コカ・コーラとRich MnisiのプライドNFT(2022年7月)|136点の中身と寄付の仕組み

2022年7月初め、米飲料大手のコカ・コーラは、南アフリカのファッションデザイナーRich Mnisi(リッチ・ムニシ)氏と組んだ「Coca-Cola Pride Collection」を公開しました。LGBTQIA+コミュニティを祝う目的のデジタルコレクティブル136点で、Polygonブロックチェーン上で発行され、一次販売の収益はチャリティに回すとされました。

旧版の記事には、デザイナー名を「Rich Minsi」、価格を「35MATIC」、寄付先の団体を「南アメリカ」の組織と書くなど、いくつかの誤りがありました。この記事では報道で確認できた内容に直したうえで、企業が発行するチャリティNFTの仕組みと、2026年の時点から振り返って読者が確認しておきたい点をまとめます。

何が発表されたか:コーラのボトルを描いた136点

コレクションは、コカ・コーラの象徴であるコンツアーボトル(くびれのある瓶)を、Mnisi氏の色彩豊かなアートで描き直したものです。1枚の大きな作品を細かく切り分け、その断片を136点のNFTそれぞれに割り当てる手法がとられたと報じられており、1点ずつ柄が異なります。

発行数の136は、ブランドの歴史にちなんだ数字です。コカ・コーラは1886年に米アトランタで誕生しており、2022年はちょうど136年目にあたりました。企業向けブロックチェーン専門メディアのLedger Insightsも、この数字をブランドの年齢への目配せだと伝えています。

制作には、2021年の同社初のNFTにも関わったデジタルコレクティブルのスタジオTafiと、Vice傘下のクリエイティブエージェンシーVirtueが参加しました。一次販売はTafiのミント(発行)ページで行われ、その後の転売はNFTマーケットプレイスのOpenSeaで扱われました。

価格と寄付先:旧版の誤りを訂正します

旧版の記事は、販売価格を「35MATIC(約150ドル)」としていました。複数の報道によると、正しくは1点335MATICで、当時の相場でおよそ155〜167ドルでした。2022年7月のMATICは1枚0.5ドル前後だったため、35MATICでは20ドルにも届かず、ドル換算とも合いません。

寄付先についても訂正があります。最初の12か月の収益が向けられた「OUT」は、正式名をOUT LGBT Well-beingといい、南アフリカの首都プレトリア(ツワネ)を拠点とする団体です。1994年に設立され、同国で2番目に古いLGBTQ+の支援組織とされています。医療や心理面のケア、差別やヘイトクライムの被害者への支援などを行っています。

なお、旧版にあった特定の国の法制度に触れた記述は、このNFTの内容と直接の関係がないため省きました。デザイナー名の綴りも、正しくは「Mnisi」です。

背景:ブランドNFTが広がった2021〜2022年

コカ・コーラのNFTはこれが最初ではありません。同社は2021年7月30日の国際フレンドシップデーに合わせ、ゲームの「ルートボックス」を模した「Friendship Box」をOpenSeaで競売にかけました。落札額は217ETH余り、当時の約56万5,000ドルで、収益はスペシャルオリンピックス国際本部に寄付されています。

2021年から2022年前半にかけては、NFT市場が急拡大した時期で、ナイキやアディダス、高級ブランドなど多くの企業がNFTを発行しました。チャリティと組み合わせる形は、ブランドイメージとの相性がよく、批判も受けにくいことから、企業が最初に試す題材として選ばれやすい傾向がありました。

一方で、2022年5月のTerraUSD崩壊以降、暗号資産市場は下落局面に入っていました。このプライドコレクションは、ブームが一段落し始めた時期に出た作品でもあります。Ethereumではなく手数料の安いPolygonを選んだ点も、ガス代を気にせず買える価格帯を意識した判断と受け取れます。

寄付の規模と仕組みをどう見るか

チャリティNFTは「売上を寄付」と書かれていても、実際の金額は販売数と価格で決まります。Ledger Insightsの試算では、136点を335MATICで売り切った場合でも、一次販売の収益は2万3,000ドルに満たない規模でした。同誌の記事公開時点で、発行済みは136点中132点と伝えられています。

転売時の一部も寄付に回るとされていましたが、これはマーケットプレイスで設定されるクリエイター手数料(ロイヤリティ)を通じた仕組みです。転売が続かなければ寄付も生まれず、手数料の支払いを買い手の任意とするマーケットプレイスが増えると、この経路からの収入は細くなります。OpenSeaも2023年8月に、手数料を強制する仕組みを段階的にやめる方針を示しました。

つまり、ブランドのチャリティNFTの意義は、寄付額そのものより、テーマへの関心を集める広報の側面が大きいといえます。寄付を目的に買う場合は、団体へ直接寄付する方法と比べて、どれだけが相手に届くのかを確かめておくと判断しやすくなります。

その後:コカ・コーラのNFT施策とPolygonの変化

コカ・コーラはその後もデジタル施策を続けました。2023年には、生成AIを使った広告キャンペーン「Masterpiece」に連動するデジタルアートを、Coinbaseが開発したレイヤー2のBase上で公開しています。この作品群は8種類で、合計8万回以上ミントされ、約54万ドルを集めたと報じられました。

プライドコレクションが載るPolygonにも変化がありました。ネットワークの基軸トークンは2024年9月4日にMATICからPOLへ切り替わり、現在の手数料はPOLで支払います。当時「335MATIC」で売られたNFTも、いま取引する場合はPOLやWETHなど別の単位で表示されます。

一次販売を担ったTafiのミントページが現在も同じ形で動いているかは確認できませんでした。二次流通の価格は日々変わるため、この記事では特定の数字を示しません。購入を検討する場合は、OpenSeaの公式コレクションページで最新の状況を確かめてください。

日本から関わる場合に知っておきたいこと

このコレクションを日本から扱うには、MetaMaskなどのウォレットとPolygonネットワークの設定、手数料用のPOLが必要です。OpenSeaの始め方はOpenSeaの登録とメタマスク接続の手順にまとめています。有名ブランドのコレクションは偽物が出回りやすいため、コントラクトアドレスと公式の告知を必ず照らし合わせてください。

税金の面では、暗号資産でNFTを買うと、手放した暗号資産の含み益が確定する点に注意が必要です。NFTを売って利益が出た場合も、個人なら原則として雑所得などとして申告の対象になります。区分の考え方はNFTの税金と課税区分の解説で確認できます。

また、NFTの購入代金の一部が海外の団体に寄付されても、日本の寄附金控除の対象になるとは限りません。控除は国内の認定NPOなど所定の相手への寄付に限られるのが原則で、NFTの購入は寄付そのものではなく売買として扱われる点を押さえておきましょう。

チャリティNFTを見るときの確認点

ブランドや団体が「収益を寄付」とうたうNFTは今も発行されています。見るべき点は、まず寄付先の団体名と所在地が明記されているか、そして寄付の対象が一次販売だけか、転売手数料も含むのか、期間は何か月か、という条件です。このコレクションでは「最初の12か月はOUTへ」という期間の限定がありました。

次に、寄付が実行されたかを後から確認できるかどうかです。団体側の年次報告や、発行者による寄付額の公表があれば確かめられますが、このコレクションについて実際の寄付額を示す公表資料は確認できませんでした。確認できないこと自体が問題とは限りませんが、判断材料が少ない点は知っておくべきです。

最後に、NFTそのものの価値は寄付の大義とは別に動くということです。社会的なテーマに共感して買う場合でも、転売で値上がりする保証はありません。記念品として持つのか、寄付として支払うのかを自分の中で分けておくと、後悔の少ない判断につながります。

よくある質問

Q. Coca-Cola Pride Collectionはいくらで販売されましたか?

A. 報道によると、一次販売の価格は1点335MATICで、当時の相場で約155〜167ドルでした。旧版の記事にあった「35MATIC」は誤りです。

Q. 寄付先の「OUT」はどんな団体ですか?

A. 南アフリカのプレトリアを拠点とするOUT LGBT Well-beingです。1994年に設立され、LGBTQ+の人々への医療や心理的なケア、差別被害者の支援などを行っています。南米の団体ではありません。

Q. なぜ136点なのですか?

A. コカ・コーラが1886年に誕生してから、発表の2022年でちょうど136年目にあたることにちなんだ数とされています。

Q. 今から日本で購入できますか?

A. OpenSeaでの二次流通を通じて、ウォレットとPolygonの手数料(現在はPOL)があれば取引は可能です。価格や出品状況は変わるため、公式のコレクションページとコントラクトアドレスを確認してから判断してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。