽や漫画、3DCGなどのNFTも存在していて、それはそれで一定の評価を得られる土壌がある。

 そんなNFTで、イラストならイラスト、音楽なら音楽と1つの分野を極めて表現するのも悪くない。
 しかし、やっぱりイラスト×言葉などの表現の手段を掛け算できるアーティストはシンプルに表現の幅が広がるし、世界観が相手に伝わりやすい利点もあって強い。おそらく、下手なロードマップを作るよりもよっぽど伝わると思う。

 クリエイターの読者は、せっかくNFTのフィールドで活動するなら是非カテゴリの枠に囚われ過ぎず、それこそ新たな表現方法に次々チャレンジするくらいの勢いでNFTの世界を遊び尽くして欲しい。そしてコレクターの読者は流行りのプロジェクト系を追うだけではなく、そんな意欲的な個人クリエイターのコレクションにも一度目を向けてみてはいかがだろうか?

 ちなみに、『Polaris』のコレクションは現在、物語が新たな局面を迎えようとしている。これまでの第一章から一転、夜が訪れなくなった表裏一体となる世界の物語が始まっている。こちらも注目してみてほしい。

 ではまた。

Author:染島ユースケ

関連記事

ページ上部へ戻る