2022年9月13日、カラフルな似顔絵風のNFTコレクション「Doodles」を運営する会社が、初めての資金調達で5400万ドルを集めたと発表しました。評価額は7億400万ドル。NFT市場の取引が冷え込み始めた時期だっただけに、大きな話題になりました。
旧版の記事はこの調達を短く伝えていましたが、コレクションの点数を「1,000枚」と書くなど誤りがありました。この記事では、調達の中身を一次情報で確かめ直したうえで、その後のDoodlesが音楽やアニメ、そして独自トークンへとどう舵を切ってきたかを2026年時点から振り返ります。
2022年9月の資金調達で何が起きたか
Doodlesの発表とCoinDeskの報道によると、調達を主導したのはRedditの共同創業者アレクシス・オハニアン氏が設立したベンチャーキャピタル「Seven Seven Six」です。ほかに10T Holdings、Acrew Capital、FTX Venturesが参加しました。旧版では「1oT Holdings」と表記していましたが、正しくは10T Holdingsです。
会社側は資金の使い道として、エンジニアやクリエイターなど人材の獲得、製品開発、買収、独自技術、メディア事業、保有者向けの体験を挙げていました。NFTの売り上げだけに頼らず、キャラクターの知的財産(IP)を音楽や映像に広げる会社になる、という宣言でもありました。
CoinDeskは同じ記事で、2022年の第1四半期から第2四半期にかけてNFTの取引量が25%減ったことにも触れています。市場全体が縮むなかで、一つのNFTブランドに7億ドル超の値札がついたことが、この調達の目立った点でした。
Doodlesとはどんなコレクションか
Doodlesは2021年10月17日に発行が始まったイーサリアム上のNFTで、総数は1万点です。アーティストのスコット・マーティン氏(Burnt Toast)の絵をもとに、髪型や顔、服などの特徴を組み合わせて1点ずつ異なるキャラクターが生成されています。発行価格は0.123ETHで、数時間で完売しました。
共同創業者のジョーダン・カストロ氏とエヴァン・キースト氏は、NFTの草分けであるCryptoKittiesを手がけたDapper Labsの出身です。SNSのプロフィール画像として使われるNFT、いわゆるPFP(Profile Picture)コレクションの代表格のひとつとして、2021年から2022年にかけて知名度を高めました。
旧版にあった「6.9ETH(12,183円)で購入できた」「296.69ETHで取引された」といった価格の記述は、日付と出典が確認できなかったため、この版では扱いません。NFTの価格は日々変わり、特定時点の数字だけを切り取ると誤解を招くためです。
背景:音楽とエンタメへの展開
調達に先立つ2022年5月、Doodlesは米ビルボードの社長を務めたジュリアン・オルギン氏をCEOに迎えました。6月には音楽プロデューサーのファレル・ウィリアムス氏が最高ブランド責任者(CBO)兼取締役に就き、Columbia Recordsと組んだ音楽作品『Doodles Records: Volume 1』を制作総指揮すると発表しています。旧版が触れていたコロンビア・レコードとの共同リリースは、この計画のことです。
2023年1月にはエミー賞候補にもなったアニメーション制作会社Golden Wolfを買収しました。同年3月、カストロ氏はDiscordで「DoodlesはもはやNFTプロジェクトではない」と述べ、メディアフランチャイズを目指す会社へ成長していると説明しています。投機を目的とした買い手よりも、長く関わる保有者を重視するという考え方でしたが、この発言は保有者のあいだで議論を呼びました。
音楽の計画はその後も続き、2024年にはDoodles Recordsとしてファレル氏やリル・ウェイン氏らが参加するシングルの配信が始まったとVarietyが報じています。NFTの絵柄から生まれたキャラクターを、音楽やアニメの登場人物として使う試みです。NFTの保有者だけでなく、NFTを持たない一般のファンにも届く商品を作れるかどうかが、この路線の成否を分ける点でした。
その後どうなったか:出資者の破綻と経営陣の交代
調達から2か月後の2022年11月、出資者の一社だったFTX Venturesの親会社である暗号資産取引所FTXが経営破綻しました。この出来事はDoodles自身の事業とは別の問題ですが、2022年の調達に並んだ名前の一つが、ほどなく消えたことになります。
2025年には経営の顔ぶれが大きく変わりました。Decryptによると、アーティストのスコット・マーティン氏がオルギン氏に代わってCEOに就き、それまでの企業との提携について、ルービックキューブとのコラボで販売した「何の役にも立たない」デジタル衣装を例に挙げて「搾取的で押しつけがましかった」と振り返っています。保有者のコミュニティを軸に立て直すという方針転換でした。
2025年5月には、ソラナ上で独自トークン「DOOD」の配布が始まりました。総供給量は100億枚で、報道によれば43%がNFT保有者などへのエアドロップに充てられました。NFTブランドがトークンを出すことで保有者との関係を作り直そうとする動きは、ほかのプロジェクトにも見られます。Decryptの報道では、DOODは当初ミームコインとして出し、のちにDoodlesのアプリやゲームで使う実用的なトークンへ育てる構想だと説明されていました。イーサリアムのレイヤー2であるBaseへの展開も予定として示されています。
読者が知っておきたいこと:評価額とNFT価格は別物
「評価額7億400万ドル」は、Doodlesを運営する会社の株式に投資家がつけた価格です。NFT1点あたりの価値や、NFT保有者が受け取れる権利を示すものではありません。会社の株主とNFTの保有者は別の立場で、会社が資金を集めても、NFTの価格が上がるとは限りません。
NFTブランドが会社として成長しようとすると、保有者向けの特典と、会社としての売上や提携の間で利害がぶつかることがあります。Doodlesの経緯は、その緊張関係が表に出た例といえます。NFTを見るときは、次の点を確かめると判断材料が増えます。
- NFT保有者にどのような権利(商用利用、特典、配布)が約束されているか
- 運営会社の方針や経営陣が変わったとき、その権利がどう扱われたか
- 独自トークンを出す場合、配分や売却制限がどう定められているか
PFP型NFTの基本はNFTの基礎解説に、トークンの無償配布を受けたときの課税はエアドロップの税金の記事にまとめています。
日本から関わる場合の注意点
DoodlesのNFTはOpenSeaなど海外のマーケットプレイスで売買されており、日本の暗号資産交換業者を通じた取引とは保護の仕組みが異なります。DOODトークンについても、日本の登録業者で取り扱われているかは、利用前に各社の取扱銘柄一覧で確かめてください。この記事の作成時点では、国内の登録業者での取扱いは確認できませんでした。
NFTや暗号資産を売買して得た利益は、日本では原則として課税の対象になります。海外のサービスで受け取ったトークンも同じで、受け取った時点や売却した時点の価格を記録しておく必要があります。
運営会社の資金調達や有名人の参加は、ブランドの注目度を上げる材料にはなりますが、保有者の権利を保証するものではありません。発表の見出しより、公式の利用規約や配布ルールの本文を読むことをおすすめします。
よくある質問
Q. Doodlesの資金調達を主導したのは誰ですか?
A. Redditの共同創業者アレクシス・オハニアン氏が設立したベンチャーキャピタルSeven Seven Sixです。10T Holdings、Acrew Capital、FTX Venturesも参加しました。
Q. Doodlesは全部で何点あるNFTですか?
A. 1万点です。2021年10月に0.123ETHで発行されました。旧版の「1,000枚」は誤りでした。
Q. DOODトークンとは何ですか?
A. Doodlesが2025年5月にソラナ上で配布を始めた独自トークンで、総供給量は100億枚です。価格の変動が大きく、日本の登録業者での取扱いは作成時点で確認できませんでした。
この記事の出典
- CoinDesk: NFT Collection Doodles Raises $54M at $704M Valuation
- Business Wire: Doodles Raises $54 Million in First Funding Round
- CoinDesk: Doodles Is 'No Longer an NFT Project,' Co-Founder Says
- Billboard: Pharrell Williams Boards Web3 Brand Doodles as Chief Brand Officer & Board Member
- Decrypt: Ethereum NFT Brand Doodles Reveals Solana Token Amid Pivot
- The Block: Doodles launches its native token DOOD on Solana
- Variety: Doodles Records Launches With Single Releases Featuring Pharrell Williams, Lil Wayne, Lil Yachty and More
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




