2022年10月に公開した旧版の記事は、NFTの売買益を「雑所得」とし、「合計20万円以上の売買益は申告が必要」とまとめていました。しかし、国税庁がその後公表した資料と照らすと、この説明は正確ではありません。NFTを転売した利益は原則として譲渡所得に区分され、20万円の目安は給与所得者などに限った申告不要の条件です。
この記事では、2026年9月時点で国税庁のサイトに掲載されている資料をもとに、NFT取引の所得区分、申告が必要になる場面、暗号資産でNFTを買ったときの注意点、そして2026年に法律が成立した暗号資産の分離課税との関係を整理します。個別の判断が必要な場合は、税務署や税理士に確認してください。
旧版の説明のどこが違っていたか
旧版の記述と、現在の国税庁資料の内容を並べると次のとおりです。
| 旧版の記述 | 国税庁資料で確認できる内容 |
|---|---|
| NFTの売買益は雑所得 | 買ったNFTの転売益は原則として譲渡所得。利益を得る目的で反復して売買しているなら、雑所得か事業所得 |
| 20万円以上の売買益は申告が必要 | 給与を1か所から受け、年末調整を受けている人は、給与以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要。全員に当てはまる基準ではない |
| 出典:No.2260 所得税の税率 | 20万円の条件はNo.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」に書かれている |
旧版が参考資料として挙げていたタックスアンサーNo.1525-2は、現在「NFTやFTを用いた取引を行った場合の課税関係」として令和8年4月1日現在の法令で掲載されています。国税庁は2023年1月にNFTに絞ったFAQも公表しており、所得区分はこの2つで確認できます。
NFTの所得区分:作った人と転売した人で違う
タックスアンサーNo.1525-2によると、NFTの取引に所得税がかかるのは、そのNFTが暗号資産など財産的価値のある資産と交換できる場合です。交換できないNFTの取引には所得税はかかりません。
そのうえで、立場によって区分が分かれます。
- 自作のデジタルアートをNFTにして売った人:NFTのFAQの問1で、雑所得(または事業所得)とされています。経費にできる売上原価はNFTを組成するための費用で、作品そのものの制作費は含まれない点に注意が必要です。
- 買ったNFTを転売した人:FAQの問4で、値上がり益と認められる場合は譲渡所得とされています。ただし、営利を目的として継続的に売買している場合は、雑所得または事業所得になります。
- NFTを報酬や景品として受け取った人:仕事の対価なら事業所得・給与所得・雑所得のいずれか、臨時・偶発的に受け取ったなら一時所得、それ以外は雑所得です。
譲渡所得になる場合の計算
転売が譲渡所得に当たる場合、所得の金額は「転売収入-取得費-譲渡費用-特別控除額」で計算します。FAQは、総合課税の譲渡所得の特別控除額を50万円としています。譲渡益が50万円以下なら、その金額までしか控除できません。代金を暗号資産で受け取ったときは、受け取った時点の暗号資産の時価が転売収入になります。
損失が出たときの扱いにも違いがあります。譲渡所得の損失は他の所得と損益通算できる場合がありますが、主に趣味や鑑賞の目的で持っていたNFTの損失は通算できないとFAQは説明しています。また、雑所得に当たる場合の損失は、給与所得など他の所得から差し引けません。
なお、不正アクセスで盗まれたNFTについては、条件を満たせば雑損控除の対象になるとFAQの問5に記されています。
20万円ルールと住民税
タックスアンサーNo.1900は、給与を1か所から受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象となる人について、給与所得と退職所得を除いた所得金額の合計が20万円を超える場合に確定申告が必要としています。判定するのは売上ではなく、経費などを引いた所得の金額です。
20万円以下で確定申告が不要な人でも、医療費控除などで還付申告をする場合は、その所得も合わせて申告する必要があると国税庁は説明しています。また、住民税には所得税のような20万円の申告不要の仕組みがないため、市区町村への申告が必要になる場合があります。お住まいの自治体の案内を確認してください。
自営業者や年金受給者など、給与所得者以外の人には、この20万円の条件はそのまま当てはまりません。
国税庁のタックスアンサーNo.1906は、給与所得者の副収入で雑所得になる例として、NFTを組成して第三者に譲渡したことによる所得を挙げています。自作のNFTを売っている会社員は、この区分を前提に20万円の判定をすることになります。
暗号資産でNFTを買ったときの落とし穴
NFTの多くはイーサ(ETH)などの暗号資産で買います。国税庁の暗号資産のFAQ(2025年12月改訂)は、保有する暗号資産で商品を購入した場合、その暗号資産を譲渡したことになると説明しています。NFTそのものを名指しした記述ではありませんが、同じ考え方に立てば、値上がりしたETHでNFTを買った時点で、ETHの値上がり益に課税される可能性があります。
つまりNFTの取引では、NFTを売ったときの損益とは別に、支払いに使った暗号資産の損益も計算する必要が出てきます。暗号資産の取得価額は総平均法か移動平均法で計算し、届出をしなければ総平均法になります。計算方法の違いは移動平均法と総平均法の違いで、暗号資産全般の申告の流れは仮想通貨取引の確定申告の基礎で解説しています。
取引の記録は、日時、支払ったトークンの数量と時価、受け取ったNFT、ガス代をセットで残しておくと、後の計算が楽になります。
贈与・相続と記録の残し方
NFTは売買だけでなく、家族への贈与や相続でも税金の対象になりえます。NFTのFAQの問9は、個人から経済的価値のあるNFTを贈与や相続で受け取った場合、贈与税や相続税がかかるとしています。評価は書画骨とう品の評価方法に準じて行い、市場で取引価格があるNFTはその価格で評価してかまわないとされています。
どの場面でも、後から計算できるように次の記録を残しておくことが基本です。
- NFTを取得した日時、支払った暗号資産の種類・数量と、その時点の円換算額
- 売却した日時、受け取った暗号資産の数量と円換算額
- ガス代やマーケットプレイスの手数料
- ウォレットのアドレスと、取引ごとのトランザクションID
海外のマーケットプレイスは年間取引報告書を出さないことが多いため、ブロックエクスプローラーの履歴とあわせて自分で保存しておく必要があります。
2026年の制度変更:暗号資産の分離課税とNFT
2025年12月26日に閣議決定された令和8年度税制改正大綱には、一定の暗号資産を登録業者に譲渡したときの所得を、他の所得と分けて20%(所得税15%、住民税5%)で課税する仕組みが盛り込まれました。所得税法等の改正法は2026年3月31日に成立しています。対象は金融商品取引業者の登録簿に載った「特定暗号資産」に限られ、損失の3年間の繰越控除も設けられます。
適用が始まるのは、暗号資産の規制を資金決済法から金融商品取引法に移す改正法の施行日が属する年の翌年1月1日以後の譲渡です。この改正法は2026年7月15日に成立しましたが、主要部分の施行日を定める政令は、この記事の作成時点で確認できませんでした。
大綱と改正法の要綱にはNFTという言葉は出てきません。分離課税の対象は登録簿に載った暗号資産に限られるため、一般的なNFTの転売益は、これまでどおり譲渡所得や雑所得として総合課税の対象になると考えられます。分離課税の全体像は暗号資産の20%分離課税の解説もあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. NFTを転売して得た利益は雑所得ですか?
A. 国税庁のNFTのFAQでは、値上がり益と認められる転売は原則として譲渡所得です。営利を目的として継続的に売買している場合は、雑所得または事業所得に区分されます。
Q. 会社員はNFTの利益が20万円以下なら何もしなくてよいですか?
A. 給与を1か所から受けて年末調整を受けている人は、給与以外の所得の合計が20万円以下なら所得税の確定申告は原則不要です。ただし住民税の申告が必要な場合があり、還付申告をするときはその所得も含めて申告します。
Q. 暗号資産の20%分離課税はNFTにも適用されますか?
A. 税制改正大綱と改正法の要綱にはNFTの記載がなく、対象は登録簿に載った特定暗号資産に限られます。一般的なNFTは対象外で、従来の総合課税の扱いが続くと考えられます。
この記事の出典
- 国税庁 タックスアンサーNo.1525-2 NFTやFTを用いた取引を行った場合の課税関係
- 国税庁 NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)
- 国税庁 タックスアンサーNo.1900 給与所得者で確定申告が必要な人
- 国税庁 暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)
- 財務省 令和8年度税制改正の大綱
- 金融庁 国会提出法案(第221回国会)
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




