この記事の結論
- 内閣府令は、利用者の暗号資産をコールドウォレット等で管理することを原則としています。
- ホットウォレットで管理してよいのは、利用者の暗号資産を円換算した金額の100分の5を超えない範囲に限られます。
- 帳簿上の残高とブロックチェーン上の有高は毎営業日照合し、不足は原則5営業日以内に解消することが求められます。
本記事は2026年9月11日時点で公表されている金融庁の事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係 16)と、暗号資産交換業者に関する内閣府令の条文に基づきます。
「安全そう」ではなく、条文で決まっている項目を見る
取引所のセキュリティは、広報資料の言葉づかいだけでは比べられません。日本で登録を受けた暗号資産交換業者には、内閣府令と金融庁の事務ガイドラインで具体的な要件が課されています。まず、その要件そのものを押さえます。
| 確認項目 | 根拠 | 求められている内容 |
|---|---|---|
| 利用者の暗号資産の管理方法 | 内閣府令第27条第1項 | 自己の暗号資産と明確に区分し、どの利用者の分かを直ちに判別できる状態で管理する |
| コールドウォレット等の原則 | 内閣府令第27条第3項 | 移転に必要な情報を、常時インターネットに接続していない機器・媒体等に記録して管理する |
| ホットウォレットの上限 | 内閣府令第27条第2項 | 円換算で利用者の暗号資産の100分の5を超えない範囲の、必要最小限度に限る |
| 履行保証暗号資産 | 資金決済法第63条の11の2 | ホットウォレット管理分と同種同量の暗号資産を、自己の資産と区分して保持する |
| 残高照合 | 事務ガイドライン Ⅱ-2-2-3-2 | 帳簿上の残高とネットワーク上の有高を毎営業日照合する |
| 利用者の金銭 | 内閣府令第26条 | 利用者区分管理信託で管理し、必要額を毎営業日算定する |
コールドウォレット比率をどう読むか
内閣府令第27条第2項は、コールドウォレット等以外の方法で管理してよい暗号資産を「必要な最小限度」とし、その数量を本邦通貨に換算した金額が、管理する利用者の暗号資産を換算した金額の100分の5を超えない場合に限ると定めています。つまり、ホットウォレット比率の上限は5%です。
事務ガイドラインはさらに踏み込み、「法及び内閣府令で定める要件の範囲であっても、リスク管理の観点から、ホットウォレットで管理される対象受託暗号資産はその行う暗号資産交換業の状況に照らし最小限度にすべき」であり、社内規則で定めた上限を超えた場合は速やかに解消することが望ましい、としています。5%は上限であって目安ではありません。
あわせて、ガイドラインは「一度でもインターネットに接続したことのある電子機器等は『常時インターネットに接続していない電子機器等』に該当しない」と明記しています。コールドという言葉の運用は、この水準で判定されます。
分別管理で見られている中身
事務ガイドラインは、受託暗号資産と履行保証暗号資産について、自己の暗号資産を管理するウォレットとは別のウォレットで管理し、保管場所も明確に区分することを求めています。例として「ウォレットを保管するための機器を明確に区分すること」が挙げられています。
照合については、帳簿上の残高とネットワーク上の有高を毎営業日照合し、不足があれば原因を分析したうえで速やかに解消することとされています。注記では、不足が生じた日の翌日から起算して5営業日以内(契約でより短い払出期限がある場合はその期限内)に解消しなければならないとされています。
受払いの担当者と残高照合の担当者を兼務させないこと、担当者を定期的に交代させることも着眼点に含まれています。
流出リスクへの対応として挙げられている措置
- 取り扱う暗号資産の種類ごとに流出リスクを特定・評価し、定期的に見直す
- 移転時は社内規則に沿って複数の担当者が関与する体制にする
- 複数の秘密鍵等による電子署名を求め、各鍵の保管場所を分ける
- 自動移転の仕組みを使う場合、一回または短時間に移転できる上限を設定する
- 流出を直ちに検知できるシステム監視体制と、コンティンジェンシープランを整備する
これらは「主な着眼点」として示されたもので、達成方法は各社の実態に応じて判断されます。個別の取引所がどこまで実装しているかは、各社の公表資料や分別管理監査の状況を確認してください。本記事は特定の取引所を推奨するものではありません。
よくある質問(FAQ)
コールドウォレット比率の法令上の基準はありますか。
内閣府令第27条第2項が、コールドウォレット等以外で管理してよい暗号資産を、円換算で利用者の暗号資産の100分の5を超えない必要最小限度に限っています。ホットウォレット側の上限が5%と定められている形です。
分別管理とは具体的に何をすることですか。
利用者から預かった暗号資産と自己の暗号資産を別のウォレットで管理し、保管場所も明確に区分することです。利用者の金銭については、内閣府令第26条の要件を満たす利用者区分管理信託で管理し、必要額を毎営業日算定します。
残高のずれはどのくらいで解消されるのですか。
事務ガイドラインでは、帳簿上の残高とネットワーク上の有高を毎営業日照合し、不足が生じた日の翌日から起算して5営業日以内(契約でより短い払出期限がある場合はその期限内)に解消しなければならないとされています。
出典(一次情報)
- 金融庁「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)16 暗号資産交換業者関係」(PDF)
- 金融庁 事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)索引
- e-Gov 法令検索「暗号資産交換業者に関する内閣府令」(平成29年内閣府令第7号)
- 金融庁「暗号資産交換業者登録一覧」(PDF)
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言・税務助言ではありません。個別の判断は専門家や公的機関の一次情報をご確認ください。




