2022年11月、NFTの用途として注目されたものの一つが、長いウォレットアドレスに覚えやすい名前を対応させる「NFTドメイン」でした。当時の記事ではENS、Unstoppable Domains、Decentraland Names、.bit、EDNSの5つを紹介しましたが、これらは同じサービスを名前だけ変えて提供しているわけではありません。
更新の必要性、名前を管理する仕組み、対応アプリ、仮想空間での使い方には違いがあります。古い取引高の順位ではなく、実際に何ができるのかという視点で読み直します。以下の説明は2026年9月27日に確認できた公式文書をもとにしており、2022年当時の仕様と現在の説明を区別しています。
NFTドメインを持つと何ができるのか
ブロックチェーンの名前サービスは、人が読みやすい文字列と、送金先アドレスやプロフィールなどの情報を関連づける仕組みです。対応するアプリがその名前を照会し、設定された情報を読み出します。名前を取得しただけで、全てのウォレットやブラウザーが自動的に対応するわけではありません。
ここでいう「ドメイン」は、一般的なウェブサイトの.comなどと同じ意味で使えるとは限りません。通常のDNSでは、IANAが説明するルートゾーンなどの階層を通じて名前を扱います。ブロックチェーン上で名前が登録できることだけでは、標準的なDNSで同じ文字列が解決できる証明にはなりません。
例えば、対応ウォレットで送金先の別名として使えても、ブラウザーに入力してサイトへアクセスするには別の対応が必要な場合があります。アプリが表示した名前と、最終的な送金先アドレスやネットワークを照合することが大切です。また、名前を管理する権限を得ることは、結び付けた画像や文章の著作権を取得することでもありません。
ENSは.ethの登録期間と更新を理解する
Ethereum Name Service(ENS)は、.ethの名前などとアドレスを対応させる仕組みです。公式FAQでは、名前の保有に使うアドレスと、その名前が指す送金先アドレスを別にできると説明しています。所有者と送金先が必ず同じとは限らない点は、名前を譲り受ける場合にも押さえておきたい特徴です。
.ethの登録には期間があり、公式FAQは更新を忘れた場合に90日間の猶予期間があるとしています。その後は他の人も登録できる段階へ進みます。「NFTだから一度買えば期限がない」と理解していると、名前を使い続ける条件を見落とします。購入価格を見る際も、選んだ期間と更新の予定を含めて考える必要があります。
ENS対応という表示があるアプリでも、どのネットワークのどの記録を利用できるかは確認が必要です。送金先の別名として使うのか、プロフィールを表示するのか、コンテンツへの参照として使うのかによって、求める対応が違います。保有しているNFTの表示ができることと、その名前による送金ができることも分けて確認してください。
Unstoppable Domainsは商品ごとに料金体系が異なる
Unstoppable Domainsは、ブロックチェーン上の名前に加えて、現在は通常のDNSドメインも扱っています。同社の公式GitHub紹介には、オンチェーンのNFTドメインを一度の購入で提供し、更新料が不要であるという説明があります。一方、DNSドメインについては別に登録と更新の公式ヘルプが用意されています。
したがって、サービス名だけを見て「ここで買う名前は全て永久に更新不要」と一般化できません。.comなどのDNSドメインと、独自のオンチェーンの名前では、維持の条件が異なります。決済ページで対象となる種類を読み、登録期間、自動更新の有無、失効時の扱いを確認する必要があります。
同じ事業者の画面で名前を管理できると、仕様まで同じに見えやすいものです。さらに通常のDNSドメインをトークン化する説明もあり、「NFTとして扱えるか」と「DNSの更新義務があるか」は別の問いになります。名前の種類を把握した上で、使いたいウォレットがその末尾に対応しているかを調べると、購入後の行き違いを減らせます。
Decentraland Namesは仮想空間内の名前として読む
DecentralandのNAMEは、仮想空間でのアバターの識別と結び付いた名前です。公式のDecentraland 101は、NAMEをアバターに設定することや、ENSネットワークの一部でもあることを説明しています。単に短い送金先の文字列を取得するサービスとしてだけ紹介すると、仮想空間で使うという中心的な用途が抜け落ちます。
現在の公式案内では、NAMEとWorldsという個別の仮想空間との関係も説明されています。Worldsの技術文書には、名前に対応する.dcl.ethの形式を用いて空間へ入る例があります。ただし、この使い方から一般的なウェブサイトのDNSドメインと同一だと考えることはできません。
Decentralandを利用する人なら、自分のアバターや公開する空間に名前を付ける意味があります。一方、目的が特定ウォレットでの送金先の簡略化だけなら、そのウォレットがどの形式を解決できるかを先に調べる方が確実です。用途の異なる名前を同じ売買ランキングで比べても、自分に必要な機能は見えてきません。
.bitとEDNSはそれぞれの実装・管理方法を確認
.bitについて、公式のJavaScript SDKはアカウントの所有者や管理者、アドレス、プロフィールなどの記録を照会・管理する機能を説明しています。また、CKBによる登録機能も記載されています。旧記事のようにEthereum上のNFTコレクションの一つとしてのみ説明すると、実装や操作の前提を取り違えるおそれがあります。
名前をどの鍵で管理するか、どの情報を公開するか、利用先のアプリがその記録を読めるかは、それぞれ確かめる必要があります。識別子が複数の用途を持てるという説明は、各サービスが全て連携済みであることの証明ではありません。本記事では、.bitの現在の全登録経路や料金体系まで一律に確定していません。
EDNSは現在、公式ヘルプでEDNS 2.0を案内しています。管理型ウォレットから個人ウォレットへのドメイン移転、クロスチェーンの名前、拡張機能や外部サービスとの連携などを別項目で説明しています。その構成からも、どの機能をどのアプリで使うかを個別に読む必要があります。「ほとんどのウォレットで使える」といった旧記事の包括的な表現を裏付ける確認はできませんでした。
両サービスとも、公式文書が存在することだけで、全ての登録や移転を本記事が実機検証したことにはなりません。実際の操作に進むなら、現在の画面に示される対応チェーン、管理権限、費用を確認する必要があります。古い手順を現在のウォレットへ機械的に当てはめないでください。
取引高の比較よりも、使い道と維持条件をそろえる
2022年のNFT市場では、コレクションの取引高や保有者数が注目度の指標としてよく使われました。しかし名前サービスを比較する際、一次登録数、二次売買の金額、ウォレット数、実際に名前を利用する人の数は異なります。一人で複数の名前を持てるため、登録数の多さをそのまま利用人口と読むこともできません。
まず「送金先を覚えやすくしたい」「仮想空間の名前がほしい」「普通のウェブサイトを公開したい」のどれが目的かを決めると、比較が具体的になります。その上で、使うアプリの対応、登録と更新にかかる費用、鍵を失った場合の扱い、手放す場合に残る情報を調べます。NFTの転売価格だけでは、これらの条件は分かりません。
また、名前を第三者へ移すときは、以前のプロフィールや送金先が残っていないかにも目を向ける必要があります。読みやすい文字列である分、利用者が名前を信用し、設定先を見ずに操作する可能性があるからです。NFTドメインの利便性は、名前を保有することだけで完成せず、正しい記録と対応アプリ、継続的な管理がそろって初めて生かせます。
よくある質問
Q. NFTドメインは全部、更新料が不要ですか。
A. 違います。.ethには登録期間と更新があります。Unstoppable Domainsでもオンチェーンの商品とDNSドメインでは条件が異なります。
Q. 買った名前はどのブラウザーやウォレットでも使えますか。
A. 名前サービスとアプリ双方の対応が必要です。NFTが一覧に表示されるだけでは、名前による送金やサイト表示まで対応しているとは分かりません。
Q. 2022年の取引高の順位でサービスを選べますか。
A. 当時の売買状況と現在の使い道は別です。二次流通の金額だけでなく、利用目的、対応先、費用や更新条件をそろえて比較してください。
この記事の出典
- ENS:公式FAQ
- Unstoppable Domains:公式GitHub組織紹介
- Unstoppable Domains:DNSドメイン購入・登録の案内
- Unstoppable Domains:ドメイン更新の案内
- Decentraland:Decentraland 101
- Decentraland:Worlds Overview
- .bit:公式JavaScript SDK
- EDNS:公式ヘルプとEDNS 2.0
- IANA:DNSルートゾーン管理
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




