2022年11月の「NFT人気10選」はその後どうなったか|FTX破綻直後の記録

旧版の記事は2022年11月11日、バイナンスによるFTX買収の撤回で市場が揺れる中、「現在買う価値のあるNFTプロジェクト10選」として、直近24時間の売上が多かったコレクションを並べていました。CryptoPunksやBAYC(Bored Ape Yacht Club)、村上隆氏が関わったCloneX、日本のCryptoNinja Partners(CNP)などです。

しかし、ある1日の売上が多いことは、そのコレクションに長く価値があることを意味しません。むしろ相場が急変した日には、手放したい人の売りで取引額が膨らむこともあります。この記事は購入をすすめるものではなく、当時の10件がその後どうなったかを記録として整理し、旧版の誤りを正したうえで、売上ランキングをどう読めばよいかをまとめます。

当時のランキングは何を示していたか

旧版の記事が並べた10件と、当時の説明の要点は次のとおりです。数字は旧版に記載されたもので、出典が示されていなかったため、本稿では個別の検証はできませんでした。

順位 コレクション チェーン
1 CryptoPunks イーサリアム
2 Bored Ape Yacht Club イーサリアム
3 Mutant Ape Yacht Club イーサリアム
4 Otherdeed for Otherside イーサリアム
5 CloneX イーサリアム
6 Moonbirds イーサリアム
7 Smol Joes Avalanche
8 Rich Peon Poor Peon Avalanche
9 Azuki イーサリアム
10 CryptoNinja Partners(CNP) イーサリアム

旧版は「時価総額」として金額を示していましたが、NFTの時価総額は多くの場合、最も安い出品価格(フロア価格)に発行数を掛けた目安にすぎません。実際にその金額で全部が売れるわけではない点に注意が必要です。また、チェーンが違うコレクションの売上を、ETHとAVAXという別の通貨の単位で並べて比べることにも限界があります。

当時の市場の事情も見ておく必要があります。FTXの破綻で暗号資産の価格が急落すると、手元の資金を確保するためにNFTを売る人が増えました。さらに2022年10月には、手数料を取らずに取引量に応じた報酬を配るマーケットプレイスBlurが始まり、報酬目当ての売買も取引額を押し上げていました。こうした要因が重なった時期の「売上上位」は、人気の強さだけを表すものではなかったのです。

旧版の誤りと補足

  • CryptoPunksの運営:旧版は「Larva Labs社のNFTシリーズ」と書いていましたが、Larva Labsは2022年3月に権利をYuga Labsへ売却しており、記事の時点ではYuga Labsの管理下にありました。
  • CloneXの制作:村上隆氏とRTFKTによるコレクションという説明は正確ですが、RTFKTは2021年12月からナイキの傘下にありました。
  • CNPの数量:旧版の「22,222のCryptoNinjaサブワード」は意味が通じない訳で、CNPは22,222点のキャラクター画像からなるコレクションです。
  • 「弱気相場にもかかわらず繁栄」:CNPの価格が24時間で上がったことを根拠にした表現でしたが、1日の値動きから長期の強さは判断できません。

2026年までに何が起きたか(イーサリアムの大型コレクション)

CryptoPunks:2025年5月、Yuga Labsはこのコレクションの知的財産権を、デジタルアートの保存を目的とする非営利団体に譲りました。運営が営利企業から非営利の組織に移ったことで、商業的な展開よりも作品の保存が重視されるようになっています。

BAYC・MAYC・Otherside:いずれもYuga Labsのコレクションです。米SECは2022年からYuga Labsを調べていましたが、同社は2025年3月3日、SECが調査を終えたと公表しました。仮想世界Othersideは、その後も開発が続けられていると報じられています。フロア価格は2022年の水準から大きく下がり、2026年春の報道でも、NFT市場全体の取引額や利用者は縮小傾向にあると伝えられています。

Moonbirds:運営していたPROOFから2024年にYuga Labsへ移り、2025年には別のゲーム会社Orange Cap Gamesへ売却されたと報じられています。2026年1月にはSolana上で関連トークンが発行されたとの報道もあります。

Azuki:2025年1月、コミュニティのトークン「ANIME」を発表し、保有者への配布が行われました(Animecoinの記事)。

CloneXとRTFKTの終幕

10件の中で最も劇的な変化があったのがCloneXです。親会社のナイキが2024年12月にRTFKTの閉鎖方針を公表し、RTFKTは翌2025年1月に活動を終えました。発表の直後にはCloneXの売りが相次いだと報じられています。

さらに2025年4月には、作品の画像を配信していたサーバーの契約上の問題から、CloneXの画像が一時的にマーケットプレイスで見られなくなりました。運営側は、作品データを分散型の保存サービスへ移すと説明しています。同じ月には、RTFKTのNFTの購入者がナイキを相手に米国で集団訴訟を起こしたと報じられましたが、これは原告側の主張で、判断は確認できませんでした。

大手企業の傘下にあることは安心材料に見えますが、事業の継続まで約束するものではありません。運営が撤退したとき、保有者に何が残るのかを事前に考えておく必要があります。

Avalancheの2件と日本のCNP

AvalancheのSmol JoesとRich Peon Poor Peonは、2022年当時、Avalanche上のNFTとしては取引が多いコレクションでした。ただし、2024年以降の運営状況や大きな動きについて、公式発表や主要な報道は今回の調べでは確認できませんでした。規模の小さなチェーンのコレクションは、情報が少なく、状況を追いにくいことも覚えておきたい点です。

CNPは、日本のNFTコミュニティ「Ninja DAO」から生まれたコレクションです。その後は、キャラクターを使ったグッズやイベント、自治体との連携など、NFTの売買以外の場でキャラクターを広げる活動が報じられています。NFTの価格とは別に、キャラクターのブランドとして育てる道を選んだ例と言えます。関連する動きはCNPと忍者IPの展開を扱った記事でも紹介しています。

売上ランキングの読み方

今回の10件を振り返ると、売上ランキングを見るときに次の点が大切だとわかります。

  1. 売上の中身:取引額が多いのは、買いたい人が多いからなのか、売りたい人が多いからなのか。相場の急変時は後者のこともあります。
  2. 取引の件数と参加者の数:少数の高額取引や、同じ人どうしの売り買いで数字が膨らんでいないか。
  3. 運営の体制:誰が権利を持ち、運営が撤退したら作品データや特典はどうなるのか。
  4. 期間:24時間の数字ではなく、数か月から数年の推移を見る。

NFTの評価の視点はプロジェクト分析の5つの指標でも整理しています。日本の居住者がNFTを売って利益を得た場合は、原則として課税の対象になる点も忘れないでください。

よくある質問

Q. この10件のNFTは今買う価値がありますか?

A. この記事は購入をすすめるものではなく、投資の助言もしません。当時のランキングは1日の売上にもとづくもので、長期的な価値を示すものではありませんでした。

Q. CryptoPunksは今誰が管理していますか?

A. 2022年3月にLarva LabsからYuga Labsへ権利が移り、2025年5月にはYuga Labsからデジタルアートの保存を目的とする非営利団体に知的財産権が譲られました。

Q. CloneXはRTFKTの閉鎖後どうなりましたか?

A. RTFKTは2025年1月に事業を終えました。同年4月には作品画像が一時的に表示されなくなり、運営側は分散型の保存サービスへの移行を説明しました。NFT自体はブロックチェーン上に残っています。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。