この記事の結論
- コールドウォレット等以外で管理してよい暗号資産は、内閣府令第27条第2項により「必要な最小限度」であり、かつ円換算した金額が利用者の暗号資産の100分の5を超えない場合に限られる。
- 第27条第3項第1号は、自己で管理する場合の方法を「常時インターネットに接続していない電子機器、電磁的記録媒体その他の記録媒体(文書その他の物を含む)に記録して管理する方法その他これと同等の技術的安全管理措置を講じて管理する方法」と定めている。
- 第28条第1項により、暗号資産交換業者は分別管理の状況について、毎年一回以上、公認会計士または監査法人の監査(分別管理監査)を受けなければならない。
本記事は2026年9月11日にe-Gov法令検索APIで「暗号資産交換業者に関する内閣府令」の条文を取得し、金融庁の事務ガイドラインとあわせて作成しました。
5%上限はどの条文に書かれているのか
取引所のセキュリティを比べるとき、「コールドウォレット比率」という言葉がよく出てきます。この比率の根拠は宣伝文句ではなく、資金決済法と内閣府令にあります。条文の位置関係を整理すると次のようになります。
| 条文 | 定めていること |
|---|---|
| 資金決済法 第63条の11第2項 | 利用者の暗号資産を、利用者の保護に欠けるおそれが少ないものとして内閣府令で定める方法で管理すべきこと。ただし内閣府令で定める要件に該当するものは除く。 |
| 内閣府令 第27条第2項 | 上記の「除く」要件。必要な最小限度であり、かつ円換算した金額が管理する利用者の暗号資産の円換算額に100分の5を乗じて得た金額を超えない場合に限る。 |
| 内閣府令 第27条第3項第1号 | 自己で管理する場合の方法。常時インターネットに接続していない電子機器等に記録して管理する方法、その他これと同等の技術的安全管理措置。 |
| 内閣府令 第27条第3項第2号 | 第三者に管理させる場合の方法。自己で管理する場合と同等の利用者の保護が確保されていると合理的に認められる方法。 |
| 内閣府令 第28条第1項 | 分別管理の状況について、毎年一回以上、公認会計士または監査法人の監査を受けること。 |
ここで重要なのは、5%が「目標」ではなく「上限」であり、しかも上限を満たすだけでは足りないという構造です。第27条第2項は「必要な最小限度の暗号資産」であることを先に求め、そのうえで括弧書きで5%の上限を課しています。つまり要件は二段構えで、5%以内であっても、業務の遂行に必要な最小限度を超えていれば要件を満たしません。
「常時インターネットに接続していない」をどう読むか
第27条第3項第1号の「常時インターネットに接続していない電子機器」について、金融庁の事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係 16 暗号資産交換業者関係)は、一度でもインターネットに接続したことのある電子機器等は、これに該当しないという趣旨を示しています。運用の途中で一時的に接続する設計は、条文が想定する管理方法から外れることになります。
同ガイドラインはさらに、ホットウォレット相当分について、法および内閣府令で定める要件の範囲内であっても最小限度にすべきであること、社内規則で定めた上限を超過した場合は速やかに解消することが望ましいこと、帳簿上の残高とネットワーク上の有高を毎営業日照合し、不足があれば翌日起算で5営業日以内(契約でより短い払出期限があればその期限内)に解消することなどを求めています。受払担当と残高照合担当の兼務禁止や定期的な交代、移転時の複数担当者の関与、複数の秘密鍵の保管場所の分離、自動移転を行う場合の上限設定も挙げられています。
分別管理監査という外部からの検証
内閣府令第28条第1項は、暗号資産の管理を行う暗号資産交換業者に対し、資金決済法第63条の11第1項および第2項による管理の状況について、金融庁長官の指定する規則の定めるところにより、毎年一回以上、公認会計士または監査法人の監査を受けることを義務づけています。これが分別管理監査です。同条第2項は、公認会計士法の規定によりその業務をすることができない者などを監査人から除いています。
利用者の立場からは、コールドウォレット比率という数字そのものよりも、その数字が毎年一回以上の外部監査を通っているかどうかのほうが確認しやすい指標になります。国内で登録を受けている暗号資産交換業者の一覧は金融庁が公表しており、登録の有無はそこで確認できます。
この記事で扱っていないこと
個別の取引所が実際に何%をホットウォレットで管理しているか、どの監査法人の監査を受けているかは、公表資料で網羅的に確認できないため記載していません。海外に拠点を置く事業者は、そもそもこの内閣府令の適用対象外である場合があります。
よくある質問(FAQ)
暗号資産交換業者のホットウォレット上限は何%ですか?
内閣府令第27条第2項により、コールドウォレット等以外の方法で管理してよいのは「必要な最小限度」の暗号資産で、かつ円換算した金額が管理する利用者の暗号資産の円換算額の100分の5を超えない場合に限られます。5%以内であれば自由という意味ではなく、最小限度であることが先に求められます。
「常時インターネットに接続していない」とは、普段は切断していればよいという意味ですか?
いいえ。金融庁の事務ガイドラインは、一度でもインターネットに接続したことのある電子機器等は「常時インターネットに接続していない電子機器等」に該当しないという趣旨を示しています。一時的に接続する運用は条文が想定する管理方法から外れます。
分別管理監査はどのくらいの頻度で行われますか?
内閣府令第28条第1項により、毎年一回以上、公認会計士または監査法人の監査を受けなければならないとされています。監査人には、公認会計士法の規定によりその業務をすることができない者などが除かれます。
出典(一次情報)
- e-Gov法令検索 暗号資産交換業者に関する内閣府令
- 金融庁 事務ガイドライン 第三分冊:金融会社関係 16 暗号資産交換業者関係(PDF)
- 金融庁 暗号資産交換業者登録一覧(PDF)
- 金融庁 暗号資産(仮想通貨)関係
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言・税務助言ではありません。個別の判断は専門家や公的機関の一次情報をご確認ください。




