2022年10月27日、イーロン・マスク氏による約440億ドルのTwitter買収が完了しました。同じ日、Twitterの開発者向けアカウントは、NFTの画像と作品情報をツイートの中に大きく表示する「NFTツイートタイル」の試験を始めると発表しています。買収の決着とNFT関連の新機能が重なったことで、マスク氏がたびたび話題にしてきたミームコインのDogecoin(DOGE)は、翌週にかけて大きく値上がりしました。
旧版の記事はこの動きを「Twitter社がNFT市場に参入」と紹介していました。しかし実際に試されたのは、提携するマーケットプレイスのNFTをツイート上で見やすく表示する仕組みで、Twitterが自らNFTの売買の場を開いたわけではありません。この記事では、当時の出来事を日付つきで確かめ、TwitterがXに変わった後、NFT機能と暗号資産への期待がどうなったのかを2026年9月時点の情報で整理します。
2022年10月末に何が起きたか
出来事を時系列で並べると次のようになります。
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2022年10月27日 | マスク氏がTwitterの買収を完了(買収額は約440億ドル) |
| 2022年10月27日 | Twitterが「NFTツイートタイル」の試験を発表 |
| 2022年10月最終週 | DOGEが週初めから35%前後上昇 |
| 2022年10月29日(土) | DOGEが1日で70%を超えて上昇したと報道 |
ツイートタイルは、Twitterが以前から大手新聞社のリンク表示などで試していた表示形式を、NFTに広げたものです。試験に参加したのは、Solanaを中心とするMagic Eden、複数のチェーンに対応するRarible、Flowチェーンを開発したDapper Labs、インドのスポーツ系マーケットプレイスJump.tradeの4社でした。これらのサイトに出品されたNFTのリンクをツイートすると、作品の画像が大きく表示され、タイトルや作者などの情報も並びます。表示の先には各マーケットプレイスの販売ページがあり、利用者はそこで購入する流れでした。
つまり、Twitterが自ら売買を仲介したのではなく、外部のマーケットプレイスへ人を送る「窓口」を試したというのが正確な理解です。旧版の「Twitterの発表と同時期にNFT市場に参入した」という書き方は、この点を大きく見せすぎていました。
DOGEが急騰した理由
DOGEは2013年にジョークとして生まれた暗号資産で、マスク氏は2021年ごろから自身の投稿でたびたび言及してきました。そのため市場には「マスク氏がTwitterを手に入れれば、決済やチップの機能にDOGEが使われるのではないか」という期待が以前からありました。
米CNBCは10月27日、買収の完了が近づく中でDOGEが週初めから35%上昇したと伝えました。さらにロイター通信は、買収完了後の10月29日(土)にDOGEが70%以上値上がりし、週全体の上昇幅を広げたと報じています。ツイートタイルの発表も、Twitterが暗号資産やNFTに前向きだという印象を強めた材料の一つでした。
ただし、この時点でTwitterやマスク氏が「DOGEを決済に採用する」と公式に発表した事実はありません。値上がりを支えたのは、あくまで将来の採用を見込んだ思惑でした。思惑で上がった価格は、期待が実現しなければ元に戻りやすいという点は、今回の件に限らず覚えておきたいポイントです。
その後のTwitter:Xへの改名とNFT機能の後退
買収から約9か月後の2023年7月23日、マスク氏はTwitterのブランドを「X」に変えると表明し、翌日には青い鳥のロゴがXに置き換わりました。当時のCEOは、Xが音声・動画・メッセージ・決済や銀行機能を軸にした「何でもできるアプリ」を目指すと説明しています。
一方、NFTに関する機能は広がりませんでした。Twitterは2022年1月から、有料会員向けにイーサリアム上のNFTを六角形のプロフィール画像として表示できる機能を提供していました。しかし米TechCrunchによると、Xは2024年1月までに、有料プラン「X Premium」の説明ページからこの機能の記述を削除しています。すでにNFTを設定していた人の六角形表示はしばらく残ったものの、機能として積極的に扱われることはなくなりました。
NFTツイートタイルについても、試験の後に対象のマーケットプレイスが増えたり、一般に広く提供されたりしたことを示す公式の告知は、今回の調べでは見つかりませんでした(2026年9月時点)。2022年の段階で「SNSがNFT売買の入口になる」と期待された流れは、少なくともXでは本格的には実現していないと言えます。
X Moneyは暗号資産を扱うのか
「Twitterが決済を始めればDOGEが使われる」という期待は、その後どうなったのでしょうか。Xは送金や支払いの機能「X Money」を準備し、2025年1月にはVisaとの提携を公表しました。Visaの即時送金の仕組みを使って、口座への入金や個人間の送金を行う設計です。
暗号資産メディアDecryptは2026年3月10日、マスク氏がX Moneyの早期公開を翌月に始めると投稿したことを伝えました。同記事によると、公開に向けた情報には暗号資産との明確なつながりが見当たらず、DOGEに対応するという公式な発表もありませんでした。その後、X Moneyは米国の有料会員などから段階的に提供が広がっていると報じられていますが、扱うのは米ドルなどの法定通貨で、DOGEを含む暗号資産への対応は確認できませんでした。
X Moneyは米国の利用者を対象としたサービスで、日本からは利用できません。X(旧Twitter)の金融機能と規制の関係は、Xの株取引機能とX Moneyの解説記事で詳しく扱っています。
「DOGE」という名前の混同にも注意
2025年以降、ニュースで「DOGE」という言葉を見かけたときは、何を指しているのかを確かめる必要があります。2025年1月に米国で発足したトランプ政権は、マスク氏が関わる行政改革の組織として「政府効率化省(Department of Government Efficiency、略称DOGE)」を設けました。名前は暗号資産のDogecoinと同じ略称ですが、政府の組織であり、暗号資産とは別物です。
それでも当時は、この組織に関するニュースが出るたびにDogecoinの価格が反応する場面がありました。名前が同じだというだけで価格が動くのは、ミームコインが話題性に左右されやすいことを示しています。当時の動きは2025年1月22日の暗号資産ニュースにまとめています。
読者が知っておくべきこと
今回の出来事から、SNSや有名人に関連する暗号資産のニュースを読むときの注意点が見えてきます。
- 公式発表と思惑を分ける:「採用するかもしれない」という観測と、企業が正式に発表した内容は別物です。価格が動いたときは、根拠が公式発表なのか、推測なのかを確かめましょう。
- 表示機能と売買機能を分ける:SNSがNFTを「表示できる」ようになることと、SNS上で「売買できる」ようになることは、仕組みも規制も大きく違います。
- ミームコインの値動きの大きさ:DOGEのように裏付けとなる事業を持たないトークンは、話題一つで数十%動くことがあります。上がる速さと同じくらい、下がる速さも大きいと考えてください。ミームコイン全般の特徴はミームコインの解説記事が参考になります。
- レバレッジ取引のリスク:急騰や急落の局面では、証拠金取引の強制的な決済が連鎖し、値動きがさらに大きくなることがあります。
日本の居住者がDOGEなどの暗号資産を売って利益が出た場合、原則として雑所得として扱われ、一定の条件を満たすと確定申告が必要になります。国内で売買するなら、登録を受けた国内の交換業者を選ぶのが基本です。
よくある質問
Q. Twitterは2022年にNFTのマーケットプレイスを始めたのですか?
A. いいえ。2022年10月27日に発表されたのは、提携する4つのマーケットプレイスのNFTをツイート上で大きく表示する「NFTツイートタイル」の試験です。購入は各マーケットプレイスのサイトで行う仕組みでした。
Q. X(旧Twitter)でDOGEを使って支払いや送金はできますか?
A. 2026年9月時点で、XやX MoneyがDOGEに対応したという公式発表は確認できませんでした。X Moneyは法定通貨を扱う米国向けのサービスとして提供が進んでおり、日本からは利用できません。
Q. NFTをプロフィール画像にする六角形の表示は今も使えますか?
A. 米TechCrunchによると、Xは2024年1月までにこの機能の説明を有料プランのページから削除しました。新たに設定できる機能としては扱われていないと考えるのが妥当です。
Q. 2025年に話題になった「DOGE」は暗号資産のことですか?
A. 米政府の「政府効率化省(DOGE)」は行政改革のための組織で、暗号資産のDogecoinとは別物です。略称が同じなので、ニュースを読むときは文脈を確かめてください。
この記事の出典
- Decrypt:Twitter Will Allow Users to Buy and Sell NFTs Through Tweets(2022年10月27日)
- CNBC:Dogecoin surges 35% as Elon Musk's Twitter deal approaches close(2022年10月27日)
- Reuters(Investing.com掲載):Dogecoin surges on Elon Musk's Twitter deal
- CNBC:Elon Musk rebrands Twitter to 'X,' replaces iconic bird logo(2023年7月24日)
- TechCrunch:X removes support for NFT profile pictures(2024年1月10日)
- Decrypt:Elon Musk's X Money App Nears Public Launch, No Sign of Dogecoin(2026年3月10日)
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




