この記事の結論
- 暗号資産交換業者が利用者から金銭や暗号資産の預託を受ける場合、資金決済法第63条の11および第63条の11の2などにもとづいて、利用者財産を自己の財産と分けて管理する義務があります。
- 利用者から預かった金銭は、内閣府令の要件を満たす「利用者区分管理信託」の契約にもとづいて管理します。信託なので、業者の倒産時に業者の財産とは切り離される建て付けです。
- 利用者から預かった暗号資産は、自己の暗号資産を管理するウォレットとは別のウォレットで管理し、保管場所も明確に区分します。原則として、秘密鍵は常時インターネットに接続していない機器で管理するコールドウォレット等が求められます。
本記事は2026年9月10日時点で公開されている金融庁の資料にもとづきます。制度は改正されることがあります。
分別管理は何を根拠に求められているのか
金融庁の「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)」は、暗号資産交換業者が利用者から金銭・暗号資産の預託を受ける場合について、資金決済法第63条の11および第63条の11の2、ならびに内閣府令第26条・第27条・第29条にもとづき、利用者から預託を受けた金銭・暗号資産(利用者財産)と履行保証暗号資産に係る分別管理の適切な取扱いが確保される必要がある、と定めています。
監督にあたっては、外部監査または内部監査の状況の報告を求めるとされており、日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)の自主規制規則「暗号資産交換業に係る利用者財産の管理に関する規則」も参照されます。JVCEAは資金決済法にもとづく認定資金決済事業者協会と、金融商品取引法にもとづく認定金融商品取引業協会を兼ねる自主規制団体です。
金銭と暗号資産で守り方が違う
| 預けたもの | 管理の方法 | 根拠 |
|---|---|---|
| 金銭(日本円など) | 内閣府令第26条第1項各号の要件を満たす利用者区分管理信託の契約にもとづき管理。個別利用者区分管理金額と利用者区分管理必要額を毎営業日算定 | 資金決済法第63条の11、内閣府令第26条 |
| 暗号資産(受託暗号資産) | 自己の暗号資産を管理するウォレットとは別のウォレットで管理し、保管場所も明確に区分 | 資金決済法第63条の11、内閣府令第27条 |
| 履行保証暗号資産 | 自己の財産である暗号資産と明確に区分し、いずれが履行保証暗号資産かを直ちに判別できるようにする | 資金決済法第63条の11の2 |
| 秘密鍵の保管 | 一定の要件に該当する受託暗号資産を除き、常時インターネットに接続していない電子機器等に記録するコールドウォレット等で管理 | 資金決済法第63条の11第2項、内閣府令第27条第2項 |
| 第三者に管理を委託する場合 | 自己で管理する場合と同等の利用者保護が確保されると合理的に認められる方法で管理 | 事務ガイドライン |
「コールドウォレット」の定義は厳しい
事務ガイドラインは、コールドウォレット等を「対象暗号資産を移転するために必要な秘密鍵等を、常時インターネットに接続していない電子機器等に記録して管理する方法その他これと同等の技術的安全管理措置を講じて管理する方法」と定義しています。
そのうえで、一度でもインターネットに接続したことのある電子機器等は「常時インターネットに接続していない電子機器等」に該当しない、と明記しています。ホットウォレットで管理される受託暗号資産については、流出リスクに対応するため上限を社内規則で定めるなどの措置が必要とされています。
委託先が倒産した場合の想定
暗号資産の管理を第三者に委託する場合について、事務ガイドラインは「自己で管理する場合と同等の利用者の保護が確保されていると合理的に認められる方法」の例を挙げています。ひとつは、他の暗号資産交換業者へ委託し、委託元が倒産した場合などに管理中の暗号資産が速やかに委託元へ返還される旨の合意がある場合です。
もうひとつは、対象暗号資産を信託会社等に信託し、委託者である交換業者が倒産した場合などに、その利用者が受益者となって信託財産である暗号資産が利用者に交付される場合です。いずれも「倒産したときにどう戻るか」を事前に決めておく発想で作られています。
利用者側が確認できること
制度が整っていても、そもそも登録を受けていない業者にはこの枠組みが及びません。取引を始める前に、金融庁が公表している暗号資産交換業者の登録一覧に社名があるかを確認してください。無登録業者については、金融庁が警告書の発出先一覧を公表しています。
そのうえで、各社が公表している分別管理の方法や外部監査の状況、コールドウォレットの運用方針を読むと、同じ「分別管理をしています」でも中身に差があることが分かります。
よくある質問(FAQ)
取引所が破綻したら預けた日本円は戻りますか?
暗号資産交換業者は、利用者から預かった金銭を内閣府令の要件を満たす利用者区分管理信託の契約にもとづいて管理する義務があります。信託なので業者の財産と切り離される建て付けですが、実際の回収可否は破綻処理の状況によります。
預けた暗号資産はどのように守られていますか?
自己の暗号資産を管理するウォレットとは別のウォレットで管理し、保管場所も明確に区分することが求められます。さらに、一定の要件に該当する受託暗号資産を除き、秘密鍵は常時インターネットに接続していない機器で管理するコールドウォレット等が原則です。
海外の無登録取引所でも同じ保護がありますか?
ありません。この枠組みは日本で暗号資産交換業の登録を受けた業者に課される義務です。取引前に金融庁の登録一覧に社名があるかを確認してください。無登録業者については警告書の発出先一覧が公表されています。
出典(一次情報)
- 金融庁「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)」(PDF)
- 金融庁「暗号資産交換業者登録一覧」(PDF)
- 一般社団法人日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)協会概要
- e-Gov法令検索「資金決済に関する法律」
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言・税務助言ではありません。個別の判断は専門家や公的機関の一次情報をご確認ください。




