山梨県とNEO TOKYO PUNKSのNFT活用|漫画からAR・万博へ

山梨県は2023年、NFTプロジェクト「NEO TOKYO PUNKS」と組み、水素技術を題材とする漫画やセリフ募集を使った広報に取り組みました。NFTを販売することだけが目的の企画ではなく、コミュニティと作品を作り、地域の技術を知ってもらう試みです。その後は現地でのAR体験、万博での展示にも展開しました。

県が掲げた参加型PRと「全国初」の範囲

県の発表は、NFTを利用する自治体のユーザー参加型PRとして全国初の取り組みだと説明しています。これは県が示した位置付けであり、日本の自治体がそれ以前にNFTを一切使っていなかったという意味ではありません。県公式の紹介記事でも、ふるさと納税などのNFT活用事例が既にあることを前提に、広報での使い方を説明しています。

企画の中心は、県が情報を渡して宣伝してもらうだけでなく、NFTに関わるコミュニティのメンバーも作品づくりに参加することでした。県側は、地域の取り組みを自分に関係のあることとして理解してもらい、発信につなげたいと説明しています。NFTの価格や販売数を増やす施策として発表されたものではありません。

公式紹介記事の日付は2023年3月8日で、旧ニュース記事は3月17日付です。漫画の公開は3月20日からと案内されました。現在の県ページに表示される更新日と、企画が始まった年を取り違えないことが重要です。古い応募日程がページに残っていても、2026年に同じ募集を行っているとは限りません。

水素技術を物語に組み込んだ漫画

NEO TOKYO PUNKSは、NIKO24氏の横顔イラストを特徴とするNFTコレクションです。サイバーパンクとアニメを組み合わせた世界観を持ち、今回の物語でも近未来の設定が使われました。県が発信したい水素技術の先進性と、作品が描く未来のイメージを結び付ける狙いがありました。

漫画は2050年を舞台に、危機に直面した少年を救う鍵として山梨の水素技術を登場させています。これは現実の研究の成果をそのまま再現した科学報告ではなく、技術を知る入口として作られたフィクションです。物語に描かれる救命や未来社会の仕組みを、現在実用化済みの技術として紹介することはできません。

県公式メディアの担当者取材では、制作に先立ち2023年1月に水素技術のオンライン勉強会を開いたと説明されています。企画を支えるのはNFTの記録方式だけでなく、制作する人が題材を学ぶ過程でした。地域を舞台にする場合、地名を添えるだけでなく、伝える内容を理解して物語に取り込むことが参加型広報の要になります。

県の担当者は、富士山や果物といったよく知られるイメージに加え、水素の研究開発拠点があることを伝えたいと取材で話しています。物語の中に先端技術を置いたのは、観光名所の紹介にとどまらず、産業面の県の姿を知ってもらうためでした。

ホルダーによる制作とSNSのセリフ募集は別

県は、関連するNFTの所有者らがストーリー制作に参加すると説明しました。その一方で、公開された漫画のラストシーンのセリフをTwitterに投稿するキャンペーンも案内しています。制作を担うコミュニティと、公開後にセリフを考える参加者は同一の範囲ではありません。

県ページに記載されたセリフ募集の条件は、公式アカウントのフォローと、指定ハッシュタグを付けた投稿です。期間は2023年3月20日から26日23時59分までで、当選発表は3月30日以降とされました。この案内には応募者全員が既存のNFTを購入しなければならないという条件は示されていません。

当初発表では、抽選で30人に限定NFTのフリーミント権を渡す予定でした。30人は募集で示した当選枠であって、実際に発行や受取が完了した人数を示す結果ではありません。また、フリーミントという言葉だけで通信やネットワーク処理の費用まで一切ないとは判断できず、当時の受取条件と区別して読む必要があります。

2024年は研究施設を巡るARイベントへ

県公式メディアは、2024年3月9日に甲府市の米倉山にある研究開発拠点Nesradで、コラボレーション第2弾のARなぞ解きイベントを開催したと報告しています。前年の漫画に登場した少年とつながる物語を用い、来場者が施設内で水素に関する問題を解く内容でした。

参加者はスマートフォンでチェックポイントの問題に答え、スタンプを集めます。カメラを通じて現実の風景にイラストを重ねるAR体験と、ゴールでの限定NFT受取を組み合わせた設計です。漫画を読むという接点から、研究施設を自分で歩いて回る体験へ広げた点が、2023年の企画との違いです。

報告では同日の会場来場者が700人以上、ARなぞ解きへの参加者が約380人と区別されています。これを全員がNFTを受け取った人数や、NFT購入者の増加数として読み替えることはできません。当日参加も可能だったとされており、既存ホルダーだけの集まりではなく、親子などが新しい技術に触れる場として実施されました。

2025年の万博でも映像と漫画を活用

2025年には、大阪・関西万博の山梨県催事へ展開しました。県の実績報告によると、8月22日から24日まで開催した催事で、NEO TOKYO PUNKSと取り組む映像や漫画を水素事業の紹介に使用しています。水素発生装置の模型などと並べて、県の取り組みを来場者へ説明しました。

この報告は2026年2月20日更新の県公式ページで確認できます。2023年の開始発表だけでは予定だった広報の継続を、その後の実施記録で追える点が重要です。ただし、万博で新しいNFTを販売した、来場者全員に配布したという記述は、確認した報告にはありません。映像・漫画の活用とトークンの発行を混同しないようにします。

催事全体については3日間で延べ7万人以上が来場したと県が報告しています。この数字は山梨県催事全体の来場規模です。NTPの展示を見た人数や、水素技術を理解した人数、NFT施策だけが呼び込んだ人数を示してはいません。広報の評価に使う場合も、どの範囲の人数かを明記する必要があります。

地域広報としての成果をどこまで読めるか

2026年9月27日の確認で、県の企画ページ、2024年の現地イベント報告、2025年の万博出展報告を閲覧できました。漫画の制作・公開を起点として、体験イベントや展示に展開した経緯は確認できます。一方、今回の資料だけでは、県への好感度や水素技術の理解度がどれだけ変わったかを数値で示すことはできません。

NFTに結び付くコミュニティには、制作や情報発信に協力する人が集まる可能性があります。ただし、その効果は保有記録だけから生まれるものではなく、題材の説明、企画の設計、制作を担う人の活動が関わります。「NFTを使えば自治体PRが成功する」と一般化せず、この事例で実際に行われた作業を追うことが大切です。

また、作品を閲覧すること、セリフを応募すること、NFTを受け取ること、既存コレクションを購入することは異なる参加方法です。どこから関われるかを分けて案内すると、技術に詳しくない人も対象を理解しやすくなります。過去キャンペーンへの参加を今から促すのではなく、地域の知識を物語や体験へ変えた事例として読む価値があります。

よくある質問

Q. NFTを買わないとセリフ募集に参加できなかったのですか。

A. 県ページに記載された応募条件は公式アカウントのフォローと指定タグ付き投稿です。既存NFTの購入を一律の条件にはしていません。

Q. 全国初とは自治体による最初のNFT事業ですか。

A. 県の表現はNFTを活用したユーザー参加型PRという範囲です。自治体によるNFT利用すべての最初を意味するものではありません。

Q. 企画は漫画公開後も続きましたか。

A. 県資料で2024年のARなぞ解きイベント、2025年の万博催事での映像・漫画の活用を確認できます。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。