プーマのNFT「Nitropass」とBlack Station|その後の歩み

ドイツのスポーツブランド、プーマ(PUMA)は2022年8月に初の本格的なNFT「Nitropass」を発行し、9月7日にはニューヨーク・ファッションウィークに合わせて仮想空間「Black Station」を公開しました。NFTを持つ人は、仮想空間で限定デザインを見られるだけでなく、NFTと引き換えに実物のスニーカーを受け取れる仕組みでした。

旧版の記事は発表の内容を紹介し、「最大のライバルであるナイキを上回れるか」と結んでいました。この記事では、NFTと靴を交換する仕組みを整理したうえで、プーマがその後もWeb3の取り組みを続けたこと、ナイキが撤退へと舵を切ったことを、2026年時点の情報で確かめます。

2022年8〜9月に何があったか

プーマは2022年2月22日、公式のTwitter(現X)アカウント名をイーサリアムのドメイン名「PUMA.eth」に変え、Web3への関心を打ち出していました。

プーマの告知によると、まず無料の「Nitro Token」を配り、2022年8月26日にNitropassの発行(ミント)を行いました。Nitropassはイーサリアム上のNFTで、発行数は4,000点です。米TechCrunchは、このパスが1時間足らずで完売したと伝えています。

続いて9月7日、プーマは初のメタバース体験「Black Station」を発表しました。公式発表によると、ニューヨーク・ファッションウィーク期間中のショー「FUTROGRADE」と連動した企画で、仮想空間は3D制作会社FTRと組み、ゲームエンジン「Unreal Engine 5」で作られました。ロビーから複数の入口(ポータル)を通って、未発表のスニーカーなどを見て回れる構成でした。

Nitropassの仕組み:NFTを「燃やして」靴と交換

Nitropassの保有者は、Black Stationで新たにNFTを発行でき、2種類のNFTを受け取りました。

  • 引き換え用のNFT:「バーン(焼却)」と呼ばれる操作で使えなくする代わりに、実物のスニーカー「Nitro NFRNO」または「Nitro Fastroid」を受け取れるもの。
  • 体験用のNFT:デジタルの記念品として手元に残るもの。

ファッション誌Highsnobietyによると、ショーは9月13日に開かれ、実物の靴との引き換えは9月16日に始まりました。対象は2,000足です。NFTをバーンすることで「同じ権利で二重に靴を受け取る」ことを防ぎ、デジタルの記念品は別に残すという設計でした。

旧版記事にあった「このサイトはプーマが30年前に作ったサイトで、今回復活させた」という記述は、公式発表などで裏付けを確認できなかったため、この改訂では外しました。

背景:スポーツブランドがNFTに向かった理由

2021〜2022年は、スニーカーとNFTの相性の良さが注目された時期でした。限定品を抽選で売り、転売市場で高値が付くスニーカー文化は、発行数が決まっていて売買の記録が残るNFTの性質と重なります。

最も成果を上げたのはナイキでした。ナイキは2021年12月にデジタルスニーカーの制作会社RTFKTを買収し、2022年8月にCointelegraphが伝えたDuneのダッシュボードの数字では、NFTの販売で約1億8,530万ドルの収入を得ていました。RTFKTが手がけたデジタルスニーカーやアバターが中心で、転売市場での取引額はその何倍にも上りました。旧版は「1億8,500万ドルの利益」と書いていましたが、これは販売による収入で、利益ではありません。

プーマはそれ以前から、NBA選手ラメロ・ボール氏とのコラボでNFTを取り入れていました(プーマとラメロ・ボール氏のNFTスニーカー)。NitropassとBlack Stationは、こうした単発の企画を、自社の仮想空間を中心とした継続的な販売の場へ広げる試みだったと言えます。

その後のプーマ:Black Station 2と「続ける」判断

プーマは2022年の後もWeb3の取り組みを続けました。TechCrunchによると、2023年2月には「Super PUMA」と呼ぶNFTを1万点販売しています。

2023年6月13日には「Black Station 2」を公開しました。公式発表によると、「Unkai」と「Unter」という2つの世界を持つ仮想空間で、スニーカー「Fast-RB」を販売し、暗号資産だけでなくクレジットカードでも支払えるようにしました。NFTに慣れていない人でも買えるよう、入口を広げた形です。

2024年1月のTechCrunchの取材では、暗号資産市場が冷え込んだ後もWeb3への投資を続ける方針が語られ、Meta社のアバター向けストアでのデジタル商品販売が収益源の一つとして挙げられていました。一方、2024年以降にBlack Stationを閉じた、あるいは担当チームを縮小したという発表は、2026年9月に調べた範囲では見当たりませんでした。2026年9月に確認した時点では、Black Stationのページは正常に表示されず、現在も運営されているかどうかは確かめられていません。

ナイキとの違い:撤退と継続

旧版記事が比較の対象にしたナイキは、2024年以降に大きく方針を変えました。

時期 ナイキの動き
2021年12月 RTFKTを買収
2024年12月 RTFKTの事業終了を発表(運営は2025年1月に終了)
2025年4月 NFT購入者らが、ニューヨーク東部地区の連邦地裁でナイキを相手に集団訴訟を起こす
2025年12月 RTFKTを売却したと報道(相手と金額は非公表)
2026年5月 NFTの販売サイト「.SWOOSH」を閉鎖

集団訴訟では、NFTが未登録の証券に当たるなどと主張されており、ナイキは訴えの却下を求めています。2026年初めの時点で裁判所の判断は出ていないと報じられていました。

「ナイキを上回れるか」という旧版の問いに対しては、売上の規模ではナイキが圧倒していたものの、長く続けたのはプーマの側だった、という結果になっています。高級ブランドの動向はエルメスのNFT商標出願とその後で整理しています。

引き換え型のNFTを持つ・買うときの注意点

NitropassのようにNFTを実物と交換できる商品は、今も多くのブランドが扱っています。持つ前に、次の点を確かめておくと安心です。

  1. 引き換えの期限と地域:交換期間が決まっていることが多く、発送先の国が限られる場合もあります。日本に届くかどうかは事前に確認が必要です。
  2. 引き換え後のNFTの扱い:バーンで消えるのか、記念品として残るのか。二次流通で買ったNFTがすでに引き換え済みでないかも確かめます。
  3. サービス終了時の扱い:ナイキの.SWOOSHのように、販売サイトが閉じると、NFTを自分のウォレットへ移す必要が出ることがあります。
  4. ガス代:ミントやバーンのたびにイーサリアムの手数料がかかります。金額はネットワークの混み具合で大きく変わるため、手続きのタイミングにも気を配りましょう(ガス代の仕組み)。

NFTを売って利益が出た場合の課税はNFTの税金の解説で解説しています。ここで紹介したのは仕組みと経緯であり、特定のNFTを買うよう勧める意図はありません。

よくある質問

Q. プーマのNitropassとは何ですか?

A. 2022年8月にプーマが発行したイーサリアム上のNFTで、発行数は4,000点です。保有者は仮想空間Black Stationで新たなNFTを受け取り、そのうち1つをバーンすることで実物のスニーカーと交換できました。

Q. Black Stationは今も使えますか?

A. 終了の公式発表は確認できませんでした。ただ、2026年9月の確認時点でページが正常に表示されず、現在の運営状況は確かめられていません。2023年6月には第2弾のBlack Station 2が公開されています。

Q. ナイキのNFTはどうなりましたか?

A. ナイキは2024年12月にRTFKTの事業終了を発表し、2025年1月に運営を終えました。NFTの販売サイト.SWOOSHも2026年5月に閉鎖されています。2025年4月にはNFT購入者らによる集団訴訟が起こされました。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。