3月31日の暗号資産:ETH清算リスクとStrategy、VC調達

2025年3月31日朝の暗号資産市場では、ETHを担保にした大口借入れへの警戒と、企業・投資家による資金投入の動きが交錯していた。Strategyの追加購入を連想させる投稿、ベンチャーキャピタルの調達計画、TRUMPの買い直しも報じられている。清算が近いという観測と清算の実行、資金調達の目標と完了は、それぞれ違う。本稿では当時の五つの話題を、その違いがわかる形で整理する。

ETH担保の大口借入れは清算価格への接近が焦点

3月30日のPANewsは、オンチェーン分析者のai_9684xtpa氏による観測として、二つの大口ポジションが清算に近づいていると報じた。同報道が示した清算価格の推計は、片方が1,786.65ドル、もう片方が1,781.99ドルだった。これはその時点の担保と借入れを前提にした数字であり、ETHの市場価格全体に設定された下限ではない。

最初のアドレスについては、6万4,792WETHを担保に6,809万DAIを借りていると伝えられた。担保資産の値下がりが進めば、借入れを支える余裕は小さくなる。一方、返済や担保追加が行われれば、同じアドレスでも清算される条件は変化する。アドレスの一部と価格だけを見て、その後も同じ条件が続いたと考えることはできない。

続報では、取引所でETHが1,786ドルまで下がった際にも、Makerの対象ポジションはまだ清算されていないと分析された。理由として挙げられたのが、価格の反映を遅らせるOSM(オラクル・セキュリティ・モジュール)だ。取引所で瞬間的についた値段と、借入れシステムが判定に使う価格には差が生じ得る。市場価格が推計上の清算水準を下回ったという情報だけでは、清算完了とは判断できない。

MakerのOSMの公開実装にも、現在の価格と次に適用する価格を分け、時間を置いて更新する仕組みがある。価格更新の遅延は、借入人の損失を保証する制度ではない。下落が続いて参照価格に反映されれば条件は厳しくなるため、ニュースを読む際には観測時刻、参照価格、返済などの更新を一緒に見る必要がある。

Saylorの投稿は追加購入の示唆として受け止められた

Strategyの共同創業者Michael Saylor氏は3月30日、ビットコインの保有推移を示す画像とともに、オレンジ色がさらに必要だという趣旨の短い投稿をした。Coinciergeなどの同日報道は、過去の購入発表前にも似た投稿があったことから、追加取得への示唆として紹介した。オレンジ色はビットコインや、保有推移の図にある購入の印と結びつく表現だ。

ただし、その投稿自体には、新たに何BTCを、いくらで、いつ取得したかという詳細はない。投稿への期待を、そのまま会社の購入完了の発表へ置き換えることはできない。3月31日朝の段階で記事に書けるのは、画像が共有され、それが追加購入を期待する材料になったというところまでである。

それ以前の確定情報として、Strategyは3月24日に6,911BTCの取得と、保有量50万6,137BTCを発表していた。今回の投稿と、この既発表の取得実績は分けて扱う必要がある。企業の保有状況を比較する場合も、同じ基準日の数字を用いなければ、古い残高と新しい取得額を重ねて数えてしまう。

また、企業による買い入れと、個人がその企業の株式を買うことは同じ取引ではない。会社の資金調達には株式や債券などの条件があり、保有BTCが増えても、株主一人当たりの経済的な持分が同じ割合で増えるとは限らない。今回の投稿の注目度と、投資対象としての評価は別の問題として読むのが自然だ。

Cornerstoneの2億ドルは第二ファンドの調達目標

インドのCornerstone Venturesは、第二ファンドについて2025年末までに2億ドルの最終クローズを目指していた。3月29日のInc42による取材記事では、1月の初回クローズが4,000万ドル、その後に国内機関やファミリーオフィスから2,000万~3,000万ドルを追加で集めたと説明されている。4月にはさらに1,000万~1,500万ドルを集めたいという見通しも示された。

2億ドルという見出しの数字は目標であり、その全額をすでに確保したという発表ではない。さらに、資金調達と投資先への払込みも別の段階である。同記事では、第二ファンドから非上場企業の上場前ラウンドへ最初の投資を行ったとされるが、投資先の社名は明らかにされていない。目標額全体が市場へ投入されたと読むことはできない。

対象は企業向け技術を中心に、物流、ヘルスケア、金融サービス、小売や電子商取引を支える事業など幅広い。Web3や量子コンピューティングも一部の投資対象に含まれるが、暗号資産だけの専用ファンドではない。この点を省くと、2億ドルがすべてトークン購入に向かうかのような誤解が生じる。

新興企業への出資は、サービス開発や事業拡大のための資本を供給する。暗号資産取引所での売買高とは性質も時間軸も違うため、短期の相場下落と資金調達の進展は両立する。今回のニュースは、当日の価格の予測材料というより、企業向け技術への投資計画を知る情報として位置づけられる。

TRUMPの大口買い直しは約341万USDCと報道

3月30日、Onchain Lensの投稿を引用した報道で、ある大口アドレスが33万3,664TRUMPを約341万USDCで購入したことが伝えられた。平均価格は約10.22ドルとされる。同じ観測では、そのアドレスは過去のTRUMP取引で合計約1,572万ドルの損失を出していたと説明された。いずれも分析者が追跡した範囲での取引と損益の推計である。

金額と枚数には丸めがあるため、報道された単価との間に細かな差が出ても、直ちに矛盾とは言えない。一方、過去の損失額を評価するには、どの取引を合算したのか、ほかのウォレットや取引所で反対方向の取引をしていないかといった情報も関わる。公開アドレスの履歴が、その運用者の全資産を表しているとは限らない。

今回の買い直しから、損失を取り戻すためだった、底値を確信した、といった意図まではわからない。確認できる購入行動と、本人の動機に関する推測を分ける必要がある。大口の注文が一件見つかったことも、多数の保有者が同じ方向へ動いた証拠にはならない。

同じ銘柄を買い増すと、保有数量や平均取得価格が変わる一方、その銘柄の値動きにさらされる金額も変わる。過去の損失が大きい人が再度買ったという事実は、次の取引が成功する根拠にはならない。このニュースが示すのは特定アドレスの再参入であり、TRUMP全体の将来価値や運用者の判断力を証明するものではない。

Vitalikの動画への反応には批判と好意的な声が混在

Ethereum共同創設者Vitalik Buterin氏が、四足のロボットの前で猫の鳴き声のような声を出す短い動画が広まり、SNS上で反応が相次いだ。3月30日のCointelegraphは、ETHを保有する人々が、同氏への期待と価格への不安を重ねてコメントする様子を紹介している。

ここで見落とせないのが、反応は一様な批判ではなかった点だ。Cork Protocolの共同創設者Phil Fogel氏は、自分の仕事や資産がButerin氏に大きく関わっているという趣旨を述べる一方、そのやり取りを好意的に受け止め、強気だとも表現していた。この後半を省いて同氏を批判者の一人に数えると、発言の意味が変わる。

同報道は、ETHが前年12月の4,000ドル水準から大きく下落していたという背景も紹介した。しかし、数カ月にわたる価格変動と、短い動画の拡散が並べて書かれていることは、動画が下落を引き起こした証拠にはならない。個人の振る舞いをめぐる冗談や不満と、ネットワークの利用状況や開発の進展は分けて考えたい。

SNSの反応は当時の雰囲気を知る材料になるが、抜き出された数件の投稿でコミュニティ全体の意思を示すことはできない。今回の動画は、価格が弱い時期には技術以外の話題にも不安が投影されやすいことをうかがわせる。清算価格や企業の取得実績のような数値情報と、こうした反応を同じ確度の材料として扱わないことが、当日のニュースを読み解く助けになる。

よくある質問

Q. ETHが清算価格を下回ると、直ちにすべての借入れが清算されますか。

A. 借入れごとに条件が異なります。今回の続報は、Makerが判定に使う参照価格と取引所価格の差を説明しており、瞬間的な市場価格だけで対象ポジションの清算完了とは判断できません。

Q. Cornerstoneの2億ドルはすべてWeb3に投資されますか。

A. 報道では第二ファンド全体の調達目標です。企業向け技術など幅広い領域を対象とし、Web3や量子コンピューティングはその一部です。

Q. Saylor氏の投稿で新たな購入量はわかりますか。

A. 3月30日の投稿だけでは、新規取得の数量や代金は確認できません。3月24日に発表された取得実績とは区別し、その後の会社開示を確認する必要があります。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。