3D NFTとは、立体のモデルデータ(3Dモデル)をひも付けたNFTのことです。画像1枚ではなく、回転させたり、ゲームや仮想空間でアバターとして動かしたりできるデータを持たせられる点が、平面の画像NFTとの違いです。2021年から2022年にかけては、人気コレクションのキャラクターを3D化する取り組みが相次ぎ、メタバースの普及と結びつけて語られました。
旧版の記事は2022年11月、3D NFTを「NFTの空間に革命を起こす」ものとして紹介していました。ただし、NFTにすれば著作権が保証される、どの仮想空間でも使える、といった受け取り方には誤解が含まれています。この記事では、3D NFTの技術的な仕組み、作品データがどこに置かれているのか、買った人が何を得るのかを整理し、2025年に起きたデータ消失の事例も踏まえて、今読んでも役立つ注意点をまとめます。
NFTそのものは「データへの目印」
まず前提として、NFTはブロックチェーン上に記録された「代替できないトークン」です。多くのNFTでは、トークンの中に作品のファイルそのものは入っていません。入っているのは、作品の名前や説明、ファイルの置き場所などを書いた情報(メタデータ)への参照です。
このため、NFTが保証しているのは「このトークンを今どのアドレスが持っているか」という記録であり、ファイルの中身が永久に残ることや、作品を自由に使える権利までは自動的に保証されません。旧版の記事には「NFTに作品を添付することで著作権が保証される」「誰もコピーや使用ができない」という記述がありましたが、これは正確ではありません。画像や3Dデータは技術的には複製でき、著作権は原則として作者に残ります。買った人がどこまで使えるかは、発行者が定める利用規約やライセンスで決まります。
NFTという仕組みを広く知らしめた例としては、2017年11月28日に公開された育成ゲーム「CryptoKitties」がよく挙げられます。公開直後の人気でイーサリアムの取引が詰まるほどでしたが、これは2Dのイラストを使ったもので、3D NFTとは別の話です。NFTの基本はNFTとは何かの解説記事で扱っています。
3D NFTのデータ形式:glTFとGLB
3Dモデルをウェブで扱うときに広く使われているのが「glTF」という形式です。3Dグラフィックスの業界団体Khronos Groupが策定したもので、2022年には国際規格ISO/IEC 12113:2022としても採用されました。glTFには、複数のファイルに分かれる形式と、1つのバイナリファイルにまとめた「GLB」形式があります。
NFTマーケットプレイスの多くは、このGLBやglTFのファイルを3Dビューアーで表示できます。ただし対応の範囲はサービスごとに違います。たとえばOpenSeaのヘルプセンターは、外部に置かれたGLBファイルは表示できる一方、作品を作る機能「Studio」からGLBを直接アップロードすることはできないと説明しています。また、1点ずつ直接アップロードする場合のファイル容量の上限は50MBとされています。
3Dモデルは、ポリゴン数(形を作る面の数)やテクスチャ(表面の画像)の解像度によって容量が大きく変わります。スマートフォンで表示が重くならないか、ゲームエンジンで読み込めるかといった点も、作品の使い勝手を左右します。
2021〜2022年の「3D化」ブーム
旧版の記事が取り上げたLooking Glass Labsは、カナダの企業です。2021年12月1日の発表によると、同社のスタジオ「House of Kibaa」は、Gutter Cat GangとBored Ape Yacht Club(BAYC)の2つのコレクションについて、仮想空間で使える3Dの素材を制作していました。Gutter Cat Gangについては、保有者向けの仮想の邸宅の設計や、犬とハトのキャラクターのモデル制作などを手がけるとしていました。
同じ時期には、2021年12月にナイキが買収するRTFKTが、日本の現代美術家・村上隆氏と組んだ3Dアバター「CloneX」を発行し、保有者に3Dデータを配って商用利用も認める方針を示しました(RTFKTのCloneX商用権の記事)。有名アーティストBeepleがSolana上で没入型の3D作品を出すなど、3D表現はNFTの話題の中心の一つでした(Beepleの3D NFTの記事)。
その後、Looking Glass Labsは2024年2月29日付で社名を「Metasphere Labs」に変更しています。事業の中身や、当時の3D素材が今どう使われているかについては、今回の調べでは詳しい公式情報を確認できませんでした。
「どのメタバースでも使える」は本当か
3D NFTの魅力として「一度買えば、いろいろな仮想空間に持っていける」という説明を見かけます。しかし現実には、3Dモデルが自動的にどこでも動くわけではありません。
- 骨組み(リグ)の違い:アバターとして歩かせたり手を振らせたりするには、関節の設定が必要です。サービスごとに求める骨組みの規格が違うことがあります。
- 容量や見た目の制限:ゲームや仮想空間には、読み込めるポリゴン数や質感の表現に上限があります。高精細なモデルほど、そのままでは使えない場合があります。
- 受け入れる側の判断:外部のNFTを取り込むかどうかは、各サービスの運営者が決めます。対応していなければ、NFTを持っていても表示されません。
旧版の記事は「DecentralandやThe Sandboxがそれを証明している」と書いていましたが、これらのサービスは基本的に自分たちの仕様に合わせて作られた資産を使う仕組みです。3Dデータの形式がそろっていることと、サービスをまたいで使えることの間には、まだ大きな距離があります。
2025年の教訓:作品の画像が一斉に消えた
3D NFTの弱点がはっきり表れたのが、CloneXの事例です。ナイキは2024年12月、RTFKTの事業を2025年1月で終えると発表しました。その後の2025年4月24日、CloneXの作品データを配信していたCloudflareがアクセスを制限し、イーサリアム上の約1万9,500点のCloneXで、作品の代わりに黒い背景と利用規約違反の表示が出る状態になったと報じられました。報道によると、運営側の契約が予定より早く無料プランに切り替わり、大容量の配信が規約に触れたことが原因とされています。
RTFKTの技術責任者は、CloneXなどのデータを分散型の保存サービスArweaveへ移す方針を示しました。この出来事は、トークンがブロックチェーン上に残っていても、作品データが運営会社のサーバーに置かれていれば、運営の終了や契約の問題で見られなくなることがあると示しています。
3D NFTを買う・作る前に確認したいこと
3D NFTに関わる前に、次の点を確かめておくと判断の材料になります。
- データの置き場所:メタデータや3DファイルがIPFSやArweaveなどの分散型ストレージにあるのか、運営会社のサーバーにあるのか。
- 受け取れるファイル:表示用のデータだけか、ゲームや制作ソフトで使える元データ(GLBなど)もダウンロードできるのか。
- 使える範囲:個人の利用だけか、グッズ化など商用の利用も認められているのか。利用規約を読んでおきます。
- 対応するサービス:どのアプリや仮想空間で実際に使えるのか。「将来対応予定」は約束ではありません。
日本発の例としては、3Dアバターと特典を組み合わせたBetakkuma NFTのようなコレクションもあります。作る側は、他人のキャラクターや作品を無断で3D化して販売すると著作権の侵害になりうる点に注意が必要です。また、NFTを売って利益が出た場合の税の扱いはNFTの税金の記事で整理しています。
よくある質問
Q. 3D NFTを買えば、その3Dモデルの著作権も手に入りますか?
A. いいえ。NFTを買って得られるのは、原則としてトークンの保有記録です。著作権は作者に残るのが通常で、どこまで使えるかは発行者が定めるライセンスや利用規約によって決まります。
Q. 3D NFTでよく使われるファイル形式は何ですか?
A. ウェブ向けの3D形式glTFと、それを1ファイルにまとめたGLBが広く使われています。glTF 2.0は2022年にISO/IEC 12113:2022として国際規格になりました。
Q. 運営会社がなくなったら、3D NFTはどうなりますか?
A. トークン自体はブロックチェーンに残りますが、作品データを運営会社のサーバーに置いている場合は表示されなくなるおそれがあります。2025年4月にはCloneXの作品画像が一時的に見られなくなる出来事がありました。
この記事の出典
- Khronos Group:Khronos glTF 2.0 released as an ISO/IEC International Standard
- OpenSea Help Center:Creator FAQ
- Newswire.ca:Looking Glass Labs Creating Metaverse-Ready 3D Assets for Gutter Cat Gang and Bored Ape Yacht Club NFT Collections(2021年12月1日)
- Yahoo Finance:Looking Glass Labs Announces Name Change(2024年2月)
- FashionUnited:Nike shuts metaverse fashion company Rtfkt(2024年12月)
- Blockworks:Cloudflare removes RTFKT CloneX NFT art due to Terms of Service violation(2025年4月)
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




