3airのNFTマーケットとアフリカの通信事業|その後を検証

2022年、ブロックチェーンと通信インフラを組み合わせたプロジェクト「3air」が、アフリカのアーティスト向けNFTマーケットプレイスを立ち上げ、同年9月には独自トークン「3AIR」を取引所に上場させました。旧版の記事は、アフリカの通信事情と銀行口座を持たない人々の多さを背景に、3airが「NFTで何十億人をインターネットにつなげる」構想を紹介していました。

この記事では、3airが何をしようとしていたのかを整理し直したうえで、旧版が挙げた統計の出どころ、NFTの決済に使われたステーブルコインBUSDの終了、そして2026年時点で確認できるプロジェクトの状況を順に確かめます。

3airとは何だったか

アフリカのテック系メディアTechCabalの2022年5月の記事によると、3airはサンディ・ビテンツ氏が最高経営責任者(CEO)を務めるプロジェクトで、「K3 Last Mile」と呼ばれる無線通信の技術を使い、アフリカで高速インターネット回線を提供することを目指していました。最初の市場は西アフリカのシエラレオネで、技術そのものは同国で実績があると説明されていました。

ブロックチェーンの基盤にはBNB Chain(旧Binance Smart Chain)と、イーサリアム系のSKALEネットワークを使うとしていました。プラットフォームでは、オンライン決済、分散型金融(DeFi)、NFTの所有、デジタルID、学びながら報酬を得る仕組みなどを提供する計画が示されていました。

2022年9月28日付の報道では、サービスはシエラレオネで稼働しており、次はコンゴ民主共和国、エチオピア、ナイジェリアへ広げる予定とされていました。同じ月には、首都フリータウンの学校に無料でインターネットを提供したとも伝えられています。

NFTを「回線契約」に使うという設計

3airの特徴は、インターネット回線の契約そのものをNFTにするという発想でした。利用者は回線の利用権をNFTとして持ち、不要になれば他人に譲ったり売ったりできます。旧版記事が書いていた「サービスが不要になったら再販できる」という点は、この仕組みを指しています。

従来の通信契約では、解約すれば契約は消えるだけです。利用権をNFTにすれば、残りの契約期間に価値が残り、次の利用者に引き継げます。銀行口座やクレジットカードを持たない人でも、NFTの受け渡しで契約をやり取りできる点も売り文句でした。

アーティスト向けのNFTマーケットプレイスは、2022年6月8日に発表されています(旧版記事は9月の話題として扱っていました)。作品はBinance Smart Chain上で発行され、価格はステーブルコインのBUSD建てでした。アフリカの作り手が作品を無料で出品し、ロイヤリティを設定できるとされていましたが、この発表は広告として配信されたプレスリリースで、実際の出品数や取引額は確認できませんでした。

背景の数字:通信と銀行口座

旧版記事は「2019年にブロードバンドを使えたのはサハラ以南アフリカの0.58%」「モバイル利用者の91%が2Gか3G」「世界の成人の31%が銀行サービスを使えていない」と書いていました。公的な統計と照らし合わせると、次のようになります。

  • 固定ブロードバンド:世界銀行のデータでは、サハラ以南アフリカの固定ブロードバンド契約数は2019年に人口100人あたり約0.5件でした。旧版の0.58%の出典は確認できませんでしたが、水準としては近い数字です。
  • 2G・3Gの割合:「91%」という数字の出典は確認できませんでした。
  • 銀行口座:世界銀行の金融包摂調査「Global Findex」によると、口座を持つ成人の割合は2017年の68%から2021年に76%へ上がり、口座を持たない成人は約14億人でした。2025年7月公表の最新版(2024年調査)では約79%に達し、口座のない成人は約13億人とされています。

口座を持たない人がまだ多いのは事実ですが、その割合は着実に下がっています。旧版の「31%」は2017年ごろの数字に近く、2026年時点で引用するには古いと言えます。

2026年時点:トークンとサイトの状況

3airのトークン「3AIR」は、2022年9月22日に暗号資産取引所MEXCに上場しました。発表によると、プロジェクトは350万ドル超の資金を集めていました。CoinMarketCapのデータでは、3AIRの価格は2022年10月1日に付けた0.1113ドルが最高値で、2026年9月時点では約0.000066ドルと、最高値から99.9%以上低い水準にあります。時価総額は約5万ドルです。

公式サイト「3air.io」は2026年9月時点でも表示はされるものの、中身のないアプリの枠だけが残っている状態で、ブログや技術文書のページには接続できませんでした。2024年以降に3airが回線事業を続けているのか、終了したのかを示す公式発表や報道は、今回の調査では確認できませんでした。

なお、価格が大きく下がったことや情報発信が途絶えていることは、それだけでプロジェクトに不正があったことを意味するわけではありません。資金が尽きた、事業を別の形に移したなど、さまざまな可能性がありますが、どれに当たるかは確認できていません。

決済通貨が消えるリスク:BUSDの終了

3airのNFTマーケットで使われたBUSDは、米Paxos社がバイナンスのブランドで発行していたドル連動のステーブルコインです。しかし2023年2月、ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)の指示を受けて、Paxosは同月21日で新規発行を停止しました。

その後、バイナンスは2023年12月15日でBUSDの取り扱いを終え、残っていた残高を2024年1月2日に別のステーブルコインFDUSDへ1対1で自動的に換えました。Paxos自身は2026年時点でもBUSDをドルに払い戻す窓口を案内しています。

このように、NFTの価格の基準や支払いに使う通貨が、プロジェクトとは関係のない理由で使えなくなることがあります。特定のステーブルコインに依存したサービスでは、その通貨の発行体や規制の動向もあわせて見ておく必要があります。ステーブルコインの種類と日本の規制はステーブルコインとはで解説しています。

社会課題型のWeb3プロジェクトを見るときの確認点

「途上国の人々を支援する」「インフラを届ける」といった目標を掲げるプロジェクトは共感を集めやすい一方、トークンの価格と事業の実態が大きく離れることがあります。関わる前に、次の点を確かめるとよいでしょう。

  1. 実際の利用者数と地域:何か国・何人に回線やサービスが届いているか、第三者の報道で確認できるか。
  2. 現地の許認可:通信や金融のサービスには国ごとの免許が必要です。
  3. トークンの役割:サービスに本当に必要な用途があるのか、資金集めの手段にとどまるのか。
  4. 決済に使う通貨:BUSDのように、外部の事情で使えなくなる通貨に頼っていないか。
  5. 情報発信の継続:公式ブログや開発の更新が止まっていないか。

日本に住む人が海外のトークンを買う場合、金融庁に登録していない海外の業者を通すことになりがちです。登録業者のような利用者保護の仕組みがない点にも注意してください。この記事は特定のトークンの売買を勧めるものではありません。

よくある質問

Q. 3airとはどんなプロジェクトですか?

A. 無線通信技術「K3 Last Mile」でアフリカに高速回線を届け、回線契約をNFTにして譲渡や転売をできるようにする構想を掲げたプロジェクトです。最初の市場はシエラレオネで、BNB ChainとSKALEを使うとしていました。

Q. 3airは2026年も運営されていますか?

A. 2024年以降の事業の継続や終了を示す公式発表や報道は確認できませんでした。公式サイトは表示されるものの中身がほとんどなく、トークン3AIRの価格は最高値から99.9%以上下がっています。

Q. BUSDはまだ使えますか?

A. Paxosは2023年2月21日にBUSDの新規発行を止め、バイナンスは2023年12月15日で取り扱いを終えて2024年1月2日に残高をFDUSDへ換えました。Paxosでのドルへの払い戻しは2026年時点でも案内されています。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。