2023年3月、MoonbirdsのNFTを500点近く保有するアドレスがBlurで売却し、損失を出したと報じられました。これは運営元の新規販売ではなく、保有者による流通市場での取引です。当時の集計の範囲を確認し、価格、残高、後年の運営方針を混同せずに読み解きます。
売却したのはプロジェクトではなく一つのアドレス
The Blockは2023年3月12日、直前24時間に一つのEthereumアドレスがMoonbirdsのNFTを500点近く売却したと報じました。場所はNFT市場のBlurです。旧記事の見出しはMoonbirds自体が販売したようにも読めましたが、報道の対象はコレクションを保有していたアドレスによる売却でした。
新規発行時に運営側から購入することと、すでに流通している作品を保有者が売ることは、資金の受け手も取引の意味も異なります。今回のニュースを、Moonbirds運営が約500点を新規販売して資金調達した出来事として扱うことはできません。また、元の報道は複数のまとまりで売却したと説明しており、一回の取引だけで全点を処分したと断定するのも不正確です。
記事は売却元を一つのアドレスとして観測しています。そのことから、実際に操作した個人や組織の名前、保有者の全資産、売却した理由まで分かるわけではありません。本稿でも個人の特定や動機の推測は行わず、報道で示された取引と、その数字から分かる範囲を整理します。
700ETH超の損失はNFTTrackの集計に基づく報道
The BlockはNFTTrackのデータとして、売却による損失が合計700ETHを超えたと伝えています。報道中の損失率は9〜33%で、200点を売却したまとまりでは32%を超えたとされています。これらは同記事が引用した集計であり、NFT LABOが取得原価から独自に再計算した結果ではありません。
損失額を検証するには、売却の記録だけでなく、どの作品をいつ、いくらで取得したかという記録が必要です。過去の移転がすべて購入とは限らず、同じ所有者が別のウォレットへ移した場合などは、単純に直前の移転額を原価とすることもできません。手数料などを含めるかによっても計算は変わります。
今回、NFTTrackの原集計の全取引と計算条件までは再検証できていません。そのため、700ETH超という数字には報道への帰属を付け、確定した監査結果や保有者全体の損益としては扱いません。売却対象以外の保有作品や別口座の損益を合算した数値でもありません。
ETH建ての損益と円建ての損益も区別が必要です。購入時と売却時で為替やETH自体の価格が変われば、同じ取引でも表示通貨によって損益の見え方が変わります。本稿は歴史的な売却報道の解説であり、個人の税務上の損益を算定するものではありません。
最低出品価格の下落と実際の売却価格は別
元の報道は、Moonbirdsのフロア価格が直前24時間で27%超下落したと記載しています。旧記事では期間が見えにくい表現になっていましたが、これは2023年3月の特定時点の変動です。2026年の現在価格や、発行時からの累積下落率を示す数字ではありません。
フロア価格は、一般にそのコレクションの最低出品価格として使われる指標です。売り手の提示額と、実際に買い手が支払った価格は同じとは限りません。大量のNFTを売りたいときにも、最低出品価格と保有点数を掛けた金額で必ず換金できるわけではなく、実際に存在する買い注文や取引条件を見る必要があります。
また、コレクション内の作品は特徴が同一ではありません。旧記事が挙げた2022年の350ETHでの取引は一作品の高額事例であり、全作品の標準価格を示すものではありません。高額取引の一例と、翌年の最低出品価格を直接比べ、すべての所有者が同じ割合で損をしたと説明することはできません。
大口売却と価格下落が同じ期間に観測されたことは確認できますが、それだけで下落の全原因がこの一件だったとは判断できません。他の出品や買い注文、市場全体の動きも関係し得るため、原因を一つに絞るには別の根拠が必要です。
ウォレット残高と市場全体の数字を読み違えない
The Blockは当時、対象アドレスにNFTが残っておらず、ETH残高が0.001ETH未満だったと報じています。この記述は、記事が観測したアドレスと時点についての情報です。所有者の預金、取引所口座、他のウォレットなどを調べた資産総額ではありません。残高だけから破産や資金難を推測することはできません。
旧記事には、BlurとOpenSeaの取引量や、EthereumのNFT販売額の減少を比較する数字もありました。しかし、今回確認した売却報道だけでは、その数字の集計期間や対象を裏付けられませんでした。本稿では、現在の市場シェアや当時の売却原因を説明する材料としては引き継いでいません。
市場統計を比較するなら、同じ期間、同じ通貨、同じチェーンを対象としているかをそろえます。作品数、取引回数、売買額、参加したウォレット数も別の指標です。ある市場で大きな取引が発生したことから、その市場の利益や全NFT市場の成長を直ちに結論付けることはできません。個別の取引報道と市場集計は、別の資料として扱う必要があります。
2025年にはOrange Cap Gamesによる取得が確認できる
その後のMoonbirdsについては、2025年8月1日にOpenSeaが公開したOrange Cap GamesのSpencer Gordon-Sand氏へのインタビューで、同社による取得が確認できます。記事では、キャラクターの知的財産を生かし、物理的な商品などへ展開する方向性が語られています。
同氏は当時、従来の構想をそのまま実行するのではなく、自分たちの方針で進める旨を説明しています。この点は、2023年のニュースや旧ロードマップだけから、その後の運営方針を推定しない理由になります。ただし、インタビューで話した将来の製品や提携を、すべて実現済みの成果として紹介することもできません。
2026年9月27日に閲覧した公式の事業説明でも、Orange Cap GamesはMoonbirdsとbirbのIPを持つ会社として説明されています。そこに掲載された事業目標や売上についての記述は運営側の説明であり、NFT保有者への利益分配や価格上昇を約束するものとして扱うべきではありません。事業主体の動きと、個別NFTの市場価格は分けて見ます。
2026年にこの売却事例から確認できること
この出来事の中心は、多数の作品を売却した際に、過去の取得価格を下回る取引が報告された点です。有名なコレクションであることや、以前に高額な売買があったことだけでは、売りたい時点の買い手や価格は保証されません。作品の知名度と、実際に売買が成立する条件は別に確認する必要があります。
一方、2023年の大口売却があったことから、2026年のMoonbirdsの価格や事業の成否を予測することもできません。確認時点で本稿は現在の取引価格を取得しておらず、過去の損失率を現在値として表示していません。新しい運営方針が公表されていても、それを過去の所有者の損失が解消された証拠にはできません。
売却ニュースを読み直す際は、観測した日、対象アドレス、取引された作品、使われた市場、金額の単位を押さえると、主張の範囲が明確になります。足りない条件を推測で埋めず、報道の数字と独自に検証した結果を区別することが、この事例を現在も参考にするための基本です。
よくある質問
Q. Moonbirdsの運営が約500点を新規販売したのですか?
A. 元の報道は、一つのEthereumアドレスが保有していたNFTをBlurで売却したという内容です。運営の新規販売とは異なります。
Q. 700ETH超の損失は独自に再計算したものですか?
A. NFTTrackの集計を引用したThe Blockの報道に基づきます。原価や手数料を含む全取引の独立検証は行っていません。
Q. 残高が少ないため保有者は全資産を失ったのですか?
A. 一つのアドレスの当時の残高だけでは、所有者の資産総額や経済状況は判断できません。
この記事の出典
- The Block:2023年3月12日のMoonbirds売却報道
- OpenSea:Orange Cap Games当事者インタビュー(2025年8月1日)
- Orange Cap Games:Moonbirdsとbirbの事業説明
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




