NFTキャラのリアリティ番組「R3al Metaverse」とその後

2022年8月30日、人気NFTコレクションのキャラクター5体が1つの家で共同生活を送るという短編アニメ「The R3al Metaverse」の配信が始まりました。旧版の記事は「NFTのIPを主人公にした史上初のリアリティショー」として紹介し、Twitter(現X)やTikTokで見られると案内していました。

この番組が注目されたのは、内容よりも作り方でした。NFTのキャラクターは、多くの場合1体ごとに持ち主が違います。制作側はどうやって出演の権利を集めたのか。この記事では、番組の概要と権利の仕組み、同じ時期にあったNFTキャラクターの映像・音楽化の例、そして2026年時点で分かっていることを整理します。

どんな番組だったか

制作したのは、米国のアニメスタジオInvisible Universe(トリシア・ビッジオCEO)です。暗号資産メディアDecryptなどによると、番組は1〜2分の短いエピソードで構成され、全34話のうち最初の6話を配信開始から2週間ほどで公開する計画でした。配信先はTikTok、Instagram、Twitter、YouTube、Discordです。

題材は、米MTVで長く続いた若者の共同生活番組「The Real World」のパロディで、ロサンゼルスの家に集まった5体が、けんかや友情を繰り広げるという設定でした。出演者は次のとおりです。

キャラクター名 元のNFTコレクション
Pete Bored Ape Yacht Club(BAYC)
Monty Cool Cats
Claudine Doodles
Journey World of Women
Sam Robotos

旧版記事は「Sam→Roboto」と書いていましたが、正しくはRobotosというコレクションのSamという名前のキャラクターです。

1話1〜2分という長さは、スマートフォンで縦に流し見する短尺動画に合わせた作りです。テレビのように30分枠で見せるのではなく、SNS上で切り抜かれて広がることを前提にしており、NFTを持っていない人にもキャラクターを知ってもらう入口にする狙いがあったと考えられます。

キャラクターの権利はどう集めたか

テック系メディアdot.laの取材によると、Invisible Universeは出演する5体のうち3体のNFTを自社で購入し、残る2体は持ち主から利用の許諾(ライセンス)を受けました。NFTのキャラクターの商用利用の権利は、コレクションの運営会社ではなく、1体ずつの持ち主にあるケースが多いため、個別に交渉する必要があったのです。

番組にはファン参加の仕組みも用意されました。「Producer Pass」と呼ぶNFTを7,200点用意し、2022年9月7日に発行を始める計画で、持ち主は物語の展開に投票したり、自分のNFTを番組にカメオ出演させたりできるとされていました。予定価格は150〜200ドルと報じられましたが、実際にどれだけ売れたかは確認できませんでした。

同じNFTを題材にした映像でも、ビットコインの賞金を懸けた実写のリアリティ番組のような別の試みもあります(The House of Streamsの解説)。R3al Metaverseは、NFTのキャラクターそのものを「出演者」として扱った点に特色がありました。

背景:NFTの「商用利用権」という売り文句

2021〜2022年には、NFTを買うと「そのキャラクターを使って商売ができる」ことが大きな魅力として語られました。ただし、その範囲はコレクションごとに大きく違います。

  • BAYC:運営会社のライセンスで、持ち主に自分の猿の画像を使い、複製し、派生作品を作る権利を、期間や地域の制限なく認めています。
  • Cool Cats:持ち主が自分のキャラクターを使ったグッズを売ることを、売上の上限なしで認めています(2022年12月更新の規約)。
  • World of Women:2022年1月、持ち主に自分の画像の知的財産権をすべて渡すと発表しました。
  • Doodles:現在は独自のメディアライセンス契約で運用されており、承認なしの商用利用や派生作品の制作は認めていないと解説されています。

同じ「NFTのキャラクター」でも、自由に使えるものと、運営の許可が必要なものがあるということです。規約は後から変わることもあるため、Doodlesのように方針が変わった例もあります(Doodlesのその後)。

同じ時期にあったNFTキャラクターの映像・音楽化

R3al Metaverseの前後には、NFTのキャラクターを既存のエンターテインメント業界に持ち込む試みが相次ぎました。

  • Kingship(2021年11月):ユニバーサル ミュージック傘下のレーベル「10:22PM」が、BAYC3体とMutant Ape1体によるバンドを発表しました。4体はいずれもあるコレクターの所有するNFTです。
  • Cool Cats(2022年3月):米大手エージェンシーCAAと契約し、アニメや出版、ライセンス事業への展開を目指しました。
  • World of Women(2022年1月):持ち主への権利付与と同時に、映画・テレビ分野の代理人を起用しました。

いずれも「NFTの人気を、より広い層に届く作品に変える」狙いでした。一方で、2022年後半以降はNFTの価格が大きく下がり(暗号資産の下落とNFT価格の検証)、これらの企画の多くは、その後の大きな展開が見えにくくなっています。

2026年時点:番組とProducer Passのその後

2026年9月時点で、The R3al Metaverseの新しいエピソードや続編に関する発表は確認できませんでした。制作会社Invisible Universeの公式サイトの会社紹介では、別のキャラクター作品が挙げられている一方、この番組には触れられていません。番組が予定どおり全34話まで公開されたのか、途中で終わったのかも確認できていません。

Producer Passの持ち主が投票した内容がどう反映されたか、パスに現在どのような特典が残っているかについても、公開情報では確かめられませんでした。旧版記事が案内していたTwitterのアカウントについても、2026年時点で更新が続いているかは確認できていません。

NFTを使ったファン参加型の企画は、運営の活動が止まると特典の中身が失われやすいという弱点があります。番組のように「続きがあること」を前提にした特典は、とくにその影響を受けます。

NFTのキャラクターを使う・買う前に確認したいこと

NFTのキャラクターを自分の作品や商品に使いたい場合や、「商用利用可」をうたうNFTを買う場合は、次の点を確認してください。

  1. ライセンスの原文:運営会社のサイトにある利用規約で、商用利用の可否、上限額、派生作品の扱いを確かめます。
  2. 権利を持つのは誰か:キャラクターを使うなら、そのNFTの現在の持ち主から許諾を得る必要がある場合が多く、運営会社の許可だけでは足りないこともあります。
  3. 規約の変更:規約は改定されることがあるため、改定時の扱いも読んでおきます。
  4. 日本の著作権との関係:NFTを買っても、著作権そのものが移るとは限りません。日本では、著作権の譲渡には契約上の合意が必要で、NFTの購入だけで自動的に移るわけではないと考えておくのが安全です。

BAYCの運営会社が過去に直面した訴訟についてはYuga Labsらの提訴に関する記事でも扱っています。

よくある質問

Q. The R3al Metaverseはどこで見られますか?

A. 2022年8月30日からTikTok、Instagram、Twitter(現X)、YouTube、Discordで配信されました。2026年時点で新しいエピソードや続編の発表は確認できず、過去の動画がどこまで公開されているかも確認できませんでした。

Q. 出演したキャラクターはどのNFTですか?

A. BAYCのPete、Cool CatsのMonty、DoodlesのClaudine、World of WomenのJourney、RobotosのSamの5体です。制作会社が3体を購入し、2体は持ち主から利用の許諾を受けたと報じられています。

Q. NFTを買えばキャラクターを自由に商用利用できますか?

A. コレクションによります。BAYCやCool Catsは持ち主に広い商用利用を認めていますが、Doodlesのように承認が必要なものもあります。必ず各コレクションのライセンスの原文を確認してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。