2025年3月26日の暗号資産市場では、トークンの買い戻しと、新しいステーブルコインの計画が注目された。BTCの長期予想を含め、将来の期待を語る材料は多いが、予算を示したことと実際に資金が動いたことは違う。当時公表されていた資料から、金融政策、Aave、Movement、USD1などの論点を整理する。
BTCの150万ドル予想は、2030年の強気シナリオ
ビットコインの長期予想を読む際には、誰が、いつ、どの条件で示した数字かを確かめる必要がある。The Crypto Basicの2月12日付記事は、ARK InvestのCathie Wood氏が、2030年にBTCが150万ドルへ達する強気シナリオへの自信を示したと報じていた。3月26日に初めて発表された予測ではない。
同報道が紹介したのは、弱気・基本・強気という複数の想定である。機関投資家の採用や、価値を保存する資産としての需要拡大などが前提になっていた。最も高い数字だけを取り出して、将来の確定した価格として示すと、予測が成立する条件が抜け落ちる。
当時の背景を確認する資料として、ARKの「Big Ideas 2025」は、2024年の現物ETFの普及や企業によるBTC保有の拡大を整理している。また、2024年に4回目の半減期を迎えたことも記録している。2025年3月の記事で、2024年4月の半減期をこれから起こる予定として説明するのは時系列が合わない。
半減期は新たに発行されるBTCのペースに関係するが、既に流通する保有分の売却まで止める仕組みではない。供給が増える速度だけで相場が決まるわけではなく、購入需要、保有者の売却、資金調達環境が同時に作用する。長期の採用拡大を想定しても、そこへ至る価格が一直線になるとは限らない。
さらに、予測の目標年と投資家が資金を必要とする時期は別である。数年先の強気シナリオを短期の売買判断へそのまま移すことはできない。将来価格の桁の大きさよりも、需要がどの分野で増える想定なのか、その進展を何で確認できるかを見る方が、予測の検討に役立つ。
FRBはQTの減速を発表済み、QE再開とは異なる
金融政策については、3月19日のFOMC声明が基準となる。FRBは政策金利の目標レンジを4.25〜4.50%に据え置くとともに、4月から保有証券を減らす速度を緩める方針を公表していた。「QTのペースを緩める発表はまだない」という説明は、3月26日時点の決定内容と一致しない。
具体的には、米国債の償還に伴う月ごとの縮小上限を250億ドルから50億ドルに変更する。政府機関債・住宅ローン担保証券の償還上限は変更せず、毎月350億ドルとする。どの種類の資産に変更があったのかまで押さえると、金融政策を一括して緩和と呼ぶだけでは見えない違いが分かる。
量的引き締めであるQTをゆっくり進めることと、保有資産を増やす量的緩和であるQEへ移ることは別の政策である。今回の声明は、保有する国債などの縮小を続けると明記していた。縮小速度の変更を、資産購入を拡大する決定へ読み替えるべきではない。
市場が引き締めの減速を好材料と捉える可能性はある。ただし、BTCへの資金流入が同じ規模で増えるとは限らない。金利見通し、ドル相場、投資家のリスク許容度なども価格形成に関わるため、中央銀行の保有証券と暗号資産への買い需要を一対一で結びつけるのは無理がある。
公表日と適用開始日も区別したい。3月26日に分かっていたのは、3月19日に決定され、4月から実施する変更である。当日の値動きを説明するときに、新たな決定なのか、以前の発表への反応が続いているのかを分けることで、ニュースの時間軸を正確に捉えられる。
Aaveの買い戻し案は、取得後の配分まで含む設計
Aaveのガバナンスでは、3月4日にAavenomicsの実装案が提示され、3月14日には提案者が実施項目を整理していた。買い戻しに関する部分は、当初6か月間、週100万ドルのペースでAAVEを取得する構想だった。3月時点の資料を基に、既に同額の購入が完了したと説明することはできない。
提案では、財務管理の仕組みを通じて資金の利用権限を設定し、Aave Finance Committeeが市場やマーケットメーカーを通してAAVEを取得する。その後、取得したトークンをエコシステムの準備資産へ送る設計が示されている。単に市場から買って消却するという説明では、提案の用途を正しく表せない。
当初の期間が終わった後の予算は、プロトコル全体の財務状況に合わせて調整する考え方だった。継続性を見るには、予定された買い付け額に加え、収入がどれだけ残るか、運営や開発に必要な支出がどの程度あるかを確認する必要がある。手元資金を使う計画と、将来にわたり同額を使い続けられることは同義ではない。
買い戻した資産を準備金へ入れる場合、それが今後の報酬や運営に利用される可能性も考える必要がある。取得時には市場で需要が発生しても、長期的な供給への影響は保管・配分ルールによって変わる。購入額だけで恒久的な供給削減を計算することはできない。
この時点で追うべきなのは、ガバナンス上の合意が、資金の権限設定や実際の取引へどうつながるかである。議論への賛同、提案の承認、買い付けの実行を分けて確認することで、他のプロジェクトの買い戻しと比較しやすくなる。
Movementの3,800万USDTは、回収資金を使う計画
3月25日のThe Blockは、BinanceがMOVEのマーケットメーカーによる取引を問題視し、その収益を凍結したと報じた。記事によると、Binanceは約6,600万MOVEが売られ、買い注文がほとんど置かれていなかったと説明している。これらは取引所側が公表した調査内容として読む必要がある。
同記事が引用したMovement Network Foundationの声明では、財団側は取引所から3月11日に調査について知らされたと説明し、当該マーケットメーカーとの関係を打ち切ったとしている。そのうえで、回収した3,800万USDTを使う買い戻し計画を示した。売却されたMOVEの枚数と、回収資金のUSDT建て金額は別の数値である。
計画は、今後3か月にわたりBinance上でMOVEを購入し、取得分を「Movement Strategic Reserve」のウォレットへ定期的に移すという内容だった。発表した時点で全額の取得を終えたわけではなく、取得後の資産も消却ではなく準備として保持する方針である。
ここでの資金源は、通常の事業収益を積み上げたものではなく、問題となった取引からの回収資金だ。Aaveの財務・配分制度の見直しと、同じ収益還元策として一括りにすることはできない。買い戻しという行為が共通でも、発端と継続できる条件は異なる。
また、市場でトークンを取得する措置と、個々の利用者へ損失を払い戻す措置も別である。この発表だけから、影響を受けた全員への補償が完了したとはいえない。実行額や保有先の変化を確認する際も、買い戻しの進捗と利用者への直接補償を区別する必要がある。
USD1の発表では、裏付け資産と保管先が示された
3月25日、World Liberty Financialが発表したのは、米ドルと1対1で償還できる設計のステーブルコインUSD1の発行計画だ。公式発表では、当初はEthereumとBinance Smart Chain上で発行し、その後に他のネットワークへ広げる方針を示している。
準備資産として挙げられたのは、米国の短期国債、米ドル預金、その他の現金同等物だ。これらで100%裏付けると説明し、準備資産の保管をBitGoが担うとした。BitGo Primeによる機関投資家向けの流動性や取引面の支援も発表に含まれていた。
発表文は、第三者の会計事務所による定期的な確認も予定している。一方、発行計画にそう書かれていることと、特定の日付の準備残高が既に検証されていることは異なる。今後公表される報告書では、対象日、対象資産、発行残高との関係、確認業務の範囲を見ることになる。
1ドルとの交換を目指す設計でも、市場での売買価格があらゆる状況で必ず1ドルになるとは限らない。直接の償還を利用できる主体や条件と、取引所などで売買する際の価格は分けて確認する必要がある。また、米ドルとの価値が安定していても、円換算の価値は為替相場の影響を受ける。
今回の発表は、発行計画と運用体制を示すものとして重要である。ただし、対応チェーンが示されたことだけで、日本のすべての利用者が購入や直接償還をできるとは判断できない。実際に利用する場合の提供地域や条件は、サービス開始時の正式な案内で別途確認する事項となる。
よくある質問
Q. 買い戻しを行えば、トークンは必ず消却されますか。
A. 買い戻しと消却は別です。今回紹介したAave案やMovementの計画では、取得したトークンを準備資産へ送る用途が示されています。
Q. FRBは3月に量的緩和の再開を決定したのですか。
A. 3月19日の声明は保有証券の縮小を継続しつつ、4月から米国債の縮小速度を緩める内容でした。資産購入の拡大とは異なります。
Q. USD1は円で見ても価値が一定ですか。
A. 米ドルに連動する設計なので、円換算ではドル円相場の変化を受けます。償還条件と市場での売買価格も確認が必要です。
この記事の出典
- The Crypto Basic:2月12日のCathie Wood氏の価格予想報道
- ARK Invest:Big Ideas 2025、BTCの2024年の動向
- FRB:3月19日の金融政策声明
- Aave:3月14日のAavenomics実施項目の説明
- Aave:Aavenomics実装提案
- The Block:3月25日のMOVE取引調査と買い戻し計画
- World Liberty Financial:USD1の発行計画に関する公式発表
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




