ShibariumのNFT構想はどうなったか|2023年発表から橋の攻撃まで

2023年1月中旬、ミームコインの柴犬(SHIB)を中心とするプロジェクトは、開発中のレイヤー2ネットワーク「Shibarium」上でクリエイターが独自のNFTを発行できるようになると公式ブログとX(旧Twitter)で伝えました。取引の場として名前が挙がったのが、Shibarium向けに作られたNFTマーケットプレイス「Pawzaar」です。

旧版の記事は、この発表と「Pawzaarが次のOpenSeaになる」というコミュニティの期待を紹介して終わっていました。その後、Shibariumは2023年8月に本番公開されたものの直後に混雑で止まり、2025年9月にはブリッジが攻撃を受けています。本稿では、発表の中身、背景にある技術、2026年時点までの経過、そして利用者が確かめておくべき点を順に見ていきます。

2023年1月に発表された内容

発表の要点は二つでした。一つは、Shibarium上で動く「チェーン固有」のNFTをクリエイターが発行できること。もう一つは、それらのNFTをPawzaarで売買できることです。PawzaarはPawZoneというチームが開発していたマーケットプレイスで、Shibariumの公開に合わせて立ち上げる計画が示されていました。

対象として想定されたのは、ゲーム内アイテム、音楽やアート、仮想空間の土地、イベントのデジタルチケットなどです。公開前から、既存の有名コレクションを模したものや、コミュニティ発のコレクションがPawzaarでの販売を予告していました。「取引のたびにSHIBを焼却(バーン)する」といった仕組みも、構想として語られていました。

ただし、これはメインネット公開の7か月ほど前の話です。当時の告知は計画と期待の段階であり、実際に何がどの規模で動いたかは別に確かめる必要があります。

Shibariumとは:イーサリアムのレイヤー2として設計

Shibariumは、イーサリアムの外側で取引をまとめて処理し、手数料を下げて処理を速くすることを狙ったネットワークです。記事ではよく「レイヤー2」と呼ばれますが、仕組みとしてはPolygonのPoS方式に近い構成で、独立したバリデーター(検証者)の集合がブロックを作り、イーサリアムとの間はブリッジ(橋渡しの契約)で資産を移します。

ここで押さえておきたいのは、OptimismやArbitrumのようなロールアップと違い、安全性の多くをバリデーターの署名に頼る点です。手数料(ガス代)はBONEというトークンで払い、BONEをステーク(預け入れ)したバリデーターが検証を担います。

なぜNFTに向いているとされたか

イーサリアム本体でNFTを発行・売買すると、混雑時は1回の取引に数千円以上の手数料がかかることがありました。少額のゲームアイテムやチケットを大量に扱うには重すぎます。安い手数料で動く独自チェーンがあれば、SHIBのコミュニティ内で小さな取引を回せる、というのが当時の説明でした。

2023年8月:本番公開と直後の停止

Shibariumのメインネットは2023年8月16日に公開されました。ところが公開直後に取引が殺到して処理が詰まり、イーサリアムから移した資産が引き出せない状態が続きました。The Blockによると、引き出しが再開したのは8月28日です。ETHやSHIBなどは45分から4時間程度、BONEは最大7日で出金できるようになったと伝えられています。

当サイトでも当時、Shibariumの取引停滞と利用中止の呼びかけを取り上げています。公開初日のつまずきは、期待が大きかった分だけコミュニティに不安を残しました。

PawzaarはShibarium公開後に稼働を始め、「SHIB Dream」などのコレクションが出品されたと報じられています。一方で、2026年時点でPawzaarがどの程度使われているか、運営が続いているかは、公式の発表や信頼できる統計で確認できませんでした。

2025年9月:ブリッジへの攻撃

大きな転機は2025年9月です。Shiba Inuの開発チームによると、9月12日(UTC)に、不正に得たバリデーターの署名権限を使ってブリッジから資産が引き出されました。攻撃者はフラッシュローン(同じ取引内で借りて返す仕組み)で約460万BONEを借り、12あるバリデーター署名鍵のうち10を支配したと報じられています。

crypto.newsは被害を224.57ETHと約926億SHIB、当時の価格で約240万ドルと伝えました。報道によって被害額の見積もりには幅があります。開発チームはステーキングの出し入れを止め、関連資金をマルチシグ(複数人の署名が必要な財布)へ移し、セキュリティ企業と調査に入りました。

ブリッジは2025年10月14日にBONEから再開され、出金に7日間の待機期間を設けること、不審なアドレスを遮断する仕組みを入れることが示されました。他のトークンは段階的に戻す方針で、被害者への返金の枠組みは当時まだ最終決定前と報じられています。2026年9月時点で返金がすべて終わったかどうかは確認できませんでした。

発表から3年半たって見えること

2023年1月の発表は、「安い手数料のチェーンができればNFTの使い道が広がる」という前提に立っていました。その前提自体は間違っていません。ただ、実際にはチェーンの安全性と利用者の数が追いつくかどうかが、NFTの機能以上に結果を左右しました。

  • ブリッジが最大の弱点になった:本番初日の停止も2025年の攻撃も、ブリッジ周りで起きています。資産を移す橋が止まると、NFTやトークンは事実上動かせません。
  • 検証者の数が少ないと乗っ取りやすい:12の署名鍵のうち10を押さえれば操作できた構造は、分散の度合いがどれほど大事かを示しました。
  • マーケットプレイスの将来は利用者次第:Pawzaarが「次のOpenSea」になるという期待は、少なくとも取引規模で見る限り実現したとは言えません。

ミームコイン発のエコシステム全般の特徴とリスクは、ミームコインとは|DOGE・SHIB・PEPEの特徴と5つのリスクでも整理しています。

独自チェーンのNFTを使う前に確かめたいこと

Shibariumに限らず、新しいチェーンのNFTやマーケットプレイスを使うときは、次の点を先に見ておくと判断しやすくなります。

  1. ブリッジの仕組みと停止履歴:誰が署名しているのか、何人の合意で出金が通るのか、過去に止まったことはあるか。
  2. 出金の待機期間:7日などの待機があるなら、急いで資金を戻したいときに間に合わない可能性があります。
  3. 実際の取引量:エクスプローラーで1日の取引件数やアクティブなアドレス数を見ると、話題性と実利用の差が分かります。
  4. マーケットプレイスの運営主体と規約:運営が止まったとき、NFTのデータや画像がどこに残るかも確認しておきましょう。
  5. 日本からの利用可否:SHIBやBONEの国内での取扱いは、金融庁に登録した暗号資産交換業者の取扱銘柄一覧で確かめられます。海外のマーケットプレイスは日本の制度の保護外です。

ビットコイン系の話ではありますが、レイヤー2の安全性の課題も考え方は共通しています。

日本の制度と税の扱い

SHIBやBONEは、日本では資金決済法上の「暗号資産」に当たります。一方、ゲームアイテムやアートなど決済手段として使われないNFTは、一般に暗号資産には当たらないと整理されています。とはいえ、NFTの売買で得た利益は課税の対象になりえます。国税庁は、NFTを譲渡して得た所得が譲渡所得や雑所得になる場合があるとタックスアンサー(No.1525-2)で示しています。

ブリッジ攻撃のような事故で資産を失った場合の税務上の扱いは、事情によって変わるため、実際に損失が出たときは税務署や税理士に確認するのが確実です。

よくある質問

Q. Shibariumのメインネットはいつ公開されましたか?

A. 2023年8月16日です。公開直後に取引が集中して出金が止まり、8月28日に再開されました。

Q. Pawzaarとは何ですか?

A. Shibarium向けに作られたNFTマーケットプレイスで、PawZoneというチームが開発しました。2023年1月の発表で、Shibarium上のNFTを売買する場として紹介されました。2026年時点の利用状況は確認できていません。

Q. 2025年のShibariumブリッジ攻撃では何が起きましたか?

A. 2025年9月12日(UTC)、攻撃者がフラッシュローンで借りたBONEを使ってバリデーターの署名権限の大半を握り、ブリッジからETHやSHIBを引き出しました。被害は約240万ドルと報じられ、ブリッジは10月14日にBONEから再開されています。

Q. Shibarium上のNFTは暗号資産として扱われますか?

A. 支払いに使う性質を持たないNFTは、資金決済法の暗号資産とは別物と整理されるのが一般的です。ただし売却益は課税の対象になりうるため、国税庁のタックスアンサーなどで確認してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。