この記事の結論
- Form 13Fは、13(f)対象証券について1億ドル以上の投資裁量を持つ機関投資運用者が提出する報告書です(1975年の証券取引所法13条(f)にもとづく制度)。
- 提出期限は各四半期末から45日以内で、たとえば12月31日を含む四半期分は翌年2月14日までです。
- 空売りポジションは13Fに含めず、ロングから差し引くこともしません。したがって13Fの数字を「ネットの持ち高」と読むことはできません。
本記事は2026年9月時点のSEC公表資料にもとづく整理です。投資助言ではありません。
13Fとは何の書類か
現物ETFの承認以降、「大手銀行がIBITを保有」といった見出しの根拠として13Fが引かれる場面が増えました。まず、この書類が何を示し、何を示さないのかを押さえておく必要があります。
Form 13Fは、1975年に成立した証券取引所法13条(f)にもとづく報告書です。SECの説明によれば、議会は機関投資家の保有情報の公開性を高める目的でこの規定を設け、この開示制度が米国証券市場の健全性に対する投資家の信頼を高めると考えていました。
用語の対応表
| 用語 | 意味 | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| Institutional investment manager | 自己勘定で証券を売買する主体、または他者の口座について投資裁量を行使する主体 | 運用会社に限らず、事業会社・年金基金・銀行の信託部門も含む |
| 13(f) securities | SECが公表する公式リストに載る対象証券 | 何を載せるかはこのリストで決まる |
| Investment discretion | 投資判断を行う権限 | 「所有」ではなく「裁量」が基準 |
| Confidential treatment | 一部の保有を非公開にする申請 | 2023年2月28日以降、EDGARでの電子申請が必要 |
| CUSIP / FIGI | 銘柄を識別するコード | FIGIはCUSIPに加えて使えるが、代替はできない |
提出のタイミングと基準
提出義務は、暦年中のいずれかの月の最終取引日に1億ドルの基準を満たした時点で発生します。この基準を満たすと、規則13f-1(a)(1)により4回分の提出が必要になり、その後に基準を下回っても4回すべてを提出しなければなりません。
最初の提出は、基準を満たした暦年の12月31日を末日とする四半期分で、その45日後(翌年2月14日)が期限です。以降、3月31日・6月30日・9月30日を末日とする各四半期についても、それぞれ45日以内に提出します。
つまり、13Fで見える保有は最大で45日前の断面です。四半期末時点のスナップショットであり、開示された時点で既に売却されている可能性があります。
13Fに「載らないもの」
読み違いの多くは、載らないものを載っていると思い込むことから生まれます。SECのFAQが明示しているのは次の点です。
- 空売り:報告しません。同じ銘柄のロングから差し引くこともせず、ロングのみを記載します(FAQ 41)。
- 米国外上場の外国株:東証、ロンドン、トロントなど米国外の取引所で取引される銘柄は報告しません(FAQ 40)。
- 貸し出した証券の借り手側:保有して第三者に貸し出している側が報告し、借りた側は報告しません(FAQ 42)。
したがって「13Fに載っている株数」は、その運用者のネットのエクスポージャーでも、経済的な持ち高でもありません。デリバティブや貸株を組み合わせた実質的なポジションは、この書類だけからは復元できません。
2022年改正で変わった点
SECは2022年6月23日に13Fの規則と様式の改正を採択しました(Release No. 34-95148)。2023年1月3日以降の様式では、サマリーページに秘密扱いを申請中であることを示すチェックボックスが追加され、CRD番号やSEC file numberといった識別子の報告が求められるようになりました。あわせて金額の丸めが簡素化され、従来の千ドル単位ではなくドル単位への四捨五入に変わっています。
過去の13Fと最近の13Fを並べて比較する場合、この丸め単位の変更を見落とすと桁を読み違えます。
実物を確認する
報道の数字を鵜呑みにせず原典を確認したい場合は、SECのEDGAR全文検索で提出者名と「13F」を指定して探せます。様式そのものと記入要領はSECのサイトでPDFとして公開されています。
よくある質問(FAQ)
誰が13Fを提出しますか?
13(f)対象証券について1億ドル以上の投資裁量を行使する機関投資運用者です。銀行、保険会社、ブローカー・ディーラーのほか、自社のポートフォリオを運用する事業会社や年金基金、私募口座・投資信託・年金資産を運用する投資顧問、銀行の信託部門も含まれます。
13Fに空売りは載りますか?
載りません。SECのFAQ質問41は、空売りポジションを13Fに含めるべきではなく、同一銘柄のロングから空売り分を差し引くこともせず、ロングのみを報告するよう明記しています。
日本株やトロント上場株は載りますか?
載りません。外国発行体の株式は、米国の取引所で取引されているかNASDAQのナショナル・マーケット・システムで気配が提示されている場合にのみ報告します(ピンクシートのADRは除く)。東証、ロンドン、トロントなど米国外の取引所で取引される銘柄は報告対象外です。
出典(一次情報)
- SEC Division of Investment Management「Frequently Asked Questions About Form 13F」
- SEC「Form 13F」(様式と記入要領・PDF)
- SEC EDGAR Full-Text Search(提出書類の検索)
- 金融庁「暗号資産の利用者のみなさまへ」(国内制度の参照先)
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言・税務助言ではありません。個別の判断は専門家や公的機関の一次情報をご確認ください。




